デジタルで検討体験を豊かに
――「toyota.jp」を運営するトヨタ・コニック・プロにお話を伺います。まず、世の中の「デジタルシフト」の流れをどのように捉え、CXに落とし込んでいるのでしょうか。
樋口:企業としては「必要だけどまだできていない」ところに目が向くようになってきたのだと感じています。
自動車の場合、7~8割のお客様が「販売店に行く段階ですでに欲しい車種が決まっている」と言われていました。しかし、最近ではおうちで購入する車を比較検証することや、販売店に行かずとも購入できる方法を用意することなどが重要となり、様々な検討構造を用意する必要が出てきました。
平田:お客様の行動も大きく変化しています。以前はお客様が検討する際の情報源は、テレビやWebサイトがメインでした。しかし今は、YouTubeの試乗レビューやSNSの口コミなどを参考にする人も多く、情報の発信元が多様化しています。
コロナ禍以前は「どのようにしてお客様にWebから店頭に足を運んでいただくか」に注力していましたが、現在は「Webでどこまで検討の解像度を上げられるか、購入の確度をどこまで高められるか」に注力しています。
樋口:自動車は元々検討期間の長い商材のため、今まで販売店で行われていた行動を、どのようにオンライン上で前倒しができるのか。お客様により確度の高い状態で店頭にいらしていただける形を作るため、日々試行錯誤しているところです。
カタログサイトからの脱却を目指して
――トヨタのCX・DXにはどういった課題や改善ポイントがあったのでしょうか。
樋口:カタログサイトからの脱却を目指しました。今までは、新車の良さを伝えるために、機能に関する情報が多く掲載されていました。しかし、お客様により検討しやすく寄り添えるようにどんな体験ができるのか、イメージしやすいコンテンツをちりばめるなどの改善をしていくことがまずひとつ大きな課題です。
あとは接客をした際、お電話やメールでは拾いきれないお客様の声を拾って、顧客体験の向上につなげることが必要だと考えています。
夏井:また、コロナ禍で密にならない「車」を移動手段として検討する人が増えています。実際弊社で独自の調査をした際に、「車は生活に必要な移動を、安全に行うことができる」と答えた人が8割となり、車の購入を検討していると答えた人はコロナ前に比べて増加していました。
夏井:しかし、販売店での試乗に行けない、相談になかなか行きづらいという声もありました。こうした中で「ぴったりクルマ診断」や「チャット」を活用したご案内、試乗動画の作成といった取り組みが加速していきました。