創業期のリード獲得を阻む「データ不備」
続いて、創業期の課題と対応策が紹介された。
創業期の注力ポイントを「リード獲得」と語る柳生氏。福田康隆氏の書籍『THE MODEL』を例に挙げ、「リードを獲得し、商談、受注につなげるファネルの構造を作り、それぞれのフェーズで得られる数字や転換率をきちんと科学していく。創業期は、このモデルの構築、運用が重要です」と話した。
こうしたマーケティング・セールスファネルを構築していく上で課題となるのが、データ管理だ。当時のSansanでも、リードや商談データが集まらない、または欠けているケースが珍しくなかったそうだ。データに不備があっては、せっかくの営業計画やモデルも、うまく作用しない。
データ管理の難しさは、運用面にある。セールス活動のプロセスにデータ入力が含まれていない、データが更新されないなど、属人的な運用には限界がやってくるのだ。また、「コロナ禍ではオンライン商談が増え、対面者以外の顧客情報が得られにくくなった」と、柳生氏は指摘する。さらに、商談を記録し、進捗をトラックするパイプラインマネジメントそのものに問題があるケースも多い。
様々なタッチポイントのデータ集約を可能にした「Sansan」
これら創業期の課題を、Sansanではどのように乗り越えたのか。柳生氏によると、ポイントは「データ入力負荷の軽減」そして「パイプライン管理のためのルール整備」の2点だ。
データ入力負荷の軽減は、「Sansan」を活用して解決したという柳生氏。名刺に加え、様々なタッチポイントから得られた顧客データを、「Sansan」に集約し、データベースを構築した。
名刺のスキャンデータや、Webフォームなどのオンラインを経由する顧客データは、API連携を用いて「Sansan」への集約が可能だ。また、データ入力負荷の軽減には冒頭で紹介された「オンライン名刺」も役立つ。「オンライン名刺」では、オンライン上で気軽に名刺交換ができることに加え、「インサイドセールスと顧客」「カスタマーサクセスとユーザー」など、オンライン上のさまざまなつながりを可視化できるという。
ルール整備の観点では、セールスフォース・ドットコムのメソッドを参考に、商談の見極めから受注まで、7段階にわけたパイプライン管理を実施。データ入力の負荷は若干増えるが、商談の確度を正確に把握できるようになるという。
この2つの対策で、創業期を乗り越えたSansanは、約3,000社の導入実績を得た。