プロジェクトの全体像
サイトリニューアルのプロジェクトは、全部で4つのフェーズ「方針策定」「制作・実装」「検証・調整」「公開・測定」に分けて、スケジュールを組みました。

1、方針策定(約3ヵ月)
現状のサイト運営のルールやレギュレーションを踏まえ、設計・デザインの方針を策定する。
2、制作・実装(約5ヵ月)
情報設計・画面設計を踏まえ、デザインとフロントエンドを構築。その後、社内の開発チームによるCMS組み込みを実施。
3、検証・調整(約4ヵ月)
量・質的検証を踏まえて、サイトリニューアルの最終調整を実施。
※途中で量的検証は、公開後に実際の数値・パフォーマンスを確認することとし、事前の量的検証は行わない方針に変更。ユーザーの印象変化やユーザビリティの向上が図られたのかを検証するため、質的検証に重点を置くこととした。
4、公開・測定(約2ヵ月)
サイトリニューアル後、改善成果を検証。問題が生じていなければプロジェクト終了。残課題があれば、次フェーズとして継続対応。
結果的に、当初の予定よりも「検証・調整」のフェーズで時間がかかり、1年がかりのプロジェクトとなりました。
落とし穴:スケジュールの後ろ倒し
コロナ禍とともに過ぎ去った2020年。サイトリニューアルのプロジェクト進行自体は、SlackやBacklog、Zoomを活用し、オンライン環境でも密にスムーズに進行していきました。ただ、当初の予定よりも、「検証・調整」のフェーズで時間がかかりました。
その理由としては、プロジェクトの途中で、ユーザーの印象変化やユーザビリティの向上が図られたかを検証するため、質的検証に重点を置くことに方針転換をしたためでした。
MarkeZineではこれまでも、読者を知ることに注力していきました(参考記事)。このサイトリニューアルのプロジェクトを通して、一人ひとりの読者の方の意見や評価を知り、その声を活かしたいという思いがあり、実行しました。
スケジュールは遅れたものの、結果的には、想定以上のヒントが質的調査から得られたため、実のある回り道となりました。
ここからは、各フェーズでどんなことに取り組んだのか、実際のToDoを共有します。
フェーズ1「方針策定」/ログデータからサクセスユーザーのインサイトを探求
フェーズ1の「方針策定」では、主に4つのことに取り組みました。
1、現状のルール・レギュレーションの把握
2、ログデータを用いたサクセスユーザーのインサイト探索
3、リニューアル要求事項に対する、ベストプラクティスの把握
4、リニューアル方針の取りまとめ
特に学びが大きかったのは、「ログデータを用いたサクセスユーザーのインサイト探索」でした。ここでは、私たちが重要視している指標からロイヤル読者を定義したうえで、ログデータから閲覧行動を把握しました。読者がMarkeZineをどのように使っているのか、その特徴をパターン化して見出し、リニューアル後も尊重するべき閲覧行動として把握したのです。

膨大な分析データから、読者の5つの閲覧行動パターンが浮かび上がってきました。そしてそれぞれの行動パターンに対するKPIを定義し、それを実現するUIを探索するために、30以上のウェブサイトのUIを要素ごとに調査し、ベストプラクティスを探していきました。そうしてやっと、リニューアル方針が言語化・可視化され、チームで共通認識をそろえることができました。
フェーズ2「制作・実装」/要件漏れの発覚…
そして、いよいよ「制作・実装」のフェーズに入っていきます。ここでは大きく3つの段階がありました。
1、コンテンツ整理・ナビゲーション設計
2、画面設計・デザイン制作
3、フロントエンド構築
このフェーズでも、想定外の出来事が起きました。プロジェクトを進めていく途中で、要件漏れが発生していたのです。
落とし穴:「会員登録フォーム」リニューアルの追加発注
MarkeZineは会員制のビジネスモデルを採用しており、読者の会員基盤の拡大をビジネスの重要なKPIの一つとしています。この度のサイトリニューアルでも、会員獲得効率の向上が一つの目的でした。プロジェクトを進めていく中で、MarkeZineのサイトから会員登録をする際に読者が遷移する「会員登録フォーム」を合わせてリニューアルすることで、より大きなパフォーマンスを望めるのではないかと気づいたのです。
しかし、当初の要件には、「会員登録フォーム」のリニューアルは含まれていなかったため、追加予算を獲得するための社内交渉に工数がかかりました。プロジェクト全体の設計を、より深いレベルで理解しておく必要があったと反省しました。