企業単位の情報管理が不可欠な拡大期
拡大期は、より精度の高いデータ整備がカギとなる。Sansanでは当初、以下のようなデータ蓄積環境を構築していた。
上図は、情報が集約され、フェーズごとの担当者も明確で、スムーズに営業活動が進むように見える。しかし、この方法では企業単位でのリードや状況が把握しづらかったという。
「拡大期は、組織の拡大にあわせてプロダクトが増え、アップセルやクロスセルも検討できるようになります。すると、個人ではなく、企業単位で営業戦略を立てるABMを推進する必要が出てくるのです」(柳生氏)
特に拡大期にアプローチを強めたいエンタープライズ企業ほど、担当者や部署が多く、複数のセールスが異なる部署へ提案するケースもあるだろう。企業とのスムーズなコミュニケーションや社内の情報共有のために、企業単位の情報管理は不可欠だ。
「BtoBビジネスのお客様は、個人ではなく企業単位で考え、深い理解のもとマーケティングやセールスをしなければならない」と柳生氏。だが、事業が拡大フェーズにある企業では、データの重複や格納場所の未整備に悩まされることも少なくない。
企業単位のデータから見えてきた新たな施策・戦略
では、企業単位のデータ集約はどのように実現できるのだろうか。柳生氏は、「Sansan」の拡張機能「Sansan Data Hub」の活用を挙げる。これは、あらゆる顧客データに法人番号を付与することで、法人単位に集約されたデータベースを構築するものだ。
使い方はシンプルな2ステップ。はじめに、自社にある顧客データを「Sansan Data Hub」にアップロードすると、法人番号を付与したデータがエクスポートできる(ステップ1)。その後、同じ法人番号を持つデータ同士が自動処理で関連付けられる(ステップ2)。Sansanではこの「Sansan Data Hub」を中心に「Salesforce(※)」やマルケトとの間でシステム連携を実装しており、データが自動的に会社単位に集まるように運用している。
※SalesforceはSalesforce.com,Inc.の商標であり、同社の許可のもと使用しています。
実際にSansanでは、獲得済みリードの75%を企業単位で集約できた。その結果、理想的なABMも実現でき、前年比で商談数が64%アップしたという。
企業単位に集約したデータは、マーケティング、セールスだけでなく、戦略立案にも利用できる。その一例が、データから受注確率を導き、ターゲット企業を見つける施策だ。
Sansanでは、機械学習自動化プラットフォーム「DataRobot」を導入し、集約した各データを用いて機械学習を行い、企業をスコアリング。データの特徴量が受注へどのくらい寄与するかを分析し、受注確度が高い企業を抽出している。これにより、営業活動の効率化に加え、マーケティング部門でも、注力業界に対する活用事例の作成やプロモーション施策が実行できる。柳生氏は「企業単位にデータを集約できると、新たな施策・戦略の可能性が広がります」と話す。
Sansanの創業期・拡大期の戦略と戦術の共通点は、使い慣れた「Sansan」の機能をフル活用し、「データを整え、整えたデータで何をするか」を明確に実行してきたところにある。「自社に取り入れられそうなところがあれば、ぜひ参考にしてほしいです」と柳生氏はまとめ、セッションを締めくくった。