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BtoBマーケティングにまつわる4つの理想と現実

2. オンラインマーケティングを強化すれば、営業はいらない?

【理想】オンラインマーケティングを上手にやれば、営業なしで売れる仕組みが作れる

【現実】日本企業内には稟議や社内調整のプロセスが存在するため、営業パーソンによる提案活動、顧客フォローが必須

 「営業を介在させずに、オンラインマーケティングのみで売れる仕組みを作りたい」という相談は当社にも度々寄せられるが、これは極めて難易度が高い。購買担当者が当該領域へのリテラシーが高く、自分の決裁金額内で決裁できる場合は話が別だが、ほとんどのケースで「営業から詳しい話を聞きたい」「社内の他のメンバーへの説明・確認が必要」「社内規定上、コンペや相見積もりが必須」などの条件が存在し、オンラインマーケティングのみで完結できるケースは驚くほど少ない

 また、そもそも複雑性が高いBtoB商材をWebサイトや営業資料のみで顧客に適切に伝えることは難しく、営業パーソンが口頭で説明してしまった方が手っ取り早いし、顧客の理解も進みやすい。

 以前、あるWebサイトで「無料トライアル」しかボタンがなかったところに、社内説明・稟議用の「資料請求」のボタンを置いたところ、コンバージョン率が2倍になったことがあった。基本的には営業活動を行う前提で、それをいかにオンラインマーケティングの各種施策で後押しできるかを考えたほうが、売上は上がるだろう。

オンライン完結に関する理想と現実
オンライン完結に関する理想と現実

3. 他社事例を参考にすればヒントが得られる?

【理想】BtoBマーケティングが上手な会社を参考にすればヒントが得られる

【現実】他社の取り組みはほとんど参考にならない。自社の戦略や自社の顧客に基づいて、自分の頭で考えよう

 世の中では様々な事業やマーケティングの成功事例が語られる。しかし、それらの他社事例をそのまま真似ても成果が出ないばかりか、下手なインプットが逆効果になり、目標達成が遠のくことすらある

 たとえば、一口に「BtoB商材のマーケティング」と言っても、以下のような変数によって最適な戦略が変わる。

・すでに市場があるか、市場創造が必要か
・顧客基盤を持っているか、いないか
・商材単価は高いか、低いか
・顧客は大手企業か、中堅企業か、中小企業か
・顧客の部署はどこか
・顧客の役職はなにか
・顧客の職種はなにか
・顧客側に専門知識があるか、提供者側に専門知識があるか
・顧客はネットを使っているか、使っていないか
・顧客はSNSを使っているか、使っていないか
・明確なトランザクショナルクエリ(資料請求、購入、問い合わせなどの行動が明確に想定されている検索クエリ)はあるか、ないか
・顧客が緊急時にのみ探すものか、そうでないか
・ターゲット顧客の数はどの程度か
・競合他社はなにをやっているか
・市場の動向はどうなっているか
・自社が保有または調達可能なリソース(人、モノ、金)はどの程度か

 ざっと挙げただけでも上記のような変数によって、自社が取るべき戦略や施策は変わる。

 昨今、流行している「THE MODEL」のような分業型の組織体制や「ABM(Account Based Marketing:アカウント・ベースド・マーケティング)」のような手法に関して、「自社で実践したものの成果が出ない」という声をよく聞くが、これは各社が置かれている状況がまったく違うにも関わらず、他社事例をそのまま真似ても成果が出づらいことをよく表している。

 もちろん事例を抽象化して、背景にある狙いや考え方を学ぶことは有益だが、これもまた難易度が高い。そのため変に他社事例をインプットするぐらいなら、自社の事業や顧客、競合を理解すること、戦略・施策を実行して、実践の中から学びを得ることにリソースを割いた方が良い。自社が置かれている具体的な状況に合わせて、自分の頭で具体的な解決策を考えることが何よりも重要だというのが筆者の見解だ。

次のページ
4. マーケティング上手な会社になれば、顧客数を伸ばせる?

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この記事の著者

栗原 康太(クリハラ コウタ)

1988年生まれ、東京大学文学部行動文化学科社会心理学専修課程卒業。 2011年にIT系上場企業に入社し、BtoBマーケティング支援事業を立ち上げ。事業部長、経営会議メンバーを歴任。2016年に「才能を流通させる」をミッションに掲げ、経営者・事業責任者の想いの実現を加速させる株式会社才流を設立し、代表取締役に就任。 アドテック東京などのカンファレンスでの登壇、宣伝会議・広報会議など主要業界紙での執筆、取材実績多数。 Twitterアカウント(https://twitter.com/kotakurihara) | Facebookアカウント(https://www.facebook.com/kota.kurihara)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/36202

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