消費者欲求の表層に振り回されるな
マクドナルドの業績が悪かった頃の話です。業績を回復させるヒントを得るために、様々なマーケティングリサーチが行われていました。消費者に対して「なぜ来店してくれないのか」「どんなメニューやサービスがあれば来店してくれるか」を尋ねると、「マックはヘルシーじゃないから最近行ってない」「サラダなどのヘルシーなメニューがあれば行くかもしれない」といった回答が多く集まりました。この結果を参考にサラダマックを開発し、テレビCMなどにも費用を投下して発売しましたが、不振に終わってしまいました。
ヘルシーな食生活に気を遣っている人であればあるほど、「分厚い食べ応えのあるハンバーガーを見せられると、たまにはガブっとかぶりつきたくなる」という欲求が強いのではないか? マクドナルドはその後の試行錯誤の中で、この消費者インサイトに着目。肉のボリュームたっぷりのクォーターパウンダーやメガマックのヒットを生みだし、業績がV字回復したのです。
バリュープロポジション=提供価値の本質を考える
コロナ禍によって、あらゆる分野でDXが加速する今、DXを実現する過程で、デザイン思考を活用した「UXデザイン」が行われています。これは、共感(Empathize)→問題定義(Define)→創造(Ideate)→プロトタイプ(Prototype)→テスト(Test)の5つのプロセスを繰り返して、顧客体験の設計を進めるという考え方です。
先のマクドナルドの事例になぞらえれば、「ヘルシーじゃないからマクドナルドにはお客様が来ない」という問題定義をして、いくら創造→プロトタイプ→テストを繰り返しても、徒労に終わるだけです。「持ち運びに便利なパッケージのモバイル・サラダマック」というプロトタイプを作って、ユーザーテストしても、「インスタ映えするサラダマック」や「一食で一日分の野菜が摂れるサラダマック」を作っても、おおもとの問題定義が間違っているので、その努力は報われません。
消費者はヘルシーを口にするが、その心の奥では「たまには食べ応えのあるハンバーガーにがぶりついて、ストレスを発散したい」という欲求が強いのではないか。このように共感→問題定義を行ったうえで、「がっつり大量の肉で、欲望のままに背徳感を味わえる」というバリュープロポジション(提供価値)を設定し、プロトタイプ→テストを行っていかなければ意味がありません。
マクドナルドの事例はDXではありませんが、事の本質は同じです。DXする対象となる物事が、これまで提供してきた価値は何か? DXする対象となる物事で、十分に充たされていない価値は何か? この質問に答えなければなりません。また、それが表面的な消費者理解ではダメです。バリュープロポジションの設定が消費者の真の欲求に応えるものでなければ、すべてのDXは徒労に終わるのです。
インサイトから見えてきた「加速する欲求」と「減衰する欲求」
コロナ禍で変わる消費者に関して、さまざまな現象やデータが断片的に報じられています。一時的な現象なのか、持続性のある変化なのか。一体何が事の本質なのか。そこを見極めるには、深い消費者理解が不可欠です。インサイトを見誤ると、マーケティング施策は不発に終わります。表面的な消費者理解でトライアンドエラーを繰り返しているうちに、消費者インサイトを上手く捉えた競合に先を越されてしまうかもしれません。
この度、デコムでは「With/Afterコロナに企業が注視すべき消費者の新・欲求“ニューノーマル・プラネット”」の第二弾を発表しました。第一弾は、緊急事態宣言下の4~5月に行った調査に基づくものです。今回は、宣言が解除された6~7月に調査を行い、前回と比較をすることで、一時的ではなくこれから加速するであろう欲求が見えてきました。
コロナ禍で急変する消費者インサイトに対し、企業はどう対応すべきか?
9月1日~2日にかけて開催するMarkeZine Day 2020 Autumnでは、新時代を切り開く戦略と戦術のヒントを提供する様々なセッションをご用意しております。
本コラムの著者、デコムの大松氏が登壇するセッション「ニューノーマル時代の消費者インサイトに適応せよ ウエディングパーク、LIFULLの実践をデコムが説く」では、ニューノーマル時代の消費者インサイトの変化を読み解く定量&定性調査の結果と、実際の企業事例を照らし合わせ、ニューノーマル時代の消費者インサイトに企業が適応する糸口を探ります。参加は無料ですので、ぜひご参加ください!
日時:2020年9月2日(水)16:50~17:50
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