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博報堂プロダクツのプロフェッショナルたち(AD)

事業戦略から物流まで。博報堂プロダクツだから実現できるダイレクトマーケティング&EC事業最大化

 スマホによる消費行動の変化、コロナ禍の影響、D2Cビジネスの盛り上がりなど、EC・ダイレクトマーケティング領域はここ数年で急激に変化している。バリューチェーンが長く、多様な業務があるEC事業において、多くの変数を捉え、一つひとつの課題に向き合うのは簡単なことではない。その点、博報堂プロダクツでは、川上から川下までバリューチェーン全体で高い専門性を発揮する。同社のカスタマーリレーション事業本部でシニアECマーケティングディレクターを務める中井和宏氏に、EC市場の今と同社の強みを聞いた。

成長が加速するEC市場と事業者の現状

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。

中井:私は2001年に博報堂グループに入り、化粧品や食品、通信、保険など様々なクライアント様のダイレクトマーケティング領域の支援に従事してきました。この数年はECに特化し、海外でのEC展開も含め、クライアント様のEC事業の拡大を支援しています。

MZ:中井さんが所属されている博報堂プロダクツ カスタマーリレーション事業本部は、EC(D2C)領域を中心にクライアントの課題解決を支援されています。コロナ禍もあり、この2~3年でEC事業者を取り巻く環境は大きく変化しましたが、EC市場は現在どのような状況でしょうか?

中井:もともとEC市場は成長し続けてきましたが、コロナ禍により、その成長速度がさらに加速しました。2020年は物販系のBtoC市場において約12兆2,000億円にのぼる市場規模になっており、今後も成長加速の傾向は強まっていくと予測しています

株式会社博報堂プロダクツ カスタマーリレーション事業本部 ECソリューション部 シニアECマーケティングディレクター 中井和宏氏
株式会社博報堂プロダクツ カスタマーリレーション事業本部 ECソリューション部 
部長 シニアECマーケティングディレクター 中井和宏氏

 このような状況下で、クライアント様の動きにもいろいろな変化が見られました。リアル店舗の売り上げが伸び悩む中、今まで本腰を入れられていなかったEC事業に本格参入する企業が増えており、特にD2C関連のお問い合わせが非常に増えている状況です。

 ECは、バリューチェーンが非常に長い事業です。商品開発からプロモーション、販売、配送、その後の顧客とのリレーション管理までカバーしなければいけません。中でも、D2C事業においては、コスト効率の観点からマーケティングROIをチェックしつつ、ブランド育成の視点も欠かせません。重要なKPIとしてLTVを追いながら、ブランドへのエンゲージメントも高めていく。このバランスを取りながら、いかに顧客と良好な関係を築いていくかを考えている企業様が多いですね。

博報堂プロダクツが物流まで?!「川上から川下まで」一元的にサポート

MZ:バリューチェーン全体を見ることが必要とのことでしたが、一連の工程でスムーズに連携し、全体を見ることができる人材を配置するのは、なかなか難しいのではないかと思います。

中井:そうですね。マーケティング、システム、フルフィルメントなど各領域で支援会社が入っているケースも多々見かけます。ただ、EC事業全体をいかに拡大していくのかという視点に立つと、上流から下流まですべての工程を総合的に見ることが非常に重要です。その点我々カスタマーリレーション事業本部は、博報堂プロダクツのグループネットワークを活かし、一元的なサポート体制を敷いています。

MZ:一元的なサポート体制というのは、物流など裏側の支援も含まれているのでしょうか?

中井:はい。狭義の意味でのプロモーションやクリエイティブは、博報堂グループの強みですので、当然行います。そういった表側の部分に加え、物流、決済、カスタマーセンターなど、EC事業を展開する上で不可欠な裏側の部分もサポートしています。バリューチェーン全体を見て、フロントエンドとバックエンドをうまくリンクさせていくことを念頭に置きながら対応できるところが我々の一番の強みだと思っています。

MZ:博報堂プロダクツはフロント側の印象が強く、バックエンドを支援されているイメージはあまりありませんでした。

中井:たしかに、「そんなところまでやってるの?」と驚かれることが多いですね。具体的には、日本トータルテレマーケティングというコンタクトセンターのグループ会社との協働により、コンタクトセンターでの顧客対応や、在庫管理や配送などの物流業務にも対応しています。これらの領域はどちらかというと守りの領域ではありますが、EC事業運営においてとても重要な部分です。

博報堂グループの「ダイレクトマーケティング人材」が集結

MZ:EC事業の上流から下流までを一貫して支援するにあたり、2021年4月に博報堂ダイレクトとカスタマーリレーション事業本部が合併統合し、さらなる支援体制の強化を図られています。

中井:はい、ダイレクトマーケティング領域の支援のニーズは、今後ますます高まっていくと思われます。博報堂グループとしてダイレクトマーケティング領域への対応力を強化するために合併統合し、新生カスタマーリレーション事業本部としてリスタートした形です。これにより、博報堂グループ内のダイレクトマーケティング人材、約140名が集結する部隊が結成されました。

 これまでお話してきた通り、バリューチェーン全体を支援する体制はすでに整っていたのですが、その上流から中流におけるコンサルティングや広告プロモーション領域の支援体制がさらに強固なものとなり、博報堂グループ内の知見・ノウハウがここに集積されています。また、大きなプロジェクトの場合は博報堂と博報堂プロダクツで連携することもあります。

MZ:EC事業者にとって、ダイレクトマーケティングのプロフェッショナルが多数いるというのは心強いですね。プロジェクトごとに、各領域のプロフェッショナルが集まりチームを組むイメージでしょうか?

中井:そうですね。お問い合わせをいただく中で、実は一番多いのが「ECに力を入れたいけど、何をどうしたらいいかわからない」というご相談です。そうした場合は、バリューチェーン全体を見て、どこに課題があるかを分析するところから始めます。おおもとの事業戦略から見直しを図る場合もありますし、広告プロモーションやフルフィルメントなど特定の部分に問題があることもあります。EC事業に必要な全領域のプロフェッショナルがいることが我々の強みですので、プロジェクトごとに各領域からメンバーを集めて動いていきます。

多数のECソリューションから最適なものを抽出する「目利き力」

MZ:中井さんが所属されているECソリューション部には、どのようなプロフェッショナルがいるのでしょうか?

中井:EC領域では日々新しいソリューションが生まれ、進化しています。多数あるソリューションの中から自社の事業に合うものを見つけ、情報をアップデートし続けていくのは、非常に困難と言えるでしょう。

 そのような中、我々には、いわゆる「目利き力」があります。これは、日々様々な業種業界・規模のEC事業者さんをご支援する中で、我々自身もトライアンドエラーを重ねながら、知見を蓄積している部分です。

 たとえば、近年成長が著しいカートシステムとして「Shopify(ショッピファイ)」があります。Shopifyは、SaaS型のプラットフォームなので、比較的少ない時間とコストでECを立ち上げることが可能です。また必要に応じていろいろなアプリを組み合わせ、柔軟に機能を追加することができるなど拡張性も優れています。

 Shopifyでは現在8,000以上のアプリが提供されていますが、この使用するアプリの組み合わせが非常に重要なのです。まずは、必要な機能を実現するために、各機能を実装できるアプリを選出する。さらに、アプリ同士の相性の良し悪しを考え、実装していく。また、フロント側の作りにおいても、ブランドイメージの訴求や、サイト内でどのような行動をしていただきたいのかといったUI/UXの観点から、「テーマ」と呼ばれるフォーマットを選定する必要があります。実はこの過程には、相当な目利き力が要ります。

分析やクリエイティブの手法を用いてのUI/UX改善

MZ:なるほど。たしかにそれは事業者サイドでは最適化が難しそうです。

中井:たとえば、ヨーロッパを代表するテーブルウェアブランドである「ビレロイ&ボッホ」のECサイトをリニューアルした事例があります。もともとは別のカートシステムでECサイトを運営されていたのですが、UI/UXがブランドイメージにそぐわないということで、ご相談いただきました。商品の見せ方やキャンペーン情報を出すタイミングの調整、裏側のシステム内の情報整理などをShopifyをベースに構築した結果、売り上げがアップし、サイトの運用もとてもスムーズになったという声をいただいています。とはいえ、もちろんShopify以外の事例も多数手がけています。特定のソリューションに縛られずに、課題や目的に沿ったカートシステムの選定・実装ができる点に我々の付加価値があると思っています。

「ビレロイ&ボッホ」のECサイト
ビレロイ&ボッホ」のECサイト

MZ:UI/UXのデザインは、どういった方が担当されるのですか?

中井:具体的なサイトデザインの前に、現状のサイトのどこに課題があるかを分析チームが分析します。今までの知見をもとに制作した200項目以上のチェックリストに基づくヒューリスティック分析や、売り上げをどう伸ばすかといった視点でのGA分析を実施し、サイト上の課題を抽出し、改善の方向性を導き出します。

 その上で、サイトをデザインする工程に入るのですが、その作業は同じ事業本部の中にある「インタラクションデザイン部」と協働します。彼らはダイレクトマーケティングに特化したクリエイティブのプロフェッショナル集団で、ウェブ上でお客様を動かす=CVを取るには? という視点のクリエイションを得意としています。

今後の展望~ECの新しい可能性に向かって~

MZ:ECソリューション部の現在の目標を教えて下さい。

中井:我々ECソリューション部は、コアバリューの一つとして「クライアント様のサイト構築および運用のトータルプロデュース」を掲げていますので、その機能強化を図っていきます。

 たとえば、Shopifyを活用した大企業向けのソリューションとして、博報堂およびフラクタと開発した「D2C Gate」というパッケージをご用意しています。大企業ならではの課題として、企業の規模が大きくなればなるほど、社内の様々なシステムとの連携が複雑で難しく、なかなかプロジェクトが進まないというケースがこれまで度々ありました。そこで開発したのが「D2C Gate」です。「D2C Gate」は、Shopifyの基本機能をベースに大企業に求められる機能をパッケージ化したもので、複雑な要件定義なしでスムーズなD2Cサイトの立ち上げを実現するとともに、サイトへの集客やCRMも支援します。

MZ:近年、ナショナルクライアントがD2Cブランドを立ち上げるケースも増えていますし、ニーズがありそうですね。

中井:はい。ECは基幹システムなどの社内システムだけでなく、CRMシステムなど外部ツールとも有機的に連携させる必要がありますので、そういった業務設計力も我々の強みとしてもっとアピールしていきたいです。

 さらに今後の展望として、UI/UX改善によるLTV向上関連業務および越境ECを含めた海外EC業務の機能も強化していきたい領域です。OMO対応やソーシャル対応など、変革する世の中のトレンドや購買行動のインサイトを捉え、ストレスなく目的の商品やサービスを購入できたり、ショッピングそのものを楽しんでいただけるECサイトの在り方を研究し、クライアント様のEC事業拡大に貢献していきます。

 また、海外での販路拡大が大きなテーマになっているクライアント様も多いので、そのための支援にも取り組み中です。現在、アジア向けにモール型のECプラットフォーム「日本好物研究室」を構築し、日本のクライアント様の海外進出や販路拡大をサポートしています。まずは台湾からスタートしていますが、後に他のアジア各国への展開を構想しています。

アジア向けにモール型のECプラットフォーム「日本好物研究室」
アジア向けにモール型のECプラットフォーム「日本好物研究室」

 ECソリューション部は、博報堂グループのEC業務の受け皿を目指して創設した部隊です。EC事業の幅広くかつ多様な要件において、クライアント様のあらゆる課題を解決しニーズに応えられるよう、今まで以上に新たなチャレンジをしていきます。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/03/22 11:00 https://markezine.jp/article/detail/38223