テレビCMをどう使うか、検証のために実施
――はじめに「スパイダープラス」のサービス概要を教えてください。
三浦:スパイダープラスは、建設業向けの業務効率化アプリです。建設の現場で必要な図面整理や写真管理、帳票出力などがタブレット1つで行えるため、記録や報告作業にかかる時間が軽減されます。
現在、スーパーゼネコンと呼ばれる大手建設会社や屋内の設備や電気系統などを担当するサブコン企業を中心に、契約社数800社、契約ユーザー3万5千人以上にご利用いただいており、業界のDX、働き方改革の促進を目指しています。
――昨年11月にスポットでテレビCMを放映したとうかがっています。その経緯を教えてください。
三浦:「建設業界におけるDX」という特徴をもつプロダクトにおいて、テレビCMはどれだけの有効性があるのか検証することが狙いでした。元々スパイダープラスのリード獲得や商談獲得のチャネルは、展示会が中心で、業界内の口コミで知って下さるお客様も少なくありませんでした。また、コロナ禍を受けて強化したデジタルプロモーションも功を奏し、契約件数は順調に伸びています。
しかしさらに成長角度を上げていくには、認知浸透を通じたマーケティングミックスの設計が必要です。今回の放映を通じて、設計の中にテレビCMを組み込むべきか、組み込むとすればどのように使うのが良いか検証しようと考えました。
数字責任に応えるためのツールとして「ノバセル」を導入
――スパイダープラスさんでは今回、ノバセルを使って運用を行ったそうですね。まずはノバセルについて、田部さんからご説明いただけますか。
田部:ノバセルは、テレビCMの世界に「検証ありきで進める」というデジタルマーケティングの利点を取り入れようと開発したサービスです。デジタルマーケティングの本質は、効果を可視化し、その理由を明確にした上でPDCAのレベル上げ、再現性をもたせること。この発想がないままテレビCMを行っても、失敗から何も学べないどころか、成功しても「何が理由だったか」がわからないため、次に活かすことができません。
マスとデジタルのどちらか一方ではなく、両方を正しく使いこなして事業成長を達成することが、ノバセルの目指すマーケティングです。
――続いて、三浦さんがノバセルを採用した経緯を教えてください。
三浦:テレビCMの検証がスピーディにできるからです。スパイダープラスは、口コミや販売代理店経由など、デジタル以外の集客導線が多いほか、導入後に契約ユーザーが増えていくモデルのため、CPAのみで成果を判断するのは困難です。最終的な成果指標のROIが判断できるまで、先行のKPIをいくつか置き、施策の判断をしています。このような前提条件を踏まえ、テレビCMを次に活かすための検証ができるのは、ノバセルしかありませんでした。
――まさに「検証」の考え方を大切にされる中で、ノバセルの導入を決定したのですね。
三浦:はい。また、ノバセルのUIは、どの枠にテレビCMが放送されるかの作案がシンプルでわかりやすく、データについてもほぼリアルタイムで速報値が出ます。数字の更新が早いことは、数字責任を負っているマーケターにとって欠かせない要素です。
放映開始から2週間、見えてきた傾向とは?
――具体的にどのように運用を行ったか教えてください。
三浦:今回は、関西、静岡、北海道の3つのエリアで、“コの字型”に放映しました。クリエイティブはお客様にスパイダープラスについて語っていただくもので、エリアごとに8パターン程度を作成し、 クリエイティブ×放送時間帯のかけ合わせで効果を見ていきました。
三浦:テレビCM放映中は、効果分析ツール「ノバセルアナリティクス」を頻繁にチェックしていました。「ノバセルアナリティクス」は、クリエイティブ・放映番組ごとにCVをリアルタイムで計測してくれます。朝起きてから約1時間おきに確認していましたね。外出先でもスマホで見られるのも良いところです。
並行してWebサイト経由でいただいたお問い合わせについて、前月、前週、前日比での数の推移を追うことに加え、私たちがターゲットとしている顧客層かどうかも見ていました。定性データを集めるために、営業部門には提案や商談時に顧客のテレビCM視聴の有無を毎日ヒアリングしてもらいました。
――テレビCM放映を通じてどのような気づきがありましたか。
三浦:デジタルプロモーションだけではコンタクトが取れなかった企業から継続してお問い合わせがくるようになり、テレビCMの有効性を実感しました。
そして放映開始から2週間ほど経過すると、まず反応の良いクリエイティブが絞り込めてきました。続いて「クリエイティブの違い以上に、時間という変数が大きく影響しているのではないか」という仮説が浮かび上がりました。特定の曜日においてパフォーマンスが出なくなるということが見えてきたのです。そこから同曜日、同時間帯においてクリエイティブの比較を行うことで、プロダクトの優位性をどのように伝えると効果が高いのか、傾向が掴めてきました。
――数値を見ながら運用することで、改善が進んでいったのですね。お客様の反応はいかがでしたか。
三浦:営業時には、必ずと言っていいほど「テレビCMを見たよ」と言っていただけるようになりました。さらに、ご出演いただいたお客様のもとに、「スパイダープラスについて教えてほしい」と複数のお問い合わせが入っていたこともありました。建設業界の方々は「まずは使っている人に話を聞きたい」という気持ちを強くもっていること、業界内のネットワーク効果を感じました。
――データからは見えないお客様の反応が、興味深いですね。田部さんは、スパイダープラスさんの運用に、どのようなポイントがあると思いますか。
田部:定量と定性の両方のデータを分析し、仮説を立てているのが重要な点です。さらに三浦さんは、営業ヒアリングなどを通して、立てた仮説の検証も実行されています。事象の背景やお客様の行動を知るためには、定性的な動きを把握することも欠かせません。ここまでやって初めて、テレビCMを検証していると言えるのではないでしょうか。
スピーディな検証が、経営層や営業を巻き込む力に
――今回ノバセルを活用した検証で得られた効果を教えてください。
三浦:意思決定のスピードが速くなったのが一番です。ノバセルがあると、放送日時枠が共有しやすく、経営層や営業も関心を持ってテレビCMを見てくれます。すると、「反応はどうだった?」と意識が高まりますし、すぐに数値も出ているため、次の施策が実感をともって話せるようになりました。「昨日の○○番組の枠は、効果が良かった」「あの時間帯は見られないようだね」といった会話が、経営層の間で自然と生まれていました。
そして実は放映終了直後に次のテレビCM出稿の内定が出ており、2021年2月5日の放映開始に向け、準備に取り掛かっていました。本来ならテレビCMの効果に関する議論は数ヵ月は必要なところで、ノバセルのスピード感がなければ、このような動き方はできなかったと思います。
――テレビCMが会社全体の関心事となり、次のアクションにつながったのですね。
三浦:はい。テレビCM放送中の反応を見ながら営業部と一緒に営業施策も作れるようにもなりました。ノバセルアナリティクスの反応と、お問い合わせの数がそこまで比例していない事象もあり、「それはなぜか?」を考えて営業施策を設計した結果から、次回テレビCMにおいてリード数をさらに増やせそうな施策を準備できています。あわせて、営業のトークシナリオも更新し、外部パートナーによるテレアポや販売取次店様へ向けた営業支援体制の強化もできています。
マーケターはテレビCM施策から逃げるな
――ここまでのお取り組みを振り返って、テレビCMに挑戦する上で大切なことを改めてお聞かせください。
田部:仮説を立ててデータを理解し、PDCAサイクルをスピーディに回す。そして、テレビCMを打ったときのお客様の動きを定量・定性で追いながら、施策を立てるということです。これらは基本的なマーケティング手法であり、目新しいことをしているわけではありません。頭ではわかっていても、いざテレビCMを始めると、このような考え方が置き去りになってしまうことが多いので、要注意です。
そして三浦さんとのお取り組みで改めて感じたのは、テレビCMが成功する最大の変数は、事業会社側で意志決定をしている方の解像度にあるということです。WHOとWHATが明確だからこそ、成功したのだと思いますし、まさにノバセルが目指すマーケティングを体現されていらっしゃいました。
――三浦さんは、いかがですか。
三浦:前提として、プロダクトの提供価値が高くなければ結果がともなわないでしょう。お客様のインタビューを撮影したときに、皆さんとても良いお話をしてくださったんです。お客様に貢献できているプロダクトだからこそ、テレビCMを打っても結果につながっている。特にスパイダープラスは建設業務の本丸に関わるプロダクトですので、少しでも疑問を持たれる要素があると導入に至りません。プロダクトへの支持なしに、背伸びをして、クリエイティブや訴求メッセージでおもしろさを作っても、うまくいかないのではないでしょうか。
――最後に、今回の検証を踏まえて、テレビCMに関心を持つ企業やマーケターへのメッセージをお願いします。
三浦:テレビCMは、BtoBビジネスの成長角度を上げていくために欠かせないものです。今後も検証を続ける必要はありますが、社内でも「マーケティング戦略において、大きく認知を取るマーケティングミックスを作っていきましょう」というコンセンサスがとれています。
田部:スパイダープラスさんはBtoBかつバーティカルな業界ですが、しっかり運用することでテレビCMの効果を実感できます。このことは、当社の印刷サービス「ラクスル」の取り組みでも実証されています。“用法・用量”を理解したマーケターが使いこなせば、結果に跳ね返ってくる施策です。
三浦:そうですね。圧倒的なリーチだけでなく、視聴態度の良さや一画面の同時視聴など、デジタルで補完できないテレビCM固有の価値は、まだまだ大きいです。
「効果がわかりにくい」「リスクが大きい」といった不安もありますが、事業に責任を持つマーケターならば、「どうすればわかりやすくなるか」「どうすればリスクを軽減できるか」という発想で検証方法やリスク管理を考え、テレビCMと逃げずに向き合うべきだと思います。
田部:「認知が上がりました」ということ以上に、投資対効果をきちんと示すことができなければ、億単位の投資が必要なCMは敬遠されてしまうでしょう。三浦さんのように、「テレビかWebか」の二項対立ではなく、媒体ごとの特性を正しく理解し、マーケティングミックスを作ろうとするときには、テレビCMの力を正しく評価し、そのポテンシャルを最大限に引き出すアロケーションを行うことが大切になります。テレビCMの検証と運用に挑戦するマーケターに、ノバセルをご活用いただけると嬉しいです。
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