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アメリカの「今」から、日本市場の「未来」に備える

CTV・OTT広告市場が拡大する米国。その現状から「日本で必要になる視点&考え方」を読み解く

アメリカで起きているCTV広告市場の拡大

 昨年からのコロナ禍で、アメリカでも家にいる時間が長くなっているため、CTVへの接触時間も伸びています。The Trade Deskの調査レポート「The Future of TV Report January 2021」によると、従来の平均テレビ視聴率28%に対して、ストリーミング動画の視聴率は68%にものぼっています。Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオといった代表的なOTTサービスはアメリカでスタートしており、こうしたサービスがかなり普及しています。アメリカでは1世帯あたり平均2~3社の動画配信サービスに加入しているというデータもあるほどです(MEDIA INNOVATION LAB「米国動画配信サービスの最新動向」より)。

 さらに、OTTサービスを提供するプラットフォームが独自のコンテンツを製作するようになっています。ディズニーやNBCUniversalのPeacockといった、すでにコンテンツ資産のある企業も独自のストリーミングサービスを立ち上げるなど、CTV市場はますます活性化しています。日本でも、Netflix製作の『クイーンズ・ギャンビット』や『全裸監督』、Amazonプライムビデオ製作の『バチェラー・ジャパン』など、OTT独自のコンテンツは広く話題になっています。

 これに伴い、アメリカではCTVにおける広告市場が拡大しています。eMarketer社によると、米国のCTVにおける広告費は、2020年に前年比41%増の90億ドルを超えました。この数字は、2021年には134億1,000万ドルに達し、2025年末には2倍以上に成長すると予測されています。

 この広告市場拡大の流れは、おそらく日本でも起きるでしょう。アメリカでデジタル広告市場がテレビを初めて上回ったのが2017年で、日本でも2年後に同じことが起きました。CTVが地上波を追い越す時が来ることも大いにあり得ます。

 ちなみに、現在アメリカでは18~34歳の60%がケーブルテレビを利用していません。モバイル中心のZ世代が大人になるにつれ、この比率がますます高まっていくことは間違いありません。日本のZ世代もすでに地上波よりデジタルのほうがリーチできるとされています。10年前には考えられなかったことですが、日本のOTT、CTV市場でも同様のトレンドが起きるのではないでしょうか。

OTT・CTV広告へ予算がシフトしている理由

 前述の通り、アメリカではOTTやCTVを中心にマーケティングを展開する広告主も増えています。The Trade Deskの最近の調査によると、広告主の92%がCTVはテレビ広告と同等かそれ以上の効果があると考えているのに対し、効果がないと答えたのはわずか8%でした。広告予算においてもこの考え方が支持されており、45%の広告関係者が昨年よりもCTVの予算を増やしています。さらに、CTVに予算をシフトした広告主のうち、91%がそのシフトを維持するか、さらにCTVへの投資を増やすかのいずれかであると答えています。

 CTVでの広告配信のメリットのひとつは、他のデジタル広告と同様にフリークエンシーのコントロールをかけられる点です。これまでのテレビ広告の場合、世帯や個人に対するフリークエンシーコントロールはかけられません。地上波では、同じ広告費をかけているにも関わらず、1人の視聴者がA社のCMは5回視聴され、B社のCMは2回しか視聴されないといったことが起きてしまいます。

 対して、OTTやCTVでのデジタル広告の場合は、世帯やユニークユーザーベースでCMの露出回数をコントロールすることができます。到達人数におけるCPMは地上波のほうがまだまだ安価で、デジタルのほうが高いですが、実はユニークユーザーベースで見てみると、フリークエンシーのコントロールをかけられる分、広告の無駄打ちが少なくなります。同じ人に同じCMがたくさん表示されることが減るため、CTVへの出稿のほうが費用対効果が高くなる可能性が高いのです。

 たとえば、CTVを活用したキャンペーンを展開している自動車メーカーのフォードでは、独自のカスタムオーディエンスを構築して、新車を探している人のみに絞りこんでCTVで広告を展開しています(参考「Ford shifts to Connected TV」)。地上波テレビではリーチできていないオーディエンスにリーチできるだけでなく、潜在顧客に向けて表示される広告のフリークエンシーをコントロールすることで、無駄なインプレッションを減らすことができるのはもちろんのこと、視聴者の購買意欲の向上にもつなげています。

 さらに、プログラマティック広告を活用し、CTVで接触したユーザーに対して、別のウェブサイトを閲覧している時に再度広告を配信することも可能です。たとえば、購買データをベースにCTVでリーチして、バナーで10回リーチ、違う動画を5回見せた時、どのくらいのオーディエンスがオフラインあるいはオンラインでそのブランドの製品・サービスの購入に至るのか、といったことの計測も可能です。すでにオンラインとオフラインの境目がなくなってきているのです。

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CTVを中心にプログラマティック広告を活用したアメリカの事例

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この記事の著者

馬嶋慶(マジマ ケイ)

The Trade Desk 日本担当ゼネラルマネージャー

Facebook日本支社の立ち上げメンバー、Taboolaカントリーマネージャーなど、プレミアムメディアや新興デジタルメディアでの豊富な経験を有し、直近では米国発のテクノロジースタートアップであるUiPathdeマーケティング部門を牽引。20年...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/08/30 08:30 https://markezine.jp/article/detail/37049

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