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インモラルな“デジマ”から脱却せよ

メルマガ会員やSNSフォロワーを「いけす」にしてはいけない 脱却するカギは「ナラティブ」にある

 ユーザーが望まない行き過ぎたデジマ施策からの脱却の道筋を、利他主義・公益資本主義の考え方に則って独自のマーケティング施策を実践してきたLIFULL 菅野氏が具体的に提示する本連載。第2回目となる今回は、「ナラティブ」をキーワードに、MAを活用したOne to OneマーケティングやSNS運用の本質をとらえなおす。

独りよがりなデジマから脱却するカギは「ナラティブ」にあり

 前回、私自身の自戒の念を込めて、「ユーザーが望まない行き過ぎたデジマ施策は一方的で利己的なハントでしかない」と言い切った。そして昨今のGDPRなどのデータ保護規制が意味することを、モラルベースのマーケティングへのシフトと読み解いた。

 今回は、その利己的なハンター視点の対極にある概念として、私が注目している「Narrative(ナラティブ)」を施策に取り込むことを提唱したい。ナラティブは日本語では「物語」と訳されるが、マーケティングコミュニケーションにおいて使われるStoryの意味するものとは大きく異なる。マーケティングコミュニケーションにおけるストーリーは企業ブランドの物語であり、それを印象的に伝える手段としてのストーリーテリングを指すことが一般的だ。

 一方でナラティブは、生活者一人ひとりの過去から現在、そして未来の抱負に意味を持たせながら、主観的に構成される物語である。マーケティングコミュニケーションにおけるストーリーテリングとナラティブの違いを図表1にまとめた。

 ストーリーテリングは対象顧客を伝える相手=ターゲットと捉え、自社が選択されるための説得のコミュニケーションと位置付けられる。ここで重要になるのは、自社を選択させるための「最強の殺し文句」だ。

 ナラティブは対象顧客を主人公と捉え、自社はその顧客の周辺にある聞き手の一つでしかない。ゆえに選択肢は非常にフラットに前広に提供すべきであり、恣意的に自社の選択を迫るべきではない。そして考えられる選択肢を提示したならば、あとは主人公である顧客が自分らしい決断をすることを待つのである。ここで重要になるのは、顧客の物語を構成するための「最強の質問」だ。

 もちろんナラティブはテレビCMのような不特定多数への一方向性のコミュニケーションでは成立せず、限られた状況において発動できる。どちらが良いかということではなく、使い分けの問題なのだが、ナラティブを発揮できそうなデジマ施策であっても、マス的なストーリーテリングの焼き増し一辺倒になってしまいがちではないだろうか

 独りよがりな押し付けではなく、傾聴と対話。この考え方を用いると、既存の施策をどう転換していくべきかが見えてくる。私自身が姿勢を改めた結果、どんな思考や施策の変化に結び付いたのか。以降はDMPを活用したMA(マーケティングオートメーション)や、SNSとの向き合い方について具体的な視点を共有したい。

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この記事の著者

菅野 勇太(スガノ ユウタ)

株式会社LIFULL/百様株式会社
2008年に株式会社ネクスト(現・株式会社LIFULL)入社。以来『LIFULL HOME'S』のBtoCマーケティングに従事。2012年に日本国内初の事例となるマーケティングオートメーション導入を主導。2016年にはYahoo!APIを直接連携したオンライン広告の全社インハウス化を実施。現在はリアル店舗『住まいの窓口』を中心としたオムニチャネル戦略およびCRM戦略を統括。宅地建物取引...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2020/07/28 09:00 https://markezine.jp/article/detail/33852

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