エボークトセットをマーケの現場で活かすには?
ここまでは産学共同の調査結果を踏まえた考察だったが、これを実際にマーケティングの現場で活かすにはどのような手段があるのだろうか。
松田氏は、「一言で言うと、“想起されるポイントを作る”という点に尽きます。なぜなら、その時の状況やシーンによって想起されるブランドは異なるからです。想起ポイントを探って、自ら作り出し、第一想起ブランドとなることでマーケティングの成果は大きく変わってきます」と説明する。
そもそも、商品を購入する時、「なぜ」特定のブランドが想起されるのか。歯磨き粉を例にとれば、もちろん「歯を磨きたい」というニーズが前提にあるが、「なぜ」そのブランドなのかと言えば、特定の目的を想定して選んでいることが多い。たとえば「虫歯予防」「歯周病予防」「知覚過敏」「口臭予防」「ホワイトニング」など様々だ。これら一つひとつがブランド想起のきっかけであり、これをカテゴリーエントリーポイント(Category Entry Point:以下、CEP)と呼ぶ。なお、このCEP自体が1つのエボークトセットとなる。
圧倒的に強いブランドは、エボークトセットに入ってくる主要なCEPで想起されるブランドであり、複数のCEPにまたがって想起されるケースが多い。そして一つひとつのブランドを見ていくと、たとえば「クリニカ」は「虫歯予防」、「GUM」なら「歯周病予防」というように、強みとなるCEPを持っていることが多い。
「実際にマインドシェアが高いブランドほど、CEPで第一想起されています。結果的に購入時にブランドを思い浮かべてもらう場面が多くなると、売り上げにつながるというプロセスができてくるのです。このCEPが特定カテゴリにおけるブランドのマインドシェアを分析する際の説明変数になります」(松田氏)
実際にネオマーケティングでは、エボークトセット調査から複数のCEPのうち最もメリットの大きいキーワードを抽出した後、そのCEPを訴求するための施策を実施してPDCAを回していくソリューションを提供している。松田氏も、「想起ワードで第一想起を取れるように、これまでの知見をもとに企業のマーケティングを支援します」と意欲を見せる。
選ばれるブランドになるために必要なPDCAを回していく
講演では、視聴者からの質問も紹介された。
「自社に最適なCEPを見つけるヒントは?」という質問については、「自社の商品の印象は、あくまでも生活者のほうに答えがあります。生活者とコミュニケーションを取りながら、生活者がどのように自社商品を評価しているのか、お互いにとってベストなポイントを見つけることが大切です」と回答。
さらに「調査の際にはCEP項目の設定がポイントになるが、どのように設定すればいいか?」という問いに対しては「人が感じる価値は“機能的な価値”“情緒的な価値”“本質的な価値”の3つです。これらのうち、私たちはブランド想起のきっかけやタイミングをつかみやすい“機能的価値”から入ることにしています」と答えた。
最後に、「ブランドイメージとCEPは似ているようで、必ずしも合致しないことがあります。想定通りのブランドイメージが取れているからといって、それがそのまま想起ポイントになるかと言うと、必ずしもそうではありません。この点も含めて、第一想起されるブランドになるために必要なPDCAを回していくことが大切です」と述べ、講演を結んだ。