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第99号(2024年3月号)
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メーカーがオンオフ横断で購買行動を可視化 電通デジタルが提言する、LINEの経済圏への進出と販促戦略

 近年、リテール業界においては会員アプリなどを介した1to1コミュニケーションが推進されつつある。一方、メーカー企業などでは、より多くのユーザーと直接的につながり、効果的なアプローチを行うための、独自の経済圏の形成が求められている。本稿では、LINEの各種サービスによって形成された経済圏を活用し、企業の課題解決に取り組む電通デジタルの各担当者とLINE担当者に、ユーザーと企業間における新たな接点の創出や、デジタル販促のアプローチについて、詳しい話を聞いた。

企業の課題毎に、高度な販促設計が求められる

MarkeZine編集部(以下、MZ):近年、多くの企業が会員ユーザーデータの活用によって、顧客一人ひとりとの有効なコミュニケーションを目指している状況です。電通デジタルではそのような企業を支援する立場として、どのような声を聞くことが多いでしょうか。

杉江:いわゆるリーチやブランディングの向上に加えて、売上や事業貢献に対して、よりダイレクトに影響する購買起点のマーケティングプランを重視する声が大きくなっていると感じています。

 具体的には、直接的に購買リフトさせたい、という要望が多い印象です。リーチからモチベーションを上げ、購買まで促す流れを設計するような販促プランが第一に求められています。

電通デジタル 統合デジタルマーケティング部門 デジタル販促部 LINEルーム 杉江弘樹氏
電通デジタル コマース部門 LINEルーム ソリューショングループ グループマネージャー 杉江弘樹氏

杉江:次に、事後購買リフトです。一度購入した方が再購入に至ったか、購入後ブランドファンになってくれたかという購買継続性に対して、オフライン・オンラインを融合させながら販促設計する形です。ともすれば需要の先食いに陥るリスクのある販促施策をフロー型からストック型に転換させていくニーズが非常に高まっている訳です。

 これについては課題もあって、たとえばメーカーの場合、直接の接点が流通業者になってしまうため、購買者のデータが溜まりづらい構造になっています。そのため、継続購買者の捕捉が難しい。流通業者とのデータ共有、協力体制を作るために、メーカーから流通業者、引いてはその先の購買者にどのようなベネフィットが提供できるか、そのあたりの関係性も考慮した設計が必要だと思います。

LINEが形成する「経済圏」「生活圏」の進化

MZ:電通デジタルでは、メーカーを中心とした企業に向け、LINEの関連サービス活用によって生まれた新たな経済圏への参入を支援していると伺いました。新たな経済圏とはどのようなものですか?

杉江:LINE、楽天、Amazonなどのプラットフォーマーが形成する、新たな経済圏が成り立つためのキーファクターは2つで、個人のIDと購買データです。

 たとえば、LINEの場合、LINE広告を見たユーザーがLINE Payで買い物をする、キャンペーンに参加してLINEポイントをゲットする、というような流れが生まれます。各ファネルにおけるサービスを同一プラットフォーム内で完結できるような仕組みを、新たな経済圏として認識しています

 またLINEに限った視点でいえば、既に経済圏を超えた「生活圏」が形成されている状況です。

 LINEは日本人の約70%、およそ8,900万人が使っているコミュニケーションアプリです(数値は取材当時のもの)。生活の中でLINEのサービスに触れる機会は多く、先ほど例に挙げたLINE PayやLINEポイント、最近ではLINEミニアプリなどを介して、あらゆる属性のユーザーから行動や購買に関わるデータを得られる強みがあります。

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杉江:コミュニケーションアプリならではの「つながりやすさ」も重要なポイントです。ユーザーは企業のLINE公式アカウントと簡単に友だちになることができますし、不要になったらブロックすればいい。つながったり離れたりがボタン1つでできる気軽さがあります。

 企業が顧客データを直接収集するために独自ネイティブアプリを提供する動きも活性化していますが、新規アプリをダウンロードする障壁も高い中で、その一歩手前で顧客とつながるプラットフォームとしても、LINEは注目されています。

 このように、ユーザーとプラットフォーム間の関係が築きやすい中で、各顧客行動ステージにおけるLINEサービスが複合的に展開されています。購買を中心とした消費行動全体が「見える化」され、企業はそれに対して適切なソリューションを提供できる、一大生活圏が完成しつつあるな、と感じています。

パーソナライズの強みとなるLINEのデータクリーンルーム

MZ:LINEが形成する経済圏・生活圏の中で、企業がオンライン/オフラインをまたいだ販促をするために活用できるサービスについて、それぞれ概要をお教えください。

田中:主なサービスを3つご紹介します。

LINE パートナーセールス事業部 田中洋佑氏
LINE パートナー営業本部 パートナーセールス第1 マネージャー 田中洋佑氏

田中:まずは「LINE広告」です。トークリスト、LINE VOOM、LINEマンガ、LINEショッピングなど、併せて12のサービス面上において、広告配信が可能です。

 2つ目が、「LINE公式アカウント」です。ユーザー様との1to1コミュニケーションに特化しており、企業が第二のオウンドメディアとして活用できるメニューです。拡張性に優れており、外部ツールと連携して、各種データに基づいたメッセージ配信ができる機能も設けております。

 3つ目が「LINEで応募」という販促用のメニューです。キャンペーン参加の促進や店頭POP削減、購買行動の連携など、店頭販促の課題解決が可能です。

 今ご紹介したような、複数のソリューションと連携するデータ基盤が、LINEの持つデータクリーンルームとなります。

 購買ログやアクセスログなどの広告主様が保有するデータと、外部のデータパートナー様が提供するサードパーティデータ、LINEグループが持つデータを、LINEの環境内で突合させ、活用できるデータ基盤です。

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田中:多様化するマーケットのニーズにお応えするために、電通グループ様をはじめとする外部パートナー様と連携し、データの利活用を通してユーザー一人ひとりに合った価値の提供を目指すスキームとなっております。

購買データも加味した広告配信でキャンペーン効果を最大化

MZ:具体的な取り組み事例について教えてください。

山本:2021年3月から6月まで、アサヒ飲料様の「カルピスウォーター」販促キャンペーンを実施しました。商品のQRコードを読み込むと、LINEポイントが10ポイントもらえるキャンペーンです。

電通デジタル 統合デジタルマーケティング部門 デジタル販促部 プロデュースグループ 山本真氏
電通デジタル コマース部門 プロデュース2部 第1グループ 山本真氏

山本:キャンペーンを告知する上で、どのような方に告知をすればよりキャンペーンに参加いただけるかを考えることは重要です。そのうえで、過去に同様のキャンペーンに参加された方々がどのような特徴を持つのかは大きなヒントになります。LINEのデータクリーンルームによって、過去の同ブランドのキャンペーンに参加された方たちがどういった年代、性別、興味関心であるかなどを統計的に把握した上で広告配信を行いました

 また、今回の実施の背景として、普段あまりカルピスを飲まない方々の、飲用頻度を高めていく狙いがありました。

 LINEのデータクリーンルームのユニークな点として、ポイントカードデータを参照することで、より購買データに根差した分析が可能である点が挙げられます。「年間で〇~〇回までカルピスを買っている人」といった定義付けにより、キャンペーン効果の最大化を目指しました。

MZ:実際にどのような成果が得られたのでしょうか。

山本:店頭販促の場合、オンラインの施策とオフラインの成果が分断されてしまいがちですが、データクリーンルームを活用し、LINEの広告接触データと、キャンペーンのポイント取得者IDを突合することによって、広告接触が如何にキャンペーンへつながったかを把握できます。

 今回は、過去のキャンペーン参加者の属性に根差した広告配信と、購買データを元にした広告配信の2パターンを実施しました。結果として、購買データを使った広告配信の方が、おおよそ2倍程度、キャンペーンへの参加につながった、というデータが得られました。

画像を説明するテキストなくても可
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山本:さらに、キャンペーン参加データとポイントカードデータを活用することで、キャンペーン参加者が、参加後にまた商品を購入したかどうかの事後購買分析も可能です。

 今回のキャンペーンで検証したところ、過去のキャンペーンも含め、参加率が高い人ほど継続して商品を購入する傾向が見られました。この結果を踏まえて、次回は「たくさん飲むと〇〇がもらえます」といったキャンペーンを企画するなど、販促設計に活かせるような視座が得られた点も、LINEのデータ基盤ならではの成果だと思います。このようなデータを基に、お客様にとって有益となる販促や広告の在り方を描くことがデータの活用の一つだと考えます。

企業のフェーズを問わず、フルファネルでのサポートが可能

MZ:企業がLINE活用を推進する中で、御社ではどのようなサポートを行っているのでしょうか?

山本:ご存じの通り、LINEのサービスは多岐に亘ります。一方で、クライアント様、広告主様の組織構造は縦割りであることが多く、複数のファネルを同時に扱うのは難しいのではないでしょうか。

 電通デジタルの場合、CRM、広告、販促すべてにおいて専門のチームがあり、フルファネルで対応できる強みがあります。

 販促を入り口としてつながった方に対し、CRMではどう活かすのか、友だちのメッセージ配信では到達しきれないコミュニケーションをどう広告で補うかなど、プラットフォームを俯瞰で捉えながら、クライアント様の抱える課題に対して、一気通貫でのサポートを提供できると考えています。

MZ:実際に企業から寄せられる相談にはどのようなものがありますか?

山本:LINEは使われ始めて長いサービスですから、大手企業様の場合、ある程度活用のノウハウをお持ちだと思います。その中で「折角得られたデータが別部署では活かせてない状況を改善したい」といった組織横断的な要望が増えている印象です。

杉江:一方で、中堅企業様や地方の優良企業様など「LINEを使ってみたいけれど何から始めたらいいか」といった相談も寄せられます。漠然としたご要望の場合、広告か、アカウント開設かの話を進める前に、まず何をしたいのか、前提にある課題を掘っていく段階が必要となります。

 企業様の状況や事業規模によって入り口の差はありますが、フルファネルでのサポートが可能な点は一貫していると思います。

継続購買の鍵となる成功要因は、データ活用と顧客体験

MZ:企業のデータ活用・デジタル販促において、今後どのような協業を行っていきますか?展望をお教えください。

杉江:データ活用とCX(カスタマーエクスペリエンス)の世界にケミストリーを起こしたいなと考えています。

 デジタルマーケティングでは、効率的に投資効果を出すことが優先されがちですが、ROIを高めていくことを前提条件として、顧客体験の満足感、ワクワク感を足していきたいというのは、今改めて思っています。

 たとえばLINEを介して「友だち」に感謝を込めてギフトを贈ったり、タレントを起用して応援ボイスを届けたりと、毎日のちょっとした活力になるようなサービスを提供し、反応した方にはブランドファンになってもらうような流れを、データとCXの掛け合わせによって作れないか考えています。

 優れたCXを生み出すためには、生活者にとっての障壁を取り払い、ゴールに辿り着きやすくする「フリクションレス」と、生活者の心を動かして好意を持ってもらうといったゴールに導く「モチベーション」の2軸が重要です。

 フリクションレスについてはLINE自体が既に持っています。それをより強化しながら、当社としては、モチベーションを高めるための行動体験設計の部分にも注力し、その行動変容をデータ捕捉して更なる良質な顧客体験を設計していく、そのような好循環ループをつくれるのではないかと思います。

 私たち電通デジタルは、LINE様から様々なAPIや協働環境を提供されているサービス提供パートナーでもあります。これからどんどんLINE様と連携して、事業会社様にも生活者にも貢献できる新たなマーケティングサービスを生み出していきたいですね。

田中:直近の環境として、メディアが分散化していることや、世界的なITプラットフォーマーの動向などから、Cookieレスを前提とした1st Party Dataの利活用が進んでいると理解しています。

 LINEの法人向けサービスとしては、国内最大規模のプラットフォーマーの1つとして、ユーザー様のデータを安全に取り扱うという前提を守りながら、ペルソナを深掘りし、よりニーズにマッチした情報をお届けすることが、事業会社様から期待されている点だと思っています。また、そうしたデータ利活用によって適切な情報が届けられることが、ユーザー様にとっても生活の質向上に繋がると考えています。

 これらのご要望を前提として、汎用的なデータ分析とその利活用ができるよう、2021年10月に「ビジネスマネージャー」というソリューションをリリースさせていただきました。

 より高度な分析ができるデータクリーンルームについても、まだ完成形という訳ではありません。今後の協業の中でよりブラッシュアップしていきますので、マーケティング活動を通じた事業成長におつなぎいただければと考えております。

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/05/13 10:00 https://markezine.jp/article/detail/38256