ロイヤルティの改善と計測に使える指標は?
セッションPart2では、ロイヤルティの計測・改善方法が取り上げられた。Jay氏によれば、最もわかりやすい方法は、KPIの変化に注目すること。一般的なKPIとしては、顧客1人当たりの売上・訪問数、マージン、NPS(ネット プロモーター スコア)、市場調査結果による顧客満足度、定着率、コミュニケーションやプロモーションへの応答率などがある。
他にも会員登録のモニタリングやメンバーのエンゲージメント率と離脱率に着目するなど、ロイヤルティを計測する方法には様々な蓄積がある。具体例については、動画Part2本編【6:21~】をご覧いただきたい。
続いて紹介されたのは、1,000以上の小売店舗を展開する、米国の健康・美容ブランド「Ulta Beauty」の取り組みだ。100ドル使うと3ドルが還元されるというシンプルなプログラムながら、売上の95%をロイヤルティ プログラムの会員が占めており、良く機能していることがうかがえる。その背景には、会員になるハードルが低い上に、非会員が製品を購入するときに比べてお得感が非常に大きいこと、還元されたポイントは同社が提供するヘアサロンなどその他の美容サービスにも利用でき、美しさを追求する顧客にとって有益なことがある。さらに同社は、得られた知見を活用してプライベートクレジットカードを発行。自社ブランドの経済圏を一層強めている。
動画Part2の本編【17:30~】では、顧客視点を徹底したプログラムの構成で会員規模を広げた「Famous Footwear」の事例紹介とともに、そしてマーケットのカバレッジがそれほど広くないブランドの場合、こうした手法をいかに適用できるかをディスカッションしている。
この先、日本のロイヤルティ戦略はどう変わる?
セッション終盤には、未来の日本のロイヤルティ動向について話が及んだ。次の図には、米国と日本のロイヤルティの現状と、それぞれの違いがまとめられている。
たとえば、日本ではリワードプログラムよりも製品やサービスが安心して購入できること、利便性が高いことのほうが遥かに重視される傾向があるが、米国でそれを上回るのは優れた商品・サービスだけだ。
また、米国のほうがプログラムで高い価値が提案されていたり、プログラム自体の普及度が高いという状況も影響しているだろうが、米国の顧客と比べて日本の顧客は、マーケティング活動に自身の情報が使用されることに対し抵抗を感じるという違いが見られる。
「顧客の準備が整うことを待つ必要があり、移行に時間はかかるものの、日本のプログラムは変わる必要があるでしょう。日本企業は取引ベースのロイヤルティを超えた真のロイヤルティを推進すべき時を迎えています。それには当然、データとテクノロジーの活用が欠かせないものとなるでしょう」(Jay氏)
最後に加藤氏から「これからのステップとしてマーケターが踏み出すことのできる小さな一歩はどのようなものか?」という質問が投げかけられると、David氏は次のように見解を語った。
「他社と自社のブランド・サービス・店舗を差別化する、ポイント還元以外のメリットを分析することです。数パーセントのポイント還元をしたところで、競合に追いつかれてしまいます。顧客を本当の意味で大切にすることにつながる事柄は何か。それを見つける必要があるのです。
まずはプログラムの設計と将来のビジョンを練って、魅力的なプログラムを再設計してみましょう。重要なのは、プログラム設計を行う際、調査などを通じて実際の顧客だけでなく見込み客あるいはライバル会社の顧客からもフィードバックをもらい、自社がやろうとしていること、成功させようとしているビジョンを共有することです。
また、ロイヤルティを上手く働かせるためには、顧客のより深い情報を得られるゼロパーティデータの存在もより重要になってきます。ゼロパーティデータを収集、活用して顧客理解を深められれば、より顧客満足の高い体験が提供できるようになり、LTVを向上させるでしょう」(David氏)
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