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カスタマーサクセスで顧客体験をアップデート――openpageの目指す顧客コミュニケーションとは

 サブスクリプションビジネスの拡張に合わせて、カスタマーサクセスが重視されつつあることは、多くのビジネスパーソンが気づいているだろう。openpage代表取締役の藤島誓也氏は、マーケターからカスタマーサクセスに転向し、その魅力に取りつかれた一人だ。MarkeZine Day 2021 Autumnにて、米国の事例を踏まえてカスタマーサクセスの真髄を語った。

急成長IT企業の潮流がGAFAからMTSaaSへ

 これまでの急成長企業といえば、BtoCサービスが中心であった。事業が急成長すれば、自然と人材もそこに集まってくるため、ベンチャーキャピタルなどの投資先も、転職者が多く集まるのもGAFAに代表されるBtoC企業だった。

 だが、近年その潮流が変化している。クラウドでSaaSを展開するBtoBビジネスが勢いを増してきたのだ。「MTSaaS」と呼ばれるMicrosoft、Twilio、Shopify、Amazon Web Services、Adobe、Salesforceがその代表格だ。

 SaaSビジネスの拡張にともない、新規顧客獲得だけでなく既存顧客とのコミュニケーション、つまりカスタマーサクセスが非常に重要となっている。月額課金の積み重ねによる長期的なLTVが事業成長に重要な点になっているからだ。そしてこの流れは日本にも波及している。

 このような米国の動向を踏まえ、openpageの藤島氏はマーケターの担う領域が増えたと分析した。

 「新規獲得でマーケターが使ってきたような、カスタマージャーニーの作成、CRM設計、スコアリング、コンテンツ開発、MA運用などのスキルセットを、カスタマーサクセス側で活用するという流れが出てきました。マーケティングの仕事をしてきた方が商品・サービス購入後のファネルも担うケースが増えてきています」(藤島氏)

新規顧客の獲得だけでなくLTV底上げの重要度が増す

 従来のデジタルマーケティングでは、認知・興味・検討という購入前のファネルへのアプローチに重きを置かれ、購入後の利用・アップセルクロスセル・顧客紹介などはあまり重要視されてこなかった。だがSaaSビジネスでは、これらを一気通貫で担うケースが増えている。藤島氏は自身の体験を交えて話した。

株式会社openpage 代表取締役 藤島 誓也氏

 「前職でBtoBマーケティングとして、広告宣伝からリード獲得、商談につなげるセクションから、カスタマーサクセスのセクションに異動しました。いかに製品を利用してもらうか、アップセルやクロスセルを起こす取り組みをしました。SNSの普及も相まって、顧客満足、カスタマーサクセスは非常に重視されるようになり、専任担当者を置く企業が非常に増えてきています」(藤島氏)

 こうしたマーケターがカスタマーサクセスへとキャリアを移していくケースが少なくない中で、幹部層のキャリアも変わってきているという。

 その1つが、CRO(Chief Revenue Officer:最高収益責任者)の増加だ。マーケティングからインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスと横断して責任を負うポジションである。この流れについて藤島氏は「マーケティングだけのスキルセットが相対的に少し下がってきているのではないか」と推測した。

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顧客企業は「体験」や「レビュー」をより重視する傾向に

 米国のテクノロジー製品評価サイトTrustRadiusが、BtoB製品を購入する際、何を重視するかを調査したデータがある。結果、ベンダーのマーケティングやベンダーの顧客事例、セールス活動、ベンダーのブログやオウンドメディアといった従来のマーケティングのメイン施策が、調査では軒並み「重要性が低い」と回答されている。

TrustRadius  The State of B2B Technology Buying in 2020

 逆に重要性を高く評価されているものは、プロダクトのデモ利用やユーザーレビュー、ベンダーレップ、リファラルなどだ。これらはすべてカスタマーサクセスが担う活動になる。今後、こうした実際に体験してもらうことや、ユーザーの声を発信していくことが企業の事業拡大に必要であることがわかる。

MQL・SQLだけでなくPQL・CSQLも加味した戦略を

 カスタマーサクセス時代には、重要指標の変化も見逃せない。従来マーケティングで使われてきたのは、MQL(Marketing Qualified Lead)やSQL(Sales Qualified Lead)だったが、カスタマーサクセス時代には、さらにファネルを進んだ先にあるPQL(Product Qualified Lead)とCSQL(Customer Success Qualified Lead)が重視される。

 PQLは製品のオンボーディングを行ったリード、CSQLは製品で期待している効能や価値を実感できたリードのことをいう。藤島氏は、この変化について、市場ニーズと照らし合わせて次のように説明した。

 「MQLやSQLは、いってしまえば広告宣伝やセールスのコミュニケーションでも何とかなる領域です。広告やメール、イベントの改善で獲得できるものです。一方で、PQLやCSQLは1つひとつの製品・サービス体験に真摯に向き合い、作り込みをする必要があります」(藤島氏)

 カスタマーサクセス業務は製品・サービスの購入前後のコミュニケーションをすべて含めた「総合技」である。PQLやCSQLを集めるためには、会社全体で取り組んでいく必要がある。「そこがカスタマーサクセスの複雑でおもしろいポイントです」と藤島氏は話す。

 加えて、これまでマーケターとして仕事をしてきた人がカスタマーサクセスの仕事をすると、視野の広がりを感じるようになるという。

 「コミュニケーション設計をするだけではなく、製品を良くするためのプロダクトマネジメント、サービス・UX設計などが発生します。非常に経営に近い視点を持つことになるので、おもしろいポジションだと私は思います」(藤島氏)

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カスタマーサクセスは3つのステップで体験を醸成

 カスタマーサクセスでは「オンボーディング」「アダプション」「エクスパンション」というステップを円滑に進むよう支援することが重要なポイントだ。

 オンボーディングは製品の初回体験。初期設定、操作方法、操作手順を伝えるフェーズである。アダプションは、利用定着のフェーズ。エクスパンションは他部署での利用や、オプション・他製品の利用を促す契約拡大のフェーズとなる。

 この3つのフェーズのそれぞれでどのような体験設計が求められるのか、藤島氏はステップごとに解説した。

 まずオンボーディングでは、MAを活用して初回顧客向けのメールを配信する。その中には「初めましての挨拶」「困った際に見るべきWebサイトのURL」などを載せておく。これによって初期設定や操作方法に迷うことがない状況を作るイメージだ。

 次のアダプションでは、たとえば動画を使い他社の事例インタビューを流したり、定期的なメール配信によって活用促進の案内や最新トレンドを紹介したりする施策が考えられる。

 最後のエクスパンションフェーズでは、たとえばメール配信の際に他商材との組み合わせ事例の紹介を組み込んだり、オプションを活用している顧客の声を動画で配信したりするなどがある。

 カスタマーサクセスの業務は、ただ顧客に連絡や案内をするだけではない。オンボーディング・アダプション・エキスパンションの各ステップでコミュニケーションを取っていくと、ふとした問い合わせの中からVOC(お客様の声)を集めることができる。このフィードバックを継続的に開発部門に共有し、プロダクト改善につなげることが重要となる。

 これを丁寧に行うことで、オンボーディングからアダプション、エクスパンションへの転換率が高くなっていくのだ。カスタマーサクセスにはプロダクトマネジメントの要素も含まれてくることを心得ておくと良いだろう。

LTVを高めるコミュニケーションを実現

 藤島氏が代表を務めるopenpageでは、ここまでで紹介してきたカスタマーサクセスの業務、つまり既存顧客に対する体験設計やフィードバックができる機能を備えたプロダクトを開発し、国内有数の企業に提供している。製品のコンセプトは「GIVE &TAKE」。その意図について藤島氏はこう述べた。

  「カスタマーサクセスにおいては、お客様の情報を集めることに目がいくのですが、その前に情報のギブが非常に重要です。お客様に製品の操作方法を教える、事例を紹介する、データを提供するなど、あらゆる情報をコンテンツとして伝えていき、顧客の成功を支えます。そして、それを提供する見返りとして、製品に対する理解度や継続意向、改善要望などをデータとして収集する。これがテイクの部分です。カスタマーサクセスの体験設計と顧客情報収集を叶える機能開発を進めています」(藤島氏)

 具体的には、会員制CMS・サイト構築システムになっているという。カスタマーサクセスではCMSと製品との「会員データ連携」が重要だ。実際にどのページ、どの動画を見ているのか、ユーザー情報とコンテンツ視聴データなどを紐づけて見ることができる。

 こうした体験設計の結果レポートをデータと照らし合わせながらPDCAを回していくことで、法人顧客のLTVを高めるコミュニケーション設計が図れるという。

 MAツールやSFAとの連携も進めており、SaaS企業以外の製造業や小売業などにも導入が増えてきている。藤島氏は「トライアルをしていただければ、カスタマーサクセスを次のステップに進めるための体制整備にくわえ、米国の先進企業がどのような取り組みをしているのかも感じていただけると思います。ぜひお試しいただきたい」と結んだ。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/16 11:00 https://markezine.jp/article/detail/37564