パーパスをアクションに落とし込むための「新4Pモデル」
室:まさに畠山さんがおっしゃった行動との関連付けについてですが、パーパスをどのようにアクションに落としていくかがもう一つの課題です。そこで、グローバルで評価されているキャンペーンやウィズコロナの生活者動向などを分析して開発した「新しい4Pモデル」をご紹介します
まず存在意義(=Purpose)を定め、そのパーパスに共感し広めていく仲間(=People)を見つけ、その人たちが話したくなる共有したくなる物語/ストーリー(=Plot)を描く。そして、そのプロットを体験する仕組み(=Program)を作っていく、これを進めることで、ブランドパーパスがアクションに落ちていくと考えています。
つまり、企業の社会的存在意義のもと、どんなステークホルダーを、どのようなナラティブで共感させ、どんなアクションで巻き込むのかを企画・実行し、アクションにしていくのです。
この点を踏まえライオンさん、LIFULLさんではどのようなアクションをされているのでしょうか?
4つの事例から見るライオンのアクション
阿曾:弊社の事例を4つ紹介させていただきます。1つ目はインクルーシブ・オーラルケアという取り組みの「おくちからだプロジェクト」というものです。
ライオンは歯・口の健康を支えるオーラルケアについて啓発活動を長年続けています。弊社調べになりますが、1969年と2016年でむし歯比率と歯磨き市場の規模の推移、そして歯みがき2回以上という生活習慣を持つ人の比率を調査した結果、2回以上歯みがきをする比率が増え、むし歯比率が減少し、市場規模は大きく拡大していることがわかりました。
生活者・歯科医院・行政などと連携しながら共創してきたことが功を奏し、生活者の行動変容と社会価値の創出につながったと考えています。そこで、オーラルケアを通じた活動の考えをさらに拡張し、社会課題や環境課題にも向き合い、誰一人も取り残さない「インクルーシブ・オーラルケア」の活動を推進することにしました。
昨年末に実施したNPO法人フローレンス、NPO法人むすびえさんへの寄付金とキレイキレイ薬用ハンドジェルの寄付を実施し、2社と調印式を行いました。経済困窮家庭にある子どもたちの多くは、むし歯比率が非常に高く、自己肯定感が著しく低いという傾向にあるので、「おくちからだプロジェクト」として、弊社独自で開発した「歯みがき」や「歯と口の健康」をテーマにした体験プログラムを提供しています。こうしてさまざまな体験を通じて、子どもの自己肯定感を創出していこうという取り組みです。
2つ目が、生産農家に対して「サステナブルミント」という認証農家を増やしていく活動もしています。弊社の歯磨きはSustainable Agriculture Initiativeが認証するSAI認証の和種ハッカも使用しているのですが、その多くはインドで生産されています。ただ、現地の農家では持続可能な労働条件や生産条件を整えることが難しい課題があります。そこで香料会社を通じてSAI認証農家を増やしていく活動をしており、2022年までにその数を倍にすることで、課題解決を目指す取り組みを行っています。
3つ目が子どもの学習体験で、清潔・衛生習慣づくりを支援するアクションです。2017年から毎年幼稚園を対象に、キレイキレイを使った「ハンドソープの手作りマイボトル」という取り組みを行っています。これにより、進んで手を洗うという態度変容が起こり、ハンドソープのマイボトルを作ることで、子どもの自発的な手洗い・清潔衛生習慣が身に付くことを支援しています。
清潔衛生習慣に関しては、コロナ以前の2019年にはソニーエクスプローラサイエンスと、子どもの創造性を育むプログラミング教育と清潔衛生習慣を結びつけて、習慣づくりを学ぶ体験を実施しました。コロナ禍においても、衛生習慣教室の出張授業や、子どもたちに対して「自分と大切な人の健康を守る正しい手洗い」の理解を促進する手洗いの歌などで、習慣づくりに向けた取り組みを実施しています。
最後に紹介するのが、弊社社員に向けた「新たな習慣創造にチャレンジできる」新価値創造プログラム「NOIL」です。このプログラムでは「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパスを捉えたサービスが創出されています。
たとえば、料理が苦手な社員の原体験から生まれた「ご近所シェフトモ」は、近所の加盟店に夕飯のおかずをオーダーし、家族がバランスの良い食事を摂れること、家族とのコミュニケーションに割く時間や地域とのコミュニケーションが起こることで、新しい習慣が生み出されるサービスです。その他にも、休日に予定がない人に対して、休日の楽しい過ごし方の体験を提案する「休日ハック!」などのサービスがあり、新たな習慣づくりを創出する活動につなげています。