マーケターが押さえておくべき2021年の海外動向
「世界中の人が、すべてのデータに、母国語でアクセスできるようにする」をミッションに掲げる、Wovn Technologies。同社が提供するWebサイト多言語化ソリューション「WOVN.io」は、既存のWebサイトにアドオンするだけで最大43言語、76のロケール(言語と地域の組み合わせ)への対応が可能で、2021年3月現在、国内外あわせて1万8,000サイト以上に導入されている。
API連携も可能なため、メールやチャットボット、サイト内検索でも多言語化が実現できるほか、イントラネットやワークフローシステムなど社内システムでも活用が進んでいる。
Wovn Technologiesのセールスマネージャーを務める小林弘佑氏は、「本日は言語の壁を越えて海外のトレンドにアクセスしてみたいと思います」と述べ、マーケターが押さえておくべき2021年の海外動向を「政治」「経済」「社会」「技術」という4つの観点から解説した。
インターネットの潮流はグローバル化から国際化へ
まずは政治動向について。小林氏は「インターネットの潮流はグローバル化から国際化へ向かっている」と述べた上で、2つの違いを「世界を国境のない1つの場として捉え、共通するルールや価値観の構築を目指すグローバル化に対し、国境の存在を前提としながら国家間ネットワークの拡がりを目指すのが国際化」と説明する。そして、国際化へ向かう中で国ごとの思想に合わせる形で法規制が進みつつあるという。
たとえば、現在日本には明確にインターネット上の情報に関するプライバシーを特定した権利というものは存在しないが、EUでは「GDPR(General Data Protection Regulation)」が施行されるなど、インターネット上で情報を収集する際のルールが整備され始めている。また、中国では国家保護の観点から企業がビジネスを展開する際や情報へアクセスする際の規制が進められている。最近はデジタル課税に関する法律が新たに世界中で敷かれようとしており、「海外におけるビジネス展開を検討している企業は法規制や税金を考慮するべき」と小林氏は語った。
成長を続けるグローバルEC市場
2つ目は経済動向について。コロナ禍の長期化によって企業のコスト削減が余儀なくされ、インバウンド回復に向けたアクションも見通しが立たない。一方で、成長を続けるのがグローバルECだ。グローバルECの小売売上高は2021年で4.9兆ドルに到達すると予想されているが、各国のEC化率は20%以下と実はそこまで高くない。
EC化率の上げ止まりに対して、企業はどのようなアプローチをとるべきなのか。小林氏は2つの手法を紹介した。1つは、サービスの提供対象国を拡げることで各国の20%を獲得しにいく米国式のアプローチだ。大手ECプラットフォームのアマゾンは米国内だけでなくドイツやイギリス、日本などの国外でも売上を伸ばすことでビジネスを成長させてきた。もう1つは、国内で80%のオフライン売上を獲得しにいく中国式アプローチだ。アリババは世界人口の5分の1にあたる14億人もの国民のオフライン消費を狙う戦略へシフトした結果、2010年から2017年にかけて内需だけで売上を大幅に伸長させた。
「日本は中国ほど人口が多くなく国内市場も大幅にシュリンクしているため、中国式よりも米国式のほうが拡大余地を感じられると思います。適切なアプローチは市場や対象国の動向によって異なるので、各企業のビジネスに寄与しそうなポイントを見極めて取り入れると良いでしょう」(小林氏)
サステナブルな取り組みが評価される時代へ
3つ目は、社会動向について。昨今、日本でも多くの企業がSDGsへの貢献をミッションに掲げているが、ESG投資を見据えたSDGs貢献の重要性を小林氏は強調した。ESG投資とは、環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視し、選別して行う投資のことを指す。近年は企業価値を示す株価の取引において、業績だけでなくSDGs貢献に関する発信を加味して投資する動きが増えているという。
「株式市場の6割以上を海外からの投資額が占めている日本において、サステナビリティへの取り組みを世界の投資家に向けて発信することの重要性は計り知れません。マーケティングには関係の薄い話に聞こえるかもしれませんが、投資家のみならず消費者の中にもサステナビリティを重視する人は増えています。注力するに越したことはありません」(小林氏)
小林氏は社会動向としてDXの推進加速についても言及した。新たな価値創造を目的にビジネスモデル、マーケティング、組織の仕組みなど、あらゆる領域でデジタルシフトが進められる一方、陥りがちな失敗が「目的と手段の入れ替わり」だ。デジタルに対応することが目的になってしまっていないかを逐一点検するよう小林氏は呼びかけた。
「多言語対応」が売上につながる重要な要素に
続けて、多言語対応のトレンドについても触れられた。世界的に発展しているサイトを選出する「Web Globalization Report Card 2020」によると、主要150サイトでは平均33もの言語がカバーされている。対応言語の拡大はここ1、2年で顕著な傾向を見せ、背景には海外へのビジネス展開に力を入れる大手企業の存在があった。一方、日本国内で33言語をカバーしているサイトは上場企業を含めてもほとんど見当たらないという。
「インターネットが普及し、様々な国のサイトへアクセスできるようにはなりましたが、多くのユーザーはそれらに母国語でアクセスしたいと思っています。EUの調査会社が加盟国に住む1万3,700人に向けて行ったアンケートによると、10人中9人が『母国語でサイトを訪問することを好む』と回答し、42%の人が『母国語以外のサイトで商品を購入したことがない』と回答しました。言語対応がビジネスの国際化を促進し、売上につながる重要な要素であることを示すデータと言えます」(小林氏)
複雑化するユーザー行動、CDPによるカスタマー理解が鍵に
4つ目の海外動向は技術について。オンラインとオフラインを行き来させるO2Oや、顧客接点を増やすオムニチャネル、オンラインとオフラインを一体のジャーニーとして捉えるOMOなど、これまでジャーニーマップの考え方は進化してきた。複雑化するカスタマージャーニーを一元管理するために必要なのが「CDP(Customer Data Platform)」だ。ビジネスを海外に展開するとなれば、各国のカスタマーの行動を正しく分析し、理解して次の施策につなげなければならない。そのためには「一刻も早いCDPの導入を」と小林氏は強調した。
ハイパーオートメーションも注目すべき技術動向の1つだ。ガートナーの担当者によると、「企業が抱えるビジネスプロセスの多くが自動化に向かいつつある」という。今は購買プロセスやカスタマーサービスなど、あらゆるものの自動化を意味するハイパーオートメーションが不可逆な時代に突入している。
マーケティングはハイパーオートメーションにいち早く着手してきた領域だと言える。それまで手作業で最適化していたターゲティングやリード獲得を自動化することによって費用対効果を向上し、マーケティング担当者は浮いた時間を付加価値の創造に充てられるようになった。
機械翻訳は適材適所、API連携で海外対応可能なシステム作りを
技術動向の目玉とも言えるAI活用について、小林氏は機械翻訳の観点から解説を行った。機械翻訳はスピード、コスト、対応言語の数において大きなメリットを生み、定型的な文章や主語と述語がある文章の翻訳を得意とする一方、略語や固有名詞を含んだ文章の翻訳や、行間を読み取る翻訳においては人力に軍配が上がる。
「機械翻訳の課題は翻訳品質にあります。95%の精度まで高まってきたというデータは出ていますが、それでも1,000語につき50ヵ所の誤訳が発生する計算になります。完璧主義の傾向が強い日本企業の多くは、50ヵ所の誤訳を恐れて機械翻訳を一切使わないか、多言語対応自体を諦めてきました。活用のコツは、機械翻訳・人力翻訳・ハイブリッド型のポストエディットをコンテンツに応じて使い分けることです。専門用語を含む文章やクリエイティビティが求められるキャッチコピー、社外向けのコンテンツは人力とポストエディットを組み合わせ、社外向けほど高い精度が求められない社内向けのコンテンツは機械翻訳化すればコストを抑えつつ品質を担保できます」(小林氏)
高額なシステムを導入したり、新しい仕組みを自分たちで1から創造したりする場合は相当な初期投資が必要となるが、APIを使えば各機能に特化した外部のサービスと簡単に連携することが可能となる。日本のECではまだ自前で実装できない海外発送のサービスも、海外ではAPIを介して対応しているところが多い。「マルチ通貨決済や購入代行など、様々な外部サービスと連携することでAPIエコノミーを構築できないか検討すべき」と小林氏は話した。
政治、経済、社会、技術、様々な領域でトレンドは変容し、先進事例が生まれている。情報へ簡単にアクセスできる一方、言語の壁を理由にその情報を3%しか理解できていない人もいるという。講演の最後に小林氏は「2021年は情報の取得と発信について考えてほしい」と語り、講演を締めた。
Webサイト・アプリの多言語化に興味がある/課題を感じている方へ
Wovn Technologiesは、Webサイト・アプリを最大43言語・76のロケール(言語と地域の組み合わせ)に多言語化し、海外戦略・在留外国人対応を成功に導く多言語化ソリューション「WOVN.io」および「WOVN.app」の開発・運営をしています。
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