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定期誌「MarkeZine」

第72号(2021年12月号)
特集『マーケターの「これから」を話そう』

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特集:マーケターの「これから」を話そう

マーケターの仕事の本質は、顧客管理からエコシステムのデザインへ。コトラーが提唱するA2Aの関係性

 「マーケティングはどこへ向かっているのか?」これは近代マーケティングの父、フィリップ・コトラー教授らの新著『コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践』で示された問いだ。社会環境の変化に合わせ、マーケティングの在り方もまた変わっていくはずだが、一体どのような方向へ?日本のマーケターが注視すべき動きとは? 本書を監訳し日本の読者向けの解説文を執筆した鳥山正博教授に、ご見解をうかがった。

電子版(誌面)はこちらから閲覧できます。

※本記事は、2021年12月25日刊行の定期誌『MarkeZine』72号に掲載したものです。

短絡的な最適化がマーケティングの失敗を生んだ

立命館大学ビジネススクール(大学院経営管理研究科)
鳥山 正博(とりやま・まさひろ)氏

 国際基督教大学卒(1983年)、ノースウェスタン大学ケロッグ校MBA(1988年)、東京工業大学大学院修了、工学博士(2009年)。2011年まで(株)野村総合研究所にて経営コンサルティングに従事。2011年より現職。2019年度はノースウェスタン大学ケロッグ校にて客員研究員。とりわけマーケティングイノベーション、脳科学とマーケティング、世界のビジネス教育のイノベーション、イノベーション組織が最近の関心領域。マーケティングリサーチ・メディア・小売領域で特許出願多数。

――『コトラーのH2Hマーケティング 「人間中心マーケティング」の理論と実践』(KADOKAWA:以下、『コトラーのH2Hマーケティング』)において、コトラー先生は、マーケティングが「嘘、欺瞞、ごまかし、迷惑、操作的」といったネガティブなイメージを纏っていると問題提起し、こうした失敗を脱して、H2H(Human to Human)のコンセプトに移行しようと呼びかけていました。マーケティングの失敗とは具体的にどのようなものなのか、私たちはその失敗をいかに乗り越えていけるのか、教えていただけますか。

 マーケティングの失敗は、「短期的な利益のためなら手段を選ばない活動をせざるを得ない」というマーケターの組織的役割から起きている問題と言えます。古くは1960年代~1970年代の自動車会社の計画的陳腐化(車の性能には問題がないにもかかわらず、次々に市場に製品を投入するなどして、短期的な買い替えを煽るマーケティング手法)、最近ではネット上で何かを調べると、目にするネット広告がその商品で埋め尽くされ、購入した直後にも表示され続ける、といったネガティブな経験を作ってしまっています。

 なぜマーケティングの領域でこうした失敗が起きているかというと、限られた情報のみがフィードバックされることで、短絡的な最適化が進行していたからです。自動車会社の計画的陳腐化の例では、短期の売上台数や売上高、販促にかかったコストだけが可視化され、その指標だけを改善しようとしたことで、このような手法が編み出されました。顧客が長期的に得ている真の価値や顧客とブランドの関係、製品を生み出すためにかけている環境や従業員への負荷は、正しくフィードバックされていなかったのです。ネット広告の例も同様で、機械が判断軸としているのは「ある商品について検索した人のほうが、そうでない人よりも買う確率が高い」ということだけで、その商品を既に買ってしまったという情報はフィードバックされていないために、一番買う確率の低いはずの「購入した直後の人」にもたくさん広告を打ってしまうようなことが起きます。

 しかしデジタライゼーションによって、見えるもの、測定できるもの、操作できるものは変わっています。広告投資の判断指標が発展してきた過程を考えるとわかりやすいのですが、テレビCMの指標は世帯視聴率から始まっていますよね。この指標を最大化しようと、在宅時間が長い高齢者向けの番組が増えていきました。しかし彼らは最も活発に購買活動を行う層ではないため、最適化の方向性としては不十分でした。次に生まれたのが個人視聴率で、これにより、今度はF1層が好む番組が増えていきました。ネットの世界でも、PVを最大化しようと、いわゆる「釣り記事」が増えたり、CTRの最大化のためにまどろっこしい前置きが続く記事が出てきたりしましたが、CVRの測定が可能になったことで、ようやく本質に近づいています。短絡的な最適化に甘んじていた領域も、今後はより人間らしい改善ができるようになる。マーケティングはより人間的で、信用に基づいた行為に変わっていく。こうした考えのもと、コトラー先生はH2Hというコンセプトを提唱したのではないでしょうか。

 ですが今後何が測定できるようになるかということは、技術の変化だけでなく、人々の感覚によっても左右されます。考えられるシナリオとして、次の3つを提示したいと思います。

シナリオ1 測定の範囲と精度が向上し、ターゲティングが精緻化していく世界

 より多くの情報がフィードバックされるようになり、マーケティング活動の精度が向上する。たとえば、表情解析を用いて顧客が真剣に見るコンテンツを制作する。製品・サービスの購入に至るまでを追跡するだけでなく、リピート行動や購入後に関心がなくなる時点までを追いかけ、施策に反映させるようになるなど。

シナリオ2 個人情報保護が強化される世界

 シナリオ1とは逆に、個人情報の活用に制限が加わることで、最適化ができなくなる。テレビ全盛期と同じように万人に向けてブランド名を連呼するようなコミュニケーションに回帰する。不安はないが不便な世界。

シナリオ3 ルールがまともに進化していく世界

 問題が起きたときにはそれを解決するルールが導入される。たとえばスパム対策としてメール送信は一通につき0.01円課金される。ルール違反に対してはペナルティが課される。個人が受け取る情報を管理できるなど。理想的だが実現難易度は高い。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。2021年、放送大学大学院文化科学研究科修了。修士(学術)

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/24 06:30 https://markezine.jp/article/detail/37989

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