前回の記事では、TikTokがなぜ急成長しているのかを紐解きました。今回はTikTokがビジネスシーンでどのようなムーブメントを見せているのか、2つのキーワードとともに解説していきます。
2021年に発売された「日経トレンディ2021年12月号」内の「2021年ヒット商品ベスト30」特集で、「TikTok売れ」のワードが1位になりました。CARAFULの松村淳平氏がご自身のnote内で「TikTok売れ」について、わかりやすくまとめています。
TikTok上の動画1本によってある小説が8.5万部の重版決定になったり、あるお菓子に関する動画が5億再生に上り10万個が完売したり、ある不動産会社が開業1年で9店舗・月100件問い合わせ・60件契約を実現したりと、様々な事例が生まれています。TikTokは、単なる「バズ」に留まらず「購買」まで結びつけることのできる接点であることが、これらの事例からもわかります。
では、なぜ「TikTok売れ」が起こるのでしょうか。その理由はTikTokが「乾けない世代の購買プラットフォーム」であり「広告の民主化を主導するクリエイターの舞台」であるからだと私は考えています。順番に説明していきましょう。
「乾けない世代」の登場と「マーケティングドリブン」への変化
「乾けない世代」とは、IT批評家である尾原和啓氏が著書『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』(幻冬舎)で30代以下の世代を表現するために用いた言葉です。戦後、焼け野原で文字通り何もない環境に生まれた「乾いている」世代とは対照的に、必要な家電はすべて一家に一台あり、幼い頃からコンピュータや携帯電話に触れ、娯楽も充実している環境に育った30代以下の世代を、「何かに飢えたことがない世代(=乾けない世代)」として解説しました。
「乾けない世代」はZ世代も含まれ、彼らは基本的に充足しています。必要なものは安く簡単に手に入れることができますし、衣食住も生まれた時から事足りているケースが多いです。このような「乾けない世代」は「乾いている世代」に比べ、「〇〇が欲しい」と強く思ったり「〇〇を買おう」と能動的に探したりする頻度が少ない傾向にあります。
結果として、良いものを作れば自動的に売れていく「プロダクトドリブン」な時代から、需要喚起の巧拙が、売り上げに寄与する「マーケティングドリブン」な時代へと変わっていきました。
では、なぜTikTokがそんな「乾けない」世代の購買に寄与するプラットフォームとして機能しているのか、次のページから解説しています。