デジタル・マーケティングとは
現代マーケティングの成功において不可欠である、デジタル・マーケティングについて、その最新研究をもとに紐解いていきます。
一言でいうと、デジタル・マーケティングは、デジタル技術を利用したマーケティングだといえます。そのため、デジタル・マーケティングは、デジタル技術の発展や普及にともない、拡大・変化してきました。そのはじまりは、1990年頃、インターネットの商業利用が可能となり、同時にワールドワイドウェブ(www)が飛躍的発展を遂げ、個人のパソコンがインターネットにつながったことで、それを利用したオンライン販売や検索サイトなどのネット・ビジネスが登場したことに起因します。こうした新しいデジタルのチャネルやプロモーションを利用するために、デジタル・マーケティングがはじまりました。
その後、1999年頃からのインターネットのブロードバンド(通信回線の高速・大容量)化によりネット・ビジネスが拡大し、同時にデジタル・マーケティングも広がりをみせてきました。さらに、2007年のiPhoneの発売を皮切りに、スマートフォンの普及がはじまり、多くの消費者や企業がいつでもどこでもインターネットでつながるデジタル社会となりました。
総務省「令和2年通信利用動向調査」によると、現在、インターネットの利用者は83.4%となり、その利用デバイスは、スマートフォンが81.8%、パソコンが60.4%、タブレット型端末が28.9%となっています。こうしたインターネット環境やデバイスの広がりだけでなく、IoTやモバイル技術、ウェラブル・コンピューティング、人工知能、深層学習、そして、コロナ禍において、非接触技術やオンライン会議のための映像圧縮などのデジタル技術が発展を続け、デジタル・マーケティングも変化を続けています。
このように、デジタル・マーケティングは、30年ほど前からはじまり、スマートフォンの普及や新たなデジタル技術により社会全体に広がり、もはやデジタル・マーケティングと関係のないマーケティングなどはないと言っても、過言ではない状況になってきました。
なお、こうしたデジタル・マーケティングの背景や実践例、基礎理論については、2019年度「日本マーケティング本大賞 大賞」を受賞させていただいた私と学習院大学の澁谷覚教授との編著による初学者向けのテキストである『1からのデジタル・マーケティング』を、よければご参考にしてください。
デジタル・マーケティング研究のフレームワーク
こうした多くの実践に呼応するように、多くのデジタル・マーケティングの研究がおこなわれてきました。こうした多くの研究が整理されたレビュー論文によると、デジタル・マーケティングの研究を理解するためのフレームワークは、デジタル技術をベースに、デジタル環境(デジタル社会)、市場調査、マーケティング活動、マーケティング成果、マーケティング戦略に関する要素に分類されています。とりわけ、伝統的マーケティング研究との大きな違いは、デジタル環境の要素です。伝統的マーケティングの主要領域である消費者行動に加えて、ソーシャルメディアとUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)、プラットフォームとツーサイド市場、検索エンジン、背景(社会環境)との相互作用の研究が対象となります。研究フレームワークには、要素間のインターフェース(図の矢印)も含まれます。
なお、前出の『1からのデジタル・マーケティング』においても、デジタル環境(社会)とマーケティング活動というフレームワークで、実践例や基礎理論が解説されています。
今回は、こうした研究フレームワークの異なる専門領域に焦点をあてた、デジタル・マーケティングに関する、5つの最新研究を紹介します。