人気番組を制作しながらビジネスサイドの業務も兼任
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずはお2人の簡単なご経歴と、現職での業務内容を教えていただけますか?
平山:私は長年制作局で、番組の企画・演出・プロデュースなどを行っていました。「有吉ぃぃeeeee!~そうだ!今からお前んチでゲームしない?~(以下、有吉ぃぃeeeee!)」や「出川哲朗の充電させてもらえませんか?(以下、充電)」「世界!ニッポン行きたい人応援団」などは、その頃に立ち上げた企画です。
平山:現在も引き続き番組制作に携わりながら、コンテンツ統括部で放送や配信を良くするためのフォローアップを行っています。
合田:私は入社以来、番組から派生したビジネスの開発やコンテンツのマネタイズなどに携わってきました。現在は配信戦略部で、番組のインターネット同時配信や「TVer」「Paravi」などとの連携に関わる社内の仕組み作りを担当しています。
合田:ビジネスサイドの業務だけでなく「珈琲いかがでしょう」や「ゆるキャン△2」などのドラマ制作も担当していました。
MZ:お2人とも番組制作と他の業務を兼任されているのですね。
平山:社内のセグメント分けはされていますが、個人が担当する業務の幅は広いかもしれません。人数が限られているので、必然的に部署横断の取り組みが多くなるのです。そのぶん横のつながりは強くて、メンバー同士の仲は良いですね。
テレビCM以外のアウトプットで企業の課題を解決したい
MZ:2021年10月にリリースされた「テレ東コンシェルジュ」とは、どのようなサービスなのでしょうか。
合田:簡単に言うと「法人向けのお問い合わせフォーム付きWebサイト」です。テレビ東京と何か面白いことをやりたい企業や自治体の方が、気軽にお問い合わせできるプラットフォームを目指してスタートしました。
平山:昔は新聞のラテ欄にテレビ局の電話番号が書いてあって、そこから問い合わせをいただけていました。今はそういう窓口がないので、テレビ局と一緒に何かをやりたい方がどこに問い合わせて良いかわからない。
以前、充電に熊本のスイカ農家の方から「コラボレーションしませんか?」という問い合わせをいただいたのですが、結局何もできなかったことが私の中でずっと引っかかっていて。テレ東コンシェルジュが、そういう声の受け皿になるかもしれないと思いました。
合田:アイデアの種は、平山とともに社内の数名で取り組んでいる「アフターコロナプロジェクト」の中で生まれました。コロナ禍でテレビCMを出稿してくださる広告主の元に足を運べない状況が続き、オンラインで完結できる新しいサービスを作りたいと考え発案したのです。
テレビ東京という社名を聞くと、どうしても映像制作が先行してしまうと思いますが、テレ東コンシェルジュでは商品開発やイベントの企画など、多様なアウトプットの可能性を探っていきたいです。
13文字の番組名と作り手の“必死感” テレ東流の企画ノウハウ
MZ:テレビ東京では、独自路線の番組コンテンツで視聴者の注目を集め続けています。企画/制作の具体的なノウハウと、テレ東コンシェルジュでの活用イメージをお聞かせください。
平山:受け手に刺さる言葉の選び方にはこだわっています。たとえば、番組名の文字数。「墾田永年私財法」や「特定秘密保護法案」など、13文字のフレーズは語呂が良くて日本人に響きやすいので、番組名は13文字を意識して決めています。こうしたノウハウは、商品・サービス名のネーミングなどに応用できるかもしれません。
平山:番組ごとにターゲット層は当然異なるので、視聴者と一番近いところで番組の魅力を訴求できるチャネル選択や表現方法にも心を砕いています。たとえば、有吉ぃぃeeeee!はYouTubeやTwitterを中心にカット版の映像や実況動画を配信するとか、充電はInstagramにオフショットをアップするとか。番組内のナレーション1つとっても、作り手と受け手の距離感に応じて「です/ます調」と「である調」で使い分けています。
またキャスティングだけで話題化を図るのではなく、演者とディレクターが一緒に楽しんだり汗を流したりすることで視聴者の共感や愛着を生むアプローチもテレ東流です。たとえば、充電では出川さんの隣でディレクターも充電切れのバイクを押していますし、ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズでは制作現場の裏側を載せたSNSが人気を呼びました。
合田:作り手が必死感や裏側を見せると、視聴者の方にもそこに参加しているような感覚を持ってもらえるのだと思います。こうしたコンテンツをヒットに導く秘訣も、マーケティングの課題解決に役立つと考えています。
技術協力だけで終わらなかった猿田彦珈琲とのコラボレーション
MZ:テレ東コンシェルジュでは、映像にとらわれないアウトプットを想定していると伺いました。具体的にどのようなお取り組みをイメージされているのでしょうか。
合田:以前、珈琲いかがでしょうで猿田彦珈琲さんに技術協力をしていただいたのですが、その時のお取り組みがテレ東コンシェルジュの理想像の1つと言えるかもしれません。猿田彦珈琲さんが、ドラマをモチーフにしたオリジナルブレンドのコーヒーを店頭で提供してくださったのです(※ドラマ放送時期に合わせた限定販売)。
ドラマの世界観を店頭で体験できるのは視聴者からすると嬉しいはずですし、猿田彦珈琲さんの集客にもつながればと思います。我々としても、猿田彦珈琲さんに技術協力をしていただくことで作品の質感をぐっと高めることができました。企業との協業はテレビCM以外のアウトプットでも実現可能なのだと気づかされましたね。
“俺たちのテレ東”が持つ身近さとマスメディアの矜持を武器に
MZ:お2人が考えるテレビ東京の強みを教えてください。また、その強みはテレ東コンシェルジュの取り組みにおいてどのような効果を発揮するとお考えですか。
合田:強みかどうかはわかりませんが、やはり親しみやすさや敷居の低さは弊社の大きな特徴ではないでしょうか。ネット上で「俺たちのテレ東」という表現が見られるのも「身近さの1つの表れかな」と捉えています。
合田:テレ東コンシェルジュは弊社がゼロから仕立て上げるというより、企業の経営資源と弊社のアイデアを掛け合わせて一緒に何かを作り上げるサービスです。仲間と雑談するように素朴な感覚で「テレ東の番組となら一緒に何かできるんじゃないか?」というワクワクを感じていただけたら本望です。
平山:テレ東はこれまで、マスメディアとして番組を制作してきました。最近はYouTubeやTikTokで短尺の動画が人気なのも承知していますが、1~2時間尺の番組を見続けてもらうためのコンテンツの作り方は、我々が持っている強みだと思っています。
たとえばテロップの入れ方1つとっても、あえて早めにアウト(消失)させると視聴者が「本当はもっと読みたかったのに」という喪失感から気になって見続けてしまう。そういう「伝える」だけではない「気になるをつなげる」ための工夫を重ね続けてきました。
あとは、メンバーが様々な業務を横断する組織体制もテレ東コンシェルジュではプラスに働くかもしれません。番組を制作する人間がグッズの開発やデザイン、売り方、広告チャネルの選択にまで関わっているので、日ごろからマーケティングの現場感覚を養えている点はテレ東の強みかもしれません。
クライアントと面白い体験を一緒に作り上げたい
MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。
合田:業界の垣根を取り払い、オープンに企業や自治体の方とお付き合いしていきたいです。オープンにと言いつつも、テレ東コンシェルジュの募集要項には審査の流れやタイアップNGの基準など、あえて細かい情報を載せています。なぜかと言うと、ただ番組で商品を紹介するだけのコラボレーションで終わりたくないという想いがあるからです。映像だけでなく、商品や体験などのアウトプットを一緒に作りたいと思ってくださるクライアントさんと出会いたいですね。
平山:今の消費者が求めているのは“体験”です。テレビの発信は一方通行になりがちなので、テレ東コンシェルジュで出会った企業の方々と番組コンテンツを絡めた面白い体験を作り上げることができれば、お互いがこれまで届かなかったところにリーチでき、Win-Winの関係を目指せると思っています。そういう取り組みを様々な業界の方々と、様々な方向に広げていきたいですね。
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