コンテンツが功を奏し売上は前年比約1.7倍に
「体験の提供」は、コロナ禍以前の同社の中心事業だった。過去に培ったノウハウは、オンラインでも遺憾なく発揮されている。その1つが「オンラインショッピング体験」だ。定期便を購入している顧客を対象に、ZoomのURLを発行。定期便の発送直前に近江町市場と顧客をZoomでつなぎ、市場のスタッフがその日のおすすめ食材を紹介する。食材が気に入った顧客はその場で購入を決定。橋本さんらが定期便の箱を現場に持ち込んでいるため、購入した食材が箱に入る様子まで画面に映し出す。顧客はまるで近江町市場で買い物をしているような気分を味わえるというわけだ。

橋本さんは「Zoomのチャット機能を通じて顧客とリアルタイムにやり取りすることで、たとえば『今回は多めに発送してほしい』といった細かいオーダーにも対応可能となる」と、オンラインショッピング体験の効果を強調する。また、顧客が近江町市場を実際に訪れた際に「オンラインで見た人だ」と気付くこともあり、市場のスタッフに親しみを持つ効果もあったそうだ。橋本さんは「近江町市場がずっと元気に続いてくれるのが私たちの願いです。イチバのハコが、顧客と市場をつなぐきっかけになれば本望です」と話す。
数々のコンテンツが功を奏し、2020年の売上が約1,800万円だったのに対し、2021年は約3,000万円にまで伸びた。
市場のリアルを伝え続けていきたい
コンテンツマーケティングを実施する上で大切なことは何か。橋本さんは「しっかりと作り続けること」だと強調する。
「もちろん日々の数値は大切ですが、コンテンツマーケティングには時間がかかります。『それでも作り続けなければいけない』という思いを、当社のメンバー全員が持てているのは、幸運なことかもしれません。また、私たちは生の食材を取り扱っています。月によって旬のものや商材の状態、収穫量が異なるため、数字にとらわれすぎない姿勢が大切なんです」(橋本さん)
こはくでは今後、販路をBtoBにまで広げていくことを目指している。取引先への贈答品やキャンペーンの景品としておみちょの商品を活用してもらうため、カタログギフトのラインナップを拡充中とのことだ。同時に描いている構想が「イチバのカゴプロジェクト」だ。「環境配慮」「持続可能」をテーマに、近江町市場からコンテンツを発信していく。たとえば運送の際に出る排気ガスの削減を目的に、サイトで使えるポイントを付与した上で、イチバのハコの商品を顧客に取りに来てもらう取り組みなどを始めたばかりだ。関連するコンテンツについても、今後充実させていく方針だという。

「イチバのカゴプロジェクトで伝えたいことも、市場の姿の1つ。これからも市場のリアルを伝え続けていきたい」と語る橋本さん。顧客がわくわくするような体験を、これからも届けていくつもりだ。