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コロナ禍で急変した店舗とECの役割。「MEDULLA」と「ジールス」に学ぶ購買体験の在り方

 デジタル上での購買体験を重視する取り組みは今に始まったことではないが、コロナ禍を契機に、より重要性が高まったのは間違いない。また、大きく変わった生活者の購買行動を受け、デジタル接客は企業にとって喫緊の課題となった。本記事では、デジタル上での接客を通して、より良い購買体験の創造に取り組んできたSpartyの上原氏とZealsの遠藤氏に、ECと実店舗の役割やチャットコマースの有効性などについて伺った。

「デジタル接客」に深く取り組んできた2社が対談

MarkeZine編集部(以下、MZ):今日はD2Cブランドでありながら実店舗も展開されている「MEDULLA(メデュラ)」でマーケティングをご担当されている上原さんと、チャットコマースを通じて「おもてなし革命」に挑まれているZealsの遠藤さんに、「ECと実店舗の役割の変化&これからの購買体験の在り方」をテーマに話を伺っていきます。まずは自己紹介をお願いできますか?

(左)株式会社Sparty MEDULLA Unit Director 上原涼子氏(右株式会社Zeals 取締役COO 遠藤竜太氏
(左)株式会社Sparty 執行役員/Head of Beauty brands 上原涼子氏
(右)株式会社Zeals 取締役COO 遠藤竜太氏

上原:弊社は「パーソナライズ×D2C」を軸として主に美容領域で事業を展開しています。美容領域の場合、商品を選ぶ際に「どれが正解かわからない」「市場に商品があふれていて何が自分に合うのかわからない」などの課題を抱えたユーザーが多い傾向にあります。Spartyでは、こうした「選べない」ニーズに応えるため、一人ひとりの悩みや個性に寄り添うプロダクトを開発し、提供しています。現在はヘアケアブランドのMEDULLAに加え、スキンケアの「HOTARU PERSONALIZED(ホタル パーソナライズド)」、ボディメイクの「Waitless(ウェイトレス)」などを提供しており、私は3ブランドを横断したマーケティングを担当しています。

遠藤:私はもともと大学院でヒューマンインターフェース論(人間・社会と調和する技術システムの構築を研究するもの)を専攻し、コミュニケーションにおける人とテクノロジーの関わり方について勉強してきました。新卒でマーケティングテクノロジーの会社に入った後、2017年にZealsにジョインし、今に至ります。Zealsは、チャットボットを用いてデジタル上での「接客」を実現するチャットコマース「ジールス」を提供しています。「おもてなし革命」をビジョンに掲げ、日本だけでなくグローバルを視野に入れ、チャットコマースを普及させていくことを目指して事業を展開しています。

 また、並行してLINE Frontlinerとしても活動しています。LINEが持つ「お客様と消費者の距離を近くする」というビジョンと、我々の「接客DX」というコンセプトには、非常に共通する部分を感じており、共により良い購買体験を創造していければと考えています。

LINE Frontlinerとは

LINEへの高い知識レベルと豊富な経験を備えたLINEの認定講師。「LINE Frontliner」という名前には、LINEと共に第一線「Frontline」でマーケットを作っていく方々という意味が込められている。

EC化率8%の日本 ECに欠けているものは?

MZ:MEDULLAのブランドについて、ご紹介いただけますか?

上原:先ほどお伝えした「選べない」というユーザーの課題に応えるため、「スマホの中の美容室」というコンセプトで始めたのが、パーソナライズヘアケアブランドのMEDULLAです。オンラインで髪質診断を行った後、約5万通りの組み合わせからお客様の髪質に合ったヘアケアアイテムをご提案しています。基本的にはオンライン上でサブスクリプションモデルとして展開していますが、東京と大阪で直営店舗も運営しています。

遠藤:上原さんがMEDULLAのコンセプトを「スマホの中の美容室」とおっしゃっていましたが、僕らが見ている世界観もそれに近いものがあります。チャットコマースとは、店舗での接客をデジタル上で再現することです。たとえば、実際の美容室では「お客様はこういう髪質なので、こういうシャンプーを使った方がいいですよ」などの会話が交わされています。その接客体験を、Spartyさんはプロダクトを作り込むことによって実現されている。

 一方、我々はチャットコマースを通して「デジタル上で販売されている多様な商品の中から、自分にぴったりなものを選ぶ」という購買体験の創造を目指しています。現在、日本のEC化比率は約8%で、ほとんどの購買がオフラインで行われています。その理由の1つは、オフラインにあるような接客体験が、デジタルで再現できていないことにあると考えています。これが実現できれば、オンラインでももっと手軽に自分に合うものを選択できる人が増えていくはずです。

回答率は9割!チャットコマースで重要なポイント

MZ:MEDULLAでは、販売戦略としてチャットコマース「ジールス」を導入されています。どういった背景で導入されたのでしょうか?

上原:購入前の検討中のユーザーとのコミュニケーションを補強する狙いで、「ジールス」を活用しています。LINE公式アカウントと「ジールス」を組み合わせることで、詳細な質問が設定できたり、ECやパーソナライズに対するユーザーの不安を払拭できる特長があると感じています。

MZ:チャットコマース「ジールス」を導入するメリットは、どのような点にあるのでしょうか。

遠藤:「ジールス」があったからこそ、購入に至るユーザーがいるという点です。チャットコマースでは、最初に商品をオファーすることはなく、質問を投げかけてコミュニケーションを深めていきます。Spartyさんであれば、「ドライヤーをして髪を乾かしてから寝ていますか?」「トリートメントや特別なケアをしていますか?」など、回答が容易かつ具体的な質問が設定されています。その後、ユーザーの不安や悩みを払しょくしてから、その人に適した商品をカスタマイズできる仕組みになっています。商品の購買時に接客を必要としている人に対してコミュニケーションを取り、購入に至る流れを設計することが、「ジールス」の介在価値であると考えています。

MZ:かなり具体的な質問をされていますが、回答率はどれくらいなのでしょうか?

遠藤:Spartyさんの場合、直近2ヵ月で9割(※)のユーザーがすべての質問に回答してくれています。その回答を参考に、LINE公式アカウントのメッセージ配信で追いかける設計です。LINE公式アカウントでは、ユーザーの検討期間中、1日後、1週間後など適切なタイミングでその人に合わせたコミュニケーションを取ることができます。ここが、LINEの大きな利点です。特にCookie規制でリターゲティングが難しくなる中、マーケティングの観点からもLINEが果たす役割は大きいと思います。

MZ:回答率が非常に高いですが、何かコツがあるのでしょうか?

遠藤:チャットコマースの場合は、最初の質問が最も重要です。そこを乗り越えられれば、ユーザーはスムーズに回答してくれます。「アクションボタンが押されやすいウェルカムメッセージ」「最適な質問数」など、弊社が長年蓄積しているノウハウがあるので、これを活かしてファーストステップを踏み、そこからPDCAを回していきます。

(※)ジールス調べ。初期会話の回答率(2021年8月27日~2021年11月28日)
 

店舗=売る場所ではない。購買体験の設計で考えるべきこと

MZ:続いて、実店舗のお話を伺ってきます。MEDULLAはオンライン発でありながら実店舗も運営されていますが、目的は何だったのでしょうか?

上原:あくまでオンラインでの販売がメインで、これを補完する場所として運営しています。MEDULLAの特徴のひとつに「香水のような香り」があるので、これを体験できる場として。また、専門スタッフが無料で髪質診断を行うことで、自分で頭皮や髪の状態を見極めて診断に回答するのは難しいというユーザーのニーズに応える場として、売る場所ではなく体験の場所と定義しています。

 私たちの商品はオンラインかつサブスクリプションモデルでの販売なので、そこに不安を感じる方も一定数存在します。そうしたユーザーにとって、スタッフから直接、説明や無料診断を受けられる実店舗は安心して商品を購入できる場にもなっています。

MEDULLA直営店舗。マイクロスコープを使った本格髪質診断とヘアケアアドバイスを無料提供している
MEDULLA 有楽町マルイ店

MZ:コロナ禍を経験し、デジタルで補えるものと補えないものが消費者側でも企業側でも浮彫になった印象があります。「デジタルで補えないもの」について、それぞれどのようにお考えでしょうか。

上原:「五感」の部分がその1つかなと思います。直営店舗を作った意味もそこにありますね。表参道には、トリートメントスパ「SALON DE MEDULLA」を構えており、デイリーケアではカバーしきれないスペシャルケアや、プロの手によるヘッドスパなどの「癒しの体験」を提供するためにリアルな場を活用しています。

遠藤:リアルでしか得られない価値は大いにあると考えています。たとえば、話にあがった匂いなどについては、今のテクノロジーではデジタル上で再現することができないため、リアルの場所(店舗)に価値が生まれます。

 ここで我々が考えるべきは、「デジタルかリアルか」という二元論ではなく、「どんな体験がお客様にとってよりハッピーなのか」ということです。もはや購買体験は、店舗もECも融合された世界線にあります。ECと店舗を区分するのではなく、一連の顧客体験のストーリーを最適化する考え方が、今後さらに強まると思っています。そして、現状ほとんどのD2Cブランドがデジタル上でのみ展開されている中、オンラインとオフラインの融合を実現している点で、Spartyさんは先進的な存在であるという印象があります。

コロナ禍を契機にデジタル接客は喫緊の課題に

MZ:コロナ禍をきっかけに、チャットコマース「ジールス」へのニーズが急拡大したのではと思いますが、いかがでしょうか?

遠藤:そうですね。興味を持っていただける企業様は非常に増えました。これまでオフラインで提供していた体験が、コロナ禍によって一度、世の中から消失しました。これにより、オフラインでの購買体験をいかにオンライン上で再現するか、各社一斉に考えるようになりました。もともと、デジタル上で店舗の接客体験を再現しようとする取り組みは、我々を含め、コロナ以前から存在していましたが、コロナを契機に2~3年早送りになった。言い換えれば、「未来はこうなるだろう」と我々が考えていた世界が急速に近づいた感覚です。

 モノを買うために、時間と場所の制約がなくなったというデジタルの利点は、顧客体験の向上に寄与しています。一度便利になったこの購買体験が後戻りすることはなく、消費者の当然の選択肢として加わったという捉え方をしています。

MZ:チャットコマースはオフラインでの購買をベースとしたマーケティングやセールスの「プラスアルファ」という位置づけが多かった印象ですが、オンライン購買に対する本気度も変わってきていますね。

遠藤:はい。一部分の業務改善や効率化でチャットボットを使っていた企業が大半を占めていましたが、チャットコマースでの接客体験を中心に据え、店舗での接客体験を代替していこうという意気込みの企業が増え、潮目が大きく変わったなと感じます。

日本の接客の力をテクノロジーに授けグローバルへ

MZ:最後に今後の展望をお聞かせください。

上原:オンラインを中心に販売するという軸は基本的には変わりませんが、オンライン・オフラインを問わずブランドを展開し、ユーザーニーズに応えていくことが大切であると考え、今後も購買体験を設計していきます。

 また、MEDULLA以外の2ブランドはまだローンチしたばかりなので、まずはこれらのブランドをしっかり育ていくこと。さらに、商品やサービスのジャンルを広げていき、一人ひとりに最適な製品を提案するパーソナライズプラットフォームを創造したいと考えています。

遠藤:弊社は以前より「おもてなし革命」というビジョンを掲げてきましたが、もうひとつ、「チャットコマースを当たり前にする」というミッションもあります。今のeコマースがぶち当たっている壁をチャットコマースで打開し、「ECからCCへ」を実現したいです。日本のEC化率は海外と比べるとかなり低い。これは、日本のオフライン購買における接客が素晴らしいからでもあります。日本が持つ接客の力をテクノロジーに授けて、これをグローバルに輸出していきたいです。

 それを見据えると、我々の活動はまだまだスタート地点だなという感覚があります。より多くの企業様にチャットコマース「ジールス」を提供して、顧客体験をより良くする支援をしていきたいですね。そして、LINE Frontlinerとしても、LINEのポテンシャルを広く発信していきたいと思います。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/10 11:00 https://markezine.jp/article/detail/37539