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トライブレポート:最先端の消費インサイトを知る

欲しいのは家政婦ではなく家の総務部? 家事代行を活用する人たちが本当に“アウトソース”したいこと

自分がやってないからイラつかない。“心理的負担”の外注

 これまで家事をやる負担、考える負担の2つの外注を説明しましたが、最後に紹介するのが「家事の心理的負担」の外注です。フリーランスのSさん(30歳)は、家事代行に頼んだことによって次のような気持ちが芽生えたと言っていました。

 「ストレスがすごく減りました。私が家事をしていたら、うっかり散らかしてしまったときにイライラした気持ちになっていたけど、人が綺麗にしてくれた場合は、まあ人がやったからいいかと気が楽になった。育休の時は夜も眠くてイライラしているときに、自分が片付けたところを散らかされたらムカついたけど、今は自分がやったわけではないからいいかと」(Sさん)

 これが3つ目の外注の価値、家事の心理的負担の外注です。二人以上の家で暮らしていると、完全な分担を行わない限りは、どちらかが家事を行い、他の人たちがその恩恵を受ける形になります。そうすると、どうしても「私が片付けたのに散らかされた」「私が作った料理なのに残された」といった小さなイライラが募ってしまう。その心理的負担をすべて家事代行に担ってもらえることが大きなメリットになるのです。

 コロナ禍で料理のデリバリーやテイクアウトが増えたときにも、「食事を第三者が作ってくれるから、子供が残したとしても嫌な気持ちにならない」といった意見を聞きましたが、まさにデリバリーも食事における「心理的負担の外注」であると言えるでしょう。

 また同様に、あるシェアハウスに筆者がお邪魔したときにも家事における責任のあり方について話を聞きました。彼らいわく、最初は家事をやった人に対してインセンティブを居住者で折半していたが、それではその人と雇用関係のような気持ちが生まれ上手く回らなかった。結果として多少高くても外部の人にすべて頼むことにした、といった経緯でした。

 いずれの話も、家事を行ったことに対する見返りを同居者間で求めたくない、というニーズの現れです。

 家事という仕事を家庭内で押し付け合わず、見返りを求め合わないために、あえて第三者に家事を任せる。そうすることよって、家庭内の心理的な負担を取り除くという価値が家事代行には存在するのです。

理想はホテルのような家

 ここまで、トライブの家事代行生活を紹介しながら、3つの外注の価値を説明してきました。これらの外注の価値をもとにこれからの家事のあり方を考えると、「ホテルのような家」が彼らの求める家事の理想として浮かび上がってきます。実際にトライブの人たちも、「理想はホテル」と口々におっしゃっていました。家に帰れば常に綺麗な状態で、食事や洗濯もすぐに頼める。それだけではなく、いつどんな家事をやるか、という考える手間もなければ、家庭内で責任を押し付け合う必要もありません。

 当然、ホテルに住むことは多くの人にとっては経済的に難しく、またホテルに近しいサービスを提供しているラグジュアリーマンションも同様に高額です。だからこそ、彼ら彼女らは家事代行をうまく活用し、経済的な負担を調整しながら家のホテル化を目指しているのでしょう。

 今、益々利用者の増えている家事代行業界ですが、トライブを見る限り、まだまだ新しいニーズとサービスが存在すると感じさせられます。

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この記事の著者

大川 将(オオカワ ショウ)

株式会社SEEDATA チーフ・フューチャリスト
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科X-Designプログラム卒。大学院では新宿ゴールデン街を対象にしたエスノグラフィー研究を行う。2017年より株式会社SEEDATAのフューチャリストとして、生活者の定性的なリサーチをもとに幅広い業界のクライアントに対して生活者起点での未来の兆しを提供。現在は生活者のインサイトをデータベース化し企業に提供するSEEDATA GLOBALの構築に従事し、生活者インサイトデータベースを活用したコンサルティングサービスを企業に提供。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/21 09:00 https://markezine.jp/article/detail/36597

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