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MarkeZine Day 2025 Retail

全国コンテンツマーケティング探訪~現場の声からヒントを得る

担うミッションはCVだけじゃない オウンドメディア「となりのカインズさん」の秘密


たどり着いた答えは「全社改革のためのプラットフォーム」

 答えとなったのが、中期経営計画の戦略の一つに挙げられていた「メンバーへのKINDNESS」というフレーズだ。プレスリリースを確認すると、戦略が目指すものとして「多様性を受け入れる環境整備」「価値観・目的を共有するコミュニケーションへの投資」という項目が並ぶ。

 「店舗への送客やPVだけを狙うなら、当初のペルソナやトーンで良いでしょう。しかし、売上を1億円アップさせたとしても弊社にとってのインパクトは薄い。もっと大きな視野を持つ必要があります。カインズが変わろうとするなかで生まれるメディアなので、全方位的にいろいろなことを試す場にしたかった。最終的には『全社改革』が目的となりました。もちろん、それを言い訳に売上貢献から目をそらすのは言語道断です」(清水さん)

 オープン予定日が迫るなか、幾度となくペルソナやカテゴリを見直した。立ち位置を見失ってしまいそうになる作業だが、全社改革という目的はぶれなかった。立ち上げメンバーは清水さんを含め、3人。少人数ながらもなんとかオープンにこぎつけ、多様性を生み出すプラットフォームが完成した。

合言葉は、メシの横にムシ!?

 多種多様なコンテンツが生まれる背景は何か。清水さんは、運営における合言葉「メシの横にムシ」を大切にしていること、そして「ライター、制作会社もカスタマーである」という姿勢を貫いていることの2点を挙げる。

 同メディアでは、食事に関する記事の隣に虫に関する記事が並ぶこともある。「ホームセンターのユーザーを考えると、『洗剤を買った後にペットフードを買って、竹竿も買う』と一見すると一貫性のない買い物の仕方になる。ついで買いがホームセンターの魅力でもあるので、メディアの方向性もそれが良いと思った」と、合言葉に込められた思いについて説明する。

 コンテンツの企画は、社内メンバーの発案だけでなく、外部のライターの持ち込みによるものも多い。ライター自身の熱量が感じられ、企画がホームセンターに少しでも触れていれば、基本的に執筆を依頼することになっている。

 メディアではタレントを取り上げている記事もあるが、一見するとホームセンターと関連がないように思える。たとえば、バラエティー番組で人気を博し、現在は農家に転身しているというパークマンサーさんを取り上げた記事。農具について「カインズではないホームセンターで買っている」の一文があることで、関連性が認められたという。ライターの属性や書きぶりもさまざまで、文体も個人のブログのようなものから論文調のものまでと幅広い。「クオリティーや世界観を押し付けない」。メディア運営において大切にしている姿勢だ。

上述のパークマンサーさんの記事。ホームセンターに少しでも関連していればコンテンツを掲載する方針をとっている(クリック・タップで画像拡大)
上述のパークマンサーさんの記事。ホームセンターに少しでも関連していればコンテンツを掲載する方針をとっている
(クリック・タップで画像拡大)

 ホームセンターが運営するメディアだからこそ、さまざまなコンテンツが生まれやすい環境にあるといえるだろう。しかし、コンテンツの種類が豊富であれば、統一感が失われるリスクも生じる。短期間で多くの読者を獲得できたのは、メディアの目的を定め、ぶれない運営を心がけているからだろう。清水さんは同社全体の課題を分析したうえで、「カインズやワークマンを含むベイシアグループの基盤である企業理念『For the Customers』を吸収・咀嚼し、それを自ら体現するメディア設計にした」と振り返る。

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社内の受け止め方にも徐々に変化が

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この記事の著者

山田 太一(ヤマダ タイチ)

エディター、コンテンツマーケティングコンサルタント。産経新聞記者、人材採用広告会社の営業を経て、クマベイスに入社。クライアントワークにあたるとともに、コンテンツマーケティングやコンテンツ戦略の海外事例を研究する。熊本県出身。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/19 23:53 https://markezine.jp/article/detail/36911

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