新たな行動をとる5つの消費者グループ
続いて解説されたのは、消費者の新たな行動について。消費者はより安価なブランドに走る一方で、ラグジュアリーブランドは引き続き支持され、ニーズは二極化する。中間のニーズが減ってきているというのがコトラー氏の見解だ。また、消費者の健康や食事への意識の高まりや、「家」の価値の上昇も特徴的だ。いまや、家が職場であり、食事や娯楽の場、家族の居場所になっている。コトラー氏はこのことから「人々は自然や日々の生活に目を向けるようになり、地球環境、人種差別などの大きな課題に注目が集まっている」と見解を示した。
コトラー氏が挙げた、新たな行動をとる消費者グループの特徴は次の通り。「今は小さなグループでも、いずれ大きくなりうるものもある」と予測を述べていた。
・反成長アクティビスト(Degrowth Activists):地球が耐えられない人口増、生産、消費に反対
・環境アクティビスト(Climate Activists):エネルギー、乗り物を見直し二酸化炭素排出量削減に注力
・健全な食事選択者(Sane Food Choosers):動物愛護を訴えるベジタリアン、ビーガン
・保全アクティビスト(Conservation Activist):モノの削減、再利用、修繕。必要な人への提供

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そしてコトラー氏は、数週間単位で回転するファッション、数年単位で買い替えになるクルマなどを例に挙げ「これらの消費者グループは、無駄な消費を良しとしない価値観をもっている」と忠告する。マーケティング思考には、需要や消費に求められる規範が必要なのである。
コロナ禍からの再興戦略
続いてこれからの回復の見通しが産業ごとに示された。まず、医療や公衆衛生、食品、銀行、公共サービス、建築、製造、アマゾンやウォルマートなどの大規模小売を含むエッセンシャル産業は、素早い回復が見込まれる。一方でそれ以外の、レストラン、ホスピタリティ、学校、美術館、劇場などの人混みをともなう産業、小規模企業は、回復には時間がかかると考えられる。
では、ビジネス再興のためのマーケティング戦略はどうあるべきか。短期的には、事業再開の計画と告知、広告再開によるブランドアクティビズム、デジタルマーケティング投資強化、カスタマーケアのためのサービス強化が必要だと提案した。
「顧客は困っているときに助けてくれたり、気にかけてくれたりしたブランドのことをよく覚えている。そのようなブランドは今後も生き残るでしょう」(コトラー氏)
長期的には、自社市場における今後の需要およびコストを算定し、その事業を伸ばすか、維持もしくは縮小するのか、いずれにかじ取りするかを決定すべきである。

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そして、これからのマーケティング判断についてもアクションを提示した。まず、ウイルスの流行期間を予想することが必要だ。人口全体に施策がいきわたる時間も考慮に入れ、悲観視せざるをえない場合は、自分達はどの事業を継続するか、どの市場で生き残るのかを見定める。集中する製品を選択し、バリュープロポジションを継続するか修正するか判断し、活動再開を告知する。価格とプロモーション、お客様への保証を見直す。そして、マーケティングプランにともなうリスクを把握し、誤った推察に基づいた判断を避ける。同時に、時間軸の見極めにも配慮することが欠かせないと述べた。

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