Similarwebで振り返る2020年ファッション業界
平良氏は続いて、Similarwebのデータを実際に用いてファッション業界のEC事情について深堀して見せた。
業界全体では、新型コロナウィルス感染拡大の影響で店舗閉鎖、時短営業、人出減少という厳しい状況に置かれている。通常ならば商戦期である12月の売上も、帝国データバンクのアパレル上場企業を対象とした調査(2020年12月分)によると、約8割の企業が前年を下回った。
しかしながらECだけの売上で見ると、前年と比べ軒並みパフォーマンスが向上している。店舗へ行けない分、顧客がオンラインに移行していると予想できる。
Similarwebでも、アパレル系ECサイト売上上位100社の2年間のトラフィック推移(2019年1月~2020年12月)を見ると、トラフィック量が1.2倍に伸びていることを確認できる。
特にモバイルからの流入が1.23倍と大きく伸びたが、デスクトップは1.03倍とほぼ横ばいであった。
100サイトのトラフィックシェアをグラフ化してみると、ZOZO、ユニクロなどの上位10サイトがシェアを落としている一方で、他のサイトがシェアを伸ばしているのがわかる。
その原因を平良氏は、次のように分析する。
「上位サイトをそれぞれ分析してみたところ、トラフィック自体は落としていませんでした。つまり、下位サイトの伸び率が高かったです。そこでSimilarwebを使って見てみると、上位10サイト外のGUが急速にシェアを伸ばしていることがわかりました。そのため上位のシェアがシュリンクしたと考えられます」(平良氏)
では、このようなデータを使って具体的にどのような施策を打っているのか。事例としてユナイテッドアローズ 第二事業本部デジタルマーケティング部 部長の柚木園 顕豪氏がSimilarwebの導入から活用、成果を語った。
導入から約半年で成果、ユナイテッドアローズの事例
柚木園氏は服と雑貨アイテムを取り扱う「green label relaxing」、「THE STATION STORE UNITED ARROWS LTD.」をはじめとしたブランド事業、オンラインストアの運営とWebマーケティングを管轄している。
Similarwebを導入して約半年となるが、導入前は自社で運用しているECサイトの売上シェア拡大が大きな課題だった。
「緊急事態宣言によってECでの売上アップが喫緊の課題に変化しました。それに伴い、Webトラフィックの競合比較での可視化が必要だと考えたのです。Similarwebを選んだ理由は、業界や競合を含めて総合的に自社と比較分析できる点です。他のツールも検討しましたが、SEO対策に関しても一緒にパッケージ化されていて、全方位的にカバーしていることも最終的な決め手となりました」(柚木園氏)
導入後は柚木園氏を全体統括とした4人体制のチームで活用を開始。日常業務にSimilarwebを組み込むために、「誰が」「いつ(頻度)」「ビジネス目標/KPI」「どんなデータを抽出してアクションを行っていくか」を明確にしたワークフローを設定し、早くからパフォーマンスを向上させていったことが良い成果につながったという。