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全国コンテンツマーケティング探訪~現場の声からヒントを得る

リピーターを生むコンテンツ戦略とは? おみちょ市場の魅力を伝え続けるECサイト「イチバのハコ」

 コンテンツマーケティングに取り組む全国の企業を取材し、現場で蓄積されたノウハウを学ぶ本連載。第5回は、約300年の歴史を持つ近江町市場(金沢市上近江町)の食材を取り扱うECサイト「イチバのハコ」の事例を紹介する。利用者の約半数がリピーターになるなど、多くのファンを生み出している同サイト。市場の賑わいが伝わってくるようなコンテンツを届けていることが、高いリピート率の要因となっている。

寝る間を惜しんで立ち上げたECサイト

 地元で「おみちょ」という呼び名で親しまれている近江町市場は、金沢市民の台所としていつも賑わう商店街だ。市民のみならず、老舗料亭や有名レストランの料理人も訪れるといい、質の高い食材が日々取り引きされている。

イチバのハコサイトトップ
イチバのハコサイトトップ

 そんなおみちょの食材を取り扱うECサイトが「イチバのハコ」だ。イチバのハコの特徴は、近江町市場の食材単品を届けるのではなく「金沢おでんのハコ」「祝い膳のハコ」など、料理法や食事シーンに合わせて複数食材を提供している点にある。「そこが私たちのこだわりでもある」と話すのは、サイトの運営会社こはく(同市)の橋本千穂さんだ。

イチバのハコの広報業務やコンテンツ制作などを担当している橋本千穂さん
イチバのハコの広報業務やコンテンツ制作などを担当している橋本千穂さん

 橋本さんは「近江町市場で店舗を営む方の中には、個人でECサイトを運営している方もいます。そんな方々と競合せず、当社ならではの付加価値を出すために今の形を取っているのです」と説明する。

調理方法や食事シーンに合わせて複数の食材が届けられる
調理方法や食事シーンに合わせて複数の食材が届けられる

 サイトの立ち上げは2020年4月。世の中が新型コロナウイルスで揺れ始めた時期だ。「近江町市場ツアー」など、金沢を訪れた観光客向けに体験型アクティビティを長らく提供してきた同社だが、観光客の減少にともない新たな一手としてサイトを立ち上げることとなった。

 同社の社員は4人。橋本さんは「立ち上げ時は寝る間も惜しんで作業をした」と苦笑しつつも「こはくの取締役がおみちょの商店と縁の深い人物で。体験型アクティビティでのお付き合いもあったため、市場の皆様とは良い関係を築かせていただいていました。そんな背景もあり、比較的スムーズにイチバのハコを立ち上げられたのです」と振り返る。

顧客に手紙を書く気持ちでコンテンツを制作

 橋本さんはサイトの広報業務やコンテンツ制作などを担当しているが、ECサイトの運営に携わるのは初めての経験だった。こはく入社前は新卒で入社した大手IT企業を経てシンガポールに移住。シンガポールでは、日本料理を提供するフードエリアの企画やPR業務に携わっていたという。「シンガポールでの経験からマーケティングに興味を持った」と語る橋本さん。2020年初頭にこはくへ入社してすぐ、新天地で手探りのコンテンツ制作が始まった。

 「おみちょの1番の魅力は人なんです」。橋本さんの言葉通り、ECサイトには市場の人々の顔が見えるコンテンツが並ぶ。商店街で働く「おみちょびと」を紹介する記事では、店舗の歴史や従業員の人となりを紹介。また、1週間に1度のペースで更新する「スタッフ日記」では、食材にまつわるストーリーやイベントレポートを投稿している。

スタッフ日記の一部。サイトには人の顔が伝わるコンテンツが並ぶ
スタッフ日記の一部。サイトには人の顔が伝わるコンテンツが並ぶ

 単に食材を紹介するのではなく、市場の人にもフォーカスしてコンテンツを制作するのには理由がある。橋本さんは「イチバのハコには、近江町市場や金沢の食材の魅力を伝えたいという思いが通底しています。『こんなおもしろいことがあったよ』と手紙を書く気持ちでコンテンツを制作しているんです」と説明。スタッフ日記は社員全員で取材に向かうこともあるが、制作についてはほぼ橋本さんが担当しているという。

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この記事の著者

山田 太一(ヤマダ タイチ)

エディター、コンテンツマーケティングコンサルタント。産経新聞記者、人材採用広告会社の営業を経て、クマベイスに入社。クライアントワークにあたるとともに、コンテンツマーケティングやコンテンツ戦略の海外事例を研究する。熊本県出身。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/27 08:00 https://markezine.jp/article/detail/40267

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