2つめのタブー:インセンティブの多用
先に挙げた例で、仮に「口コミ評価をしてくれたら500円分のギフトカードがもらえるキャンペーン」も展開されていたらどうだろうか? 個人の主観ではあるが、さらに信頼はできない。
前回、「餌と魚の関係」のSNS運用は信頼関係の構築には不向きではないかと書いた。「いけす造り」とでも言おうか。それは一昔前に流行したオウンドメディアのスタイルからも同じことが言える。当社でも漏れなく同じ失敗をした。
一言でいうと、お金の力で会員をオウンドメディアに繋ぎ止めるというものだ。「会員登録で○○ポイント!毎日ゲームをやって○○ポイント!」という具合だ。これによって本業のサービス認知の向上や利用者の獲得を目指している。そうした「人だまり」を広告収入などによって換金する場合はリターンがあるかもしれないが、世のトレンドとして下火なのは間違いない。
「人だまりを作って繋ぎ止める」ことが主目的となり、自社を選好する理由をお金以外のコンテンツで作ることができなくなってしまうと、長い目で見たときには失敗してしまうのではないだろうか。

3つめのタブー:機械的な記事の量産
インセンティブ以外に使い続ける理由がない、というような残念な例は、最近はさすがに見なくなったが、肝心のコンテンツが疎かになるということはありがちだ。
その代表例は、まだ記憶に新しい「ウェルク問題」である。集客装置としての性能向上を重視するあまり、コンテンツそのものに目を向けなくなってしまった結果だ。それは今の時代、もはや集客装置ですらなく、自爆装置といえる。この問題以降、ユーザーの真贋を見抜くリテラシーは明確に向上したと考えた方がいい。
オウンドメディアで「人だまり」を作ることは有効であっても、インセンティブや機械的な記事の量産によって、自社利益に偏重した集客装置としてしまっては片手落ちだ。本来は、コンテンツを通して社内外に向けて自社のアイデンティティや企業姿勢を表現することによる、信頼獲得装置を目指すべきである。
以上、私がオウンドメディア運営の手法として受け入れ難いと思う3つの手法を挙げた。続いては、7年間成長を続ける当社のオウンドメディアを紹介する。私自身もマネージャーとして立ち上げに関わった『LIFULL HOME'S PRESS』だ。