Z世代の選ぶ場所に、企業側が行って寄り添う
ABEMAの事例を受けて、「Z世代へのコミュニケーションで気を付けていることは?」という木綿氏の問いに、山盛氏は「彼らが選ぶ場所に自分たちのほうから行って寄り添う、あるいは隣にいるようにする、というスタンスを維持するようにしています」と答える。
例として、山盛氏は「毛について、話そう。#Body Hair Positive」のキャンペーンを紹介した。完全な美ではなく、「リアルさ」「不完全な部分」を表現することで、親近感や共感を醸成したという。
「“ムダ毛”という言葉があるように、毛は社会的観念からマイナスイメージが強い傾向がありますが、このキャンペーンでは、自分のコンプレックスなども含め“不完全であっても自分らしくあることが、実は美しいのだ”というメッセージを打ち出しています」(山盛氏)

「“毛について、話そう。”というコピーはインパクトがありますね」と言う木綿氏に、山盛氏は「ストレートですよね」とうなずき、「一瞬で情報を処理して、興味があるかどうかを判断するのもZ世代の特徴だと思っています」と話す。
短尺の動画に日々触れているため、パッと理解できるポジティブなメッセージが重要。一方で、興味を持つとYouTubeや各SNSなどで自発的に情報を取りに行く傾向も踏まえ、キャンペーンサイトには出演者のロングインタビューなど深い情報を用意した点が肝である。
トレンドにキャッチアップするためのポイント
最後の話題は、「世の中のトレンドの中心にいるZ世代のインサイトに応えていくには?」というもの。各社意識していることが紹介された。
「1つは共創ですね。共に創ることは、推し・愛着・ストーリーというすべての文脈において非常に重要です。完成されたものを押し付けるのでなく、彼ら彼女らと一緒にものを作っていく姿勢を大事にしています」と若村氏。
一方で、課題もある。これまで特に高校生を中心とする10代の間でトレンドになる着火剤は、学校の休み時間の何気ない会話にあった。しかし、これがコロナ禍により少なくなっている今、彼らの新しい着火剤はどこにあるのか、捉えようと注力しているそうだ。実際に会って会話をする、Z世代インフルエンサーのSNSを多数フォローして日常的に生態系を観察する、Z世代で流行っているサービスはとにかく1度試してみるなど、あの手この手で日々キャッチアップしている。
続けて山盛氏は、「実際に商品を使用する中で生まれた会話や悩みを丁寧に拾っていくことが、トレンドにキャッチアップするためのポイントではないかと思っている」と話す。その上で、誰に対して、どのようなコンテンツでコミュニケーションをするのかを消費者のインサイトをベースに考え、プロモーションがブレないように心がけているという。
業種業態が異なる3社だが、ディスカッションから見えてきたZ世代のインサイトは共通する要素も多くあった。また、インサイトを捉えるための日頃の地道な努力、また捉えたインサイトを的確に企画に落とし込む際の緻密な設計などは、多くのマーケターの参考になるのではないだろうか。