※本記事は、2020年8月25日刊行の定期誌『MarkeZine』56号に掲載したものです。
以下6名の方からコメントをいただきました。
スシローグローバルホールディングス 松川 貴明氏/ゼスプリ インターナショナル ジャパン 猪股 可奈子氏/日本ピザハット 薮内 浩平氏/ビズリーチ 茂野 明彦氏/三井住友カード 福田 保範氏/ヤプリ 原田 千亜紀氏
スシローは常に前を向く。常に姿勢を変えない(スシロー)
「食を提供することは社会のインフラである。安全対策を十分行った上で、できる限りうまいすしを提供する」という経営判断を受け、広告コミュニケーションにおいても「スシローは常に前を向く。常に姿勢を変えない」という覚悟を決め、渋谷での広告展開に至りました。
そして、どうせやるなら世の中を後押しするような企画にしたいという想いのもと、実行に向け突き進みました。コロナの状況によっては、批判を受ける可能性もあるという不安もあり、ぎりぎりまで社内での議論は続きましたが、信念を曲げずやり切ったことで多くの共感を得る広告展開ができたのだと思います。
スシローでは「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を企業理念に掲げ、創業以来、うまいすしを誰でも、どんな時でも気軽に食べられるように努力を重ねてきました。「うまいすしには人を笑顔にするチカラがある。」自分たちのこだわってきたすしのチカラを信じ、すしのチカラで日本を鼓舞し、すしのチカラで少しでも皆様に笑顔になってもらう。日々前線で戦っている店舗スタッフの皆様に自信を与え、少しでも不安を払拭する。コアメッセージである「すしで、笑おう」にはそんな想いを込めています。
広告、マーケティングに携わる者としてはあまり良いことではありませんが、今回ばかりは費用対効果ではなく、どれだけ共感してもらえるか、どれだけ笑顔を作れるか、を目標に実行しました。あくまで個人的な想いにはなりますが、今回の企画はブランディングや社会貢献といったカッコいいことをやろうとしたわけではなく、ただ自分自身がコロナに負けたくなかった、コロナのせいでいろんなものが失われるのが嫌だったからこそ、ここまでやりきれたのだと思います。コロナ禍で生活リズムは急激に変わり、新しい仕事のスタイルへの対応にかなりの苦労もありましたが、笑顔は奪われたくなかった、ということです。今回の企画を通じて、スシローがこれまでやってきたことは、これからも通用するということが実証されたと考えています。うまいすしさえあれば、どんなときでも笑顔になれる。そんな「すしのチカラ」を信じ、新時代へ突入してもスシローの「うまいすし、そのものを中心に据えたコミュニケーション」は変わらないと考えています。
株式会社スシローグローバルホールディングス
コミュニケーション企画推進部 販促課 松川貴明氏
ピンチをチャンスに。今しかできないことにチャレンジしていく(ゼスプリ)
ゼスプリ インターナショナル ジャパンは、キウイフルーツ生産者を株主とし、世界各国にキウイフルーツを輸出・販売しています。販売においては、これまでスーパーマーケットなどでの試食販売が大きな施策となっていましたが、コロナの影響を受け試食が全面的にNGとなりました。もちろん辛い状況でしたが、私たちはこの期間を「チャレンジ期間」にしよう、と前向きに動き出しました。たとえば、家にいる時間が増えたので、パックに入っている個数を増やしてみたり、これまでサンプリングは店頭がベストと思ってきたのですが、店頭以外に良い場所があるんじゃないか? と試してみたり。ピンチをチャンスに変えて、今しかできないこと、今まで考えてこなかったことにチャレンジしています。
また販売戦略を変えた一方で、社会が大変な状況にある今、私たちにできることはないだろうかと考え、実践してきました。「#差し入れキウイ」は、その取り組みのひとつです。これはTwitterのハッシュタグキャンペーンなのですが、このハッシュタグとともに店名と感謝の気持ちをツイートしていただくと、私たちがそのスーパーマーケットや青果店の店舗へ、ゼスプリ・サンゴールドキウイ1ケースをお送りするという取り組みを行いました。スーパーマーケットは私たちのステークホルダーの中でもとても大切な存在です。だからこそ、不安を抱えながらも頑張っている皆さんに感謝の言葉を届けたかったのです。またその後、全国のこども食堂や医療従事者の皆さんへもキウイを寄贈しました。
このように販売戦略と社会的な取り組みの2軸で動いていたこの時期は、メンバー全員がリモート体制で働くなど、仕事環境が大きく変わった時期でもあります。私はAPACのマーケティング本部長として、日本、韓国、シンガポール、オーストラリア、ベトナムをまとめています。元々海外にあるチームのマネジメントをしていたので、会えないことのギャップにどう向き合うかは、慣れていたように思います。メンバーの様子が見えないからこそ、オンラインミーティングの前や、チャットを使って何気ない会話をする時間を作ることをずっと心がけています。私を含め、多くのメンバーはリモートワークを好意的に受け取っています。それこそ、通勤時間を使ってこれまでできなかったことをできるわけですから。しかし、会社に行くこと自体が「スイッチ」になっており、そのスイッチを失い、仕事とプライベートの時間がうまく分けられず、ついつい残業時間が延びている……というメンバーも中にはいます。マネジメントする立場としては、そのあたりも今後見ていかないといけないなと思っています。
ゼスプリ インターナショナル ジャパン株式会社
APACマーケティング本部長 猪股可奈子氏