完全な雇用回復、2%の年次経済成長率に達するのは2~4年後
では、これからの回復の道のりは。「V字回復は理想的だが、期待は薄い」とコトラー氏は見ている。回復は部分的に始まり、消費者、特に高齢者や持病がある人などは安全性と消費そのものに慎重さを見せるだろう。多くのビジネスは制限され、資金繰りや顧客の確保に課題を抱えることが予測される。

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より現実的なシナリオはU字回復で、完全な雇用回復、2%の年次経済成長率に達するには2~4年かかると予測を示した。もし(1)国家レベルの抗体検査、ウイルス検査、追跡システム体制確保、(2)2021年内のワクチン開発、(3)国による市民と企業への資金援助、(4)2年以内の大幅なインフラ再構築、の条件が整えば、2年以内の再興が可能となる。上記の条件が揃わなければ4年かかる、との推測である。

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なお、コトラー氏が長年向き合っているテーマである資本主義の影響については「GDPではパフォーマンスは測れない。人の健康、幸せが指標になる。働き過ぎて人間がおかしくなるのは生産的ではない」と指摘。「北欧から学ぶべき。スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランドなどは、人々の健康、安価な高等教育など高い幸福度を誇る」「アメリカだけでなくブラジルなども、超高額な報酬の経営者には高額の税金をかけ、広がる貧富の差を是正すべきだ」と主張した。
従来型資本主義からソーシャルキャピタリズムへ移行
コトラー氏は締めくくりに4つの結論を提示した。
「ほとんどの産業は回復しますが、回復が遅れたり消滅してしまうケースも出てきます。政府の優先事項は医療や教育システムの改善となり、社会支援を必要としている人たちのために動くでしょう。雇用を増やすための大々的なプログラムも導入するはずです。そして最後に、新型コロナウイルスは従来型の資本主義を、社会への配慮に基づくソーシャルキャピタリズムに移行させるでしょう」(コトラー氏)

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最後にコトラー氏は、「これから5年間、まったく同じ事業をやり続けている企業は、5年後に生き残っていることはないでしょう」と述べ「コロナ禍の最中、またその後に皆さんがビジネスをどのように回復させたのか、ぜひ聞かせてください」と呼びかけた。