情報のハブとしてウェブサイトとYouTubeを活用
MZ:トヨタイムズは、テレビCMや新聞、ウェブサイト、SNS、YouTubeと様々なメディアを横断して展開されています。それぞれのメディアの特徴や役割をどのように捉えていらっしゃいますか?
北澤:テレビCMや新聞広告などのマスメディアはウェブへの入り口です。ウェブサイトやYouTubeに長尺の動画や記事コンテンツを置き、そこで本当に伝えたいストーリーや想いを伝えられるようにしています。また、ウェブサイトとYouTubeにはトヨタ自動車に関する様々な情報を集約し、コンテンツを蓄積しています。「トヨタ自動車のことを知りたい時は、トヨタイムズを見れば正しい情報を得られる」という状態を目指しています。
MZ:トヨタイムズの一連の施策は、高い成果をあげたYouTube広告を表彰するアワード「YouTube Works Awards Japan 2021」の「Media Orchestration部門」も受賞されましたね。
北澤:はい、ありがとうございます。YouTubeのトヨタイムズチャンネルでは、テレビCMと記事を連動した映像を配信しており、先ほどお話しした通り、情報のハブという役割があります。テレビCMの短い時間では伝え切れない背景やストーリーが伝わるような動画、文字と写真の記事だけでは知ることのできない臨場感を感じられるような動画を見ていただけるようにしています。
たとえば、労使協議会や決算発表会、株主総会などの様子は従来は社員でも見ることのなかったシーンです。また、ノーベル化学賞受賞者の吉野彰さんやスズキの鈴木会長、イチロー選手など、ほかのメディアでは実現しえない豊田と著名人との対談も配信しています。
MZ:YouTube広告は、どのような目的で運用されていますか? その成果についても教えて下さい。
北澤:YouTube広告は、マスメディアでリーチできない層へのリーチ、トヨタイムズの記事への誘導、チャンネル登録者の増加の3つを主な目的として、それぞれの目的に即した運用をしています。その結果、2021年4月にはチャンネル全体のトラフィックソースの47.9%がYouTube広告からの流入となりました。チャンネルの総視聴回数は約7,870万回視聴、チャンネル登録者数は約17.5万人(2021年6月時点)を獲得しています。
YouTube Works Awards Japan 2021 メディアオーケストレーション部門 審査員よりコメント

Q:今回のアワードでは、トヨタイムズのどのような点を評価されましたか?
――トヨタイムズのコミュニケーションは、YouTubeはもちろんのこと、テレビ、グラフィック広告、広報戦略のすべてを有機的に結びつけて、ひとつのトヨタイムズというコンテンツを作っている点で、メディアオーケストレーションという部門にふさわしいと結論づけました。「企業自ら編集して発信できるひとつのメディアを作りたかったのではないか」と想像していますが、これには相当な覚悟がいりますし、継続するための労力も必要だと思います。それを何年間も実施されており、本当に尊敬すべきコンテンツです。
Q:メディア接点が多様化し、SNSやYouTubeのプラットフォームが拡大している今、メディアプランニング、アロケーションはますます難しくなっています。広告主へアドバイスをいただけますか?
――広告主それぞれに異なる立場や課題感があると思いますが、「関係性を築きたいお客様に対し、確実にメッセージを届け」、「態度変容を促す」という目的とゴールは各社共通していると思います。ですので、まずメッセージを届けたいお客様の関心や行動をよく知ることがメディアアロケーションの第一歩だと思います。
“本気のオウンドメディア”が掲げているビジョン
MZ:広告と広報の融合という新しいコミュニケーションの形に挑戦されてきて、どのような可能性を感じていらっしゃいますか?
北澤:トヨタイムズを始めた後に、「トヨタ自動車は信じられないけど、豊田章男のことは信じられる」という言葉をSNSで目にしました。一見するとネガティブな要素もあるように感じられるかもしれませんが、こういった声をいただけるのも嬉しいことで、こうした思いになっていただける方が少しでも増えるとよいと思っています。
トヨタの車を買いたいという声が増えるのはもちろん嬉しいですが、もっと長期的に、トヨタ自動車と一緒に仕事をしたい、トヨタ自動車が目指す未来への挑戦に参画したい、もしくは応援したいという声を少しでも増やしていけるといいですね。
MZ:最後にトヨタイムズにおける今後の展望をお聞かせください。
北澤:トヨタイムズは、短期的な収益を上げることが目的ではありません。長期的な視点を持って運営している“本気のオウンドメディア”です。
我々としては、まだまだ見ていただきやすいコンテンツ作りができているとは思っていません。トヨタ自動車の応援団づくりのため、もっと見ていただけるメディア、もっと見たくなるメディアになれるよう、引き続き努力していきたいと思います。