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販促だけではない広告の目的とは? 効果的な広告戦略を組み立てるための基礎知識

2020/09/10 07:00

 広告には商品の実売を増やすという販促のイメージが強いかもしれませんが、近年では多くの企業でブランディング広告やCSR広告などの施策も見られるようになってきました。巧みな広告戦略は、どんな目的でどの広告を利用するかを検討することから始まります。そこで今回は、広告が役立つ多様な目的について解説した『デジタル時代の基礎知識『広告』』(翔泳社)から、「CHAPTER1 広告の目的」を抜粋して紹介します。

本記事は『デジタル時代の基礎知識『広告』 人と商品・サービスを「つなげる」新しいルール』(小林慎一、吉村一平)の「CHAPTER1 広告の目的」から抜粋したものです。掲載にあたり一部を編集しています。

01 [商品広告]巧みな広告戦略がビジネスを押し上げる

素晴らしい商品はほぼ素晴らしい広告をしている

 NIKE、Apple、Audi……。これらの企業の商品は、みな素晴らしい広告戦略をしています。ブランドのイメージを上げるには、広告が有効なのは言うまでもありません。

 広告は、ある製品の機能を伝えるだけではなく、イメージを上げる効果もあります

 広く告げるのが広告ですが、広く告げることで、商品のことを伝えたり、ブランドの価値を高めたりもできます。また、デジタル広告が生まれたことで、広く告げるだけでなく、伝えたい人に、ピンポイントで伝えることができる広告(アド)が生まれています。

 TVCMやOOHやデジタルなど、様々な広告の打ち手を駆使して、機能を伝える、イメージを上げるなどして、ビジネスにいい結果をもたらすのが広告の役割です。

 レッドブルは、東南アジアで売れている日本のエナジードリンクを参考につくられたと言われています。日本の商品も広告戦略によっては、レッドブルのように世界的なエナジードリンクになれる可能性がありました。レッドブルは、グローバルで売っていくという意思と、巧みな広告戦略が今のブランドをつくりあげたのです。

  広告の最大の目的は、効果的な打ち手を組み合わせて、企業の事業を押し上げることです。以降では、その詳細を解説していきます。

02 [商品広告]商品を売る

訴求ポイントを探し、クリエーティブで表現する

「商品の機能」を1人でも多くの人に伝え、1人でも多くの人に買ってもらい、企業の業績を上げることが、広告の唯一無二の目的と言っても過言ではありません。

 そのためには、「商品のいいところ」=「訴求ポイント」を決め、的確な「伝える方法」=「クリエーティブ」を、伝えたい人に「伝わる場所」=「媒体」で伝える必要があります(図2)。

 メーカーは競合の状況や、消費者のニーズ、シーズをしっかり調査しながら新商品を開発しています。しかし、広告で消費者に伝えるためには新商品の情報を選別する必要があったり、そのままでは伝えにくかったりする場合があります。

 そこでまず、その商品の新しい機能や価値を整理し、新商品開発とは違う視点、つまり広告目的のマーケティングを行います。市場やターゲットに受け入れられやすいものを「訴求ポイント」として探し出します

 その「訴求ポイント」をターゲットにしっかり届けるためのアイデアを考えるのがクリエーターの仕事で、ターゲットが接触しやすいメディアに合わせてアイデアを考えていきます。

 私たちが普段接触する広告は商品の特徴を伝えるだけでなく、キャンペーンの内容や期間の告知、新店舗のオープンの告知など、売上に直結するような内容であることが大半といえます。

図2 商品広告の方程式
図2 商品広告の方程式

03 [ブランド広告]商品イメージを上げる

ブランドが商品を強くする

 ブランド広告の目的は商品のイメージを上げることです。商品のイメージを上げることで、同じ機能を持った複数の商品の中から、自社の商品を選んでもらいやすくなります。また、商品ではなく企業全体のイメージを上げることで、関連の商品や高額の商品の販売(アップセル、クロスセル)につながることを戦略的に行っている企業もあります。

 例えば、AppleがiPodを発売した時、徹底したブランド戦略を取りました。競合会社はHDDを使用した音楽プレーヤーを次々に開発し発売しましたが、Appleの牙城を崩すことはできませんでした。iPodからiPod nanoが、そしてiPod shuffleが生まれ、やがてiPhoneの発売につながっていきます。Appleは商品戦略だけでなく、ブランド戦略も巧みなことが分かるかと思います。

商品によってもたらされる価値を描く

 商品広告とブランド広告の境界は曖昧です。世の中の多くの広告は、ブランドの世界観の中で、商品の特徴を伝えています。iPodの広告は、斬新な世界観ながらも、音楽プレーヤーであることをきちんと伝えるものでした。

 iPhoneも初期の広告は、何ができるかをしっかり訴求していました。ただし、過去の成功したブランド広告は、しっかりコストをかけて制作されています。また、一度に多くの商品の特徴を伝えようとしたり、直接的な訴求をするよりも、それによってもてもたらされる「人や社会のいい変化」を描く傾向があります。

04 [企業広告]企業のイメージを上げる

企業もひとつのブランド

 企業広告の目的は企業のイメージを上げることです。そのためには大きく3つのアプローチがあります(図4)。IRで行うもの、インナーブランディングで行うもの、アウターブランディングで行うものです。

 IRとはInvestor Relationsの略で、企業が株主や投資家と良好な関係を築くために、投資に関する情報を提供する活動全般のことです。年次報告書等のIR情報を広告とすることをIR広告と言います。

 インナーブランディングとは企業理念やビジョンを社員に理解してもらうための活動です。自社WEBサイトの活用やハンドブックの製作が挙げられます。

 こうした広告に社員が納得し、自社に誇りが持てるようになれば企業理念が全社に浸透し、社内に一体感が生まれ、インナーモチベーションが上がります。その広告に対する世間の評価が高ければ、より効果的です。

 企業広告の多くは、社外に向けたブランディングが目的です。企業イメージが高い企業から発売された新商品は、その商品のブランド価値を社会に浸透させる時間が短くて済み、場合によっては新発売と同時に、高いブランド価値を持つものとして市場に受け入れられます。

 AppleやNIKEといったグローバルブランドは、積極的に企業広告を行っています。良質な企業広告は、商品に付加価値を生むだけでなく、人材獲得にも優位に働くこともあります。さらに企業に不祥事が起こった時のバッシングが少なくなったりするような効果もあります。

図4 IR、インナーブランディング、アウターブランディング
図4 IR、インナーブランディング、アウターブランディング

05 [CSR広告]社会的使命を果たすための広告

世の中をよりよくするための活動

 CSRとはCorporate Social Responsibilityの略で、企業が自社の利益を追求するだけでなく、環境、人権、コンプライアンスの遵守、地域社会との共存といった、企業が果たすべき社会的責任を指します。

 企業のイメージを良くするという意味では、企業広告との線引きは曖昧です。地球環境に貢献するという企業ビジョンを伝え、そのビジョンから生まれた商品が登場する広告は、CSR広告であり、企業広告であり、商品広告でもあると言えます

 CSR広告では、企業が果たすべきと考える社会的責任を伝えることを目的としています(図5)。そして、企業の社会的責任の定義は時代とともに変化し、範囲も拡大しています。

 大きな利益を上げている企業は、自社やその商品の都合の良いことだけを広告して収益を上げることだけを考えるのではなく、世の中をよりよくするためにも活動すべきである、という考え方は欧米の方が進んでいます。

 実際、近年のカンヌ・ライオンズ国際クリエイティビティフェスティバルでは、「for good」「make the world better」という言葉がキーワードになっています。

 地球環境、人種、障害者、ジェンダー、ダイバーシティ、国際関係などのテーマをもとに、社会をよりよくしたり、問題提起をしたり、人々の考え方をポジティブにしたりするアイデアが賞をとる傾向にあります。

 その代表的な企業がP&Gです。ロンドンオリンピックの時期に流れた、「Thank you, Mom.」のTVCMは世界中の多くの人の心に届きました。

 また、新型コロナウイルス感染症対策の一環として行われた外出自粛のゴールデンウイークにおいて、人々の不安やストレスを少しでも和らげることを願って実施されたドラえもんの「STAY HOME」広告は、社会の幅広い年齢層に受け入れられました。

COLUMN 世の中を変えた広告たち

 広告の最大の目的は、商品(サービス)を売り、企業の業績を上げることですが、人の考え方に影響を与えた広告も存在します

「Think different」

 そんな広告の中で名作と言われているものの一つは、Appleの「Think different」のキャンペーンです。

「Think different」の言葉とともに、偉大な業績を残した天才が数多く登場します。アルバート・アインシュタイン、ジョン・レノン、マリア・カラス、ボブ・ディラン、リチャード・ブランソン、ニール・アームストロング……偉大なことを成し遂げた人たちは、ステレオタイプな考え方をするのではなく、人とは違う考えを持つのだ、というメッセージは、当時、多くの人や企業がWindowsのPCを使っていたことへのアンチテーゼでした。

 そして、この広告メッセージはアンチテーゼに止まりません。人はみな個性的で、その個性をもっと誇っていいし、認め合うべきだ、という人間尊重の普遍的メッセージとして受け入れられたからこそ、歴史的な名作として数えられたといえます。

「UNITED COLORS OF BENETTON」

 強烈な社会的なメッセージを発信したという意味では、ベネトンの「UNITED COLORS OF BENETTON」も広告史に残るキャンペーンです。まだレストランなどで人種差別が普通に行われているような時代に、3つの本物の心臓にWHITE、BLACK、YELLOWの文字がのっている広告は世界に衝撃を与えました。

「UNITED COLORS OF BENETTON」は「ベネトンの世界の色」と日本語に訳をされていましたが、「世界は様々な色にあふれている、だから美しいんだ」というメッセージが含まれているのだと思います。そして、フォトグラファーのオリビエーロ・トスカーニが手がけたこれらのキャンペーンは、戦争、エイズ、LGBT、宗教、貧困、出産……にまで広がっていきます。

 湾岸戦争で戦死した兵士が最後に着ていたシャツのビジュアルは、もはや広告なのかどうか、物議を醸しました。2018年にベネトンに復帰した創業者のルチアーノ・ベネトンは、業績を回復させるために、再びトスカーニと組み広告活動をしています。

デジタル時代の基礎知識『広告』

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デジタル時代の基礎知識『広告』
人と商品・サービスを「つなげる」新しいルール

著者:小林慎一、吉村一平
発売日:2020年9月3日(木)
定価:1,480円+税

本書について

口コミを起源とする「広告」は技術の進展に伴い、看板、ビラ、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、ウェブと驚くほど多様になりました。本書では各広告媒体の特性・つくり方から、最新の広告効果の測定法と改善の仕方までを詳しく解説しています。

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