EC需要は拡大するも、Web広告の成果は鈍化
MZ:2021年にどのような課題が起こったのでしょうか?
中川:2020年から始まったコロナ禍のなかで、外出をともなう買い物が減った結果、オンラインショッピングの割合が急増しました。そのため2020年はかなり業績も上がり、ベルメゾンのECサイト来訪者も増えたのですが、2021年に入り、これまで外の店舗運営に注力していた小売事業者によるEC市場参入が拡大しました。大手総合通販企業もWeb広告に費用を投下するようになり、2020年と比較すると伸び悩む状況となりました。オークション費用がつり上がり、1クリック当たりの費用が急上昇したんです。
また集客が伸び悩みリターゲティングの対象者にも影響がありました。費用の上昇、対象者数の鈍化という2つの外的要因により、Web広告の成果が鈍化しました。これはどの媒体でも同じ状況でした。
もちろん、RTB Houseの配信を開始してから3年目というタイミングだったので、安定配信をしていても伸び悩む時期だったかもしれません。ただ、Web広告からの受注拡大目標があるので、打開策は必要でした。そこで、RTB Houseで改善策を取ったところ、頭一つ抜け出た成果が得られたのです。
計測形態と課金形態を変更
MZ:どのような改善策を取られたのでしょうか?
中川:RTB Houseさんから、計測形態と課金形態の変更を提案されました。
それまでRTB House側のキャンペーン設定ではGoogle AnalyticsかAdobe Analytics等の計測ツールでよく使用される「ラストクリック計測」を適用していましたが、弊社内部の基幹システムとの計測乖離状況を確認しますと、どちらかというと「ポストクリック計測」に切り替えたほうが効率良く配信できるという提案を頂いたため、「ポストクリック計測」の方に切り替えることに決断いたしました。
ユーウェン:こちらは千趣会様の基幹ツールの状況をヒアリングしたうえのご提案でした。Google Analytics等のツールではラストクリック計測が主流になっているため、ラストクリック計測の方から配信を開始したキャンペーンが多いですが、実際にお客様側が見ている数字の計測ロジックに設定を合わせたほうがベストな結果を出せます。この部分について、RTB Houseは割と柔軟的に調整できる方だと思います。
中川:そしてもう1つ、ROAS保証の課金からダイナミックCPC課金へと変更しました。前述したとおり、ROAS保証は非常に大きいメリットがありますが、一方でRTB House側のリスクは高くなります。そのためどうしても保守的な運用になりがちです。
そこで当社もリスクを取りつつ、攻めの運用をしてパフォーマンスを上げることを決め、CPC課金に切り替えました。
前年比1.7倍の受注額を達成
MZ:計測方法と課金形態を切り替えた成果を教えてください。
中川:ポストクリック計測とダイナミックCPC課金に切り替えたことで、パフォーマンスが改善しました。時期によっては、リターゲティング広告からの受注金額が前年比1.7倍になりました。
MZ:ダイナミックCPCの仕組みと利用するメリットについて、ユーウェンさんからもご説明をお願いできますか?
ユーウェン:ダイナミックCPCは、全体の入札状況とそのキャンペーン時のパフォーマンスに合わせ、自動的にCPCが調整されて最適化がかけられる仕組みです。ROAS保証の場合、入札時にエンジンがROASを考慮するため、どうしても安全な保守的入札になりがちです。これに対しダイナミックCPC課金ではクリック発生時に課金が発生するため、当社側のリスクが低くなり、エンジンの正確性や積極性が増加する結果になります。
こう説明すると「ROAS保証型と比べてCPAが悪くなるのでは」と懸念される方もいますが、そういう状況にはなりません。ダイナミックCPCは入札状況だけでなく、パフォーマンスも見て最適化を図るからです。入札結果を見て、CPAが高くROASが悪化した場合は、CPCで調整を図り、達成できる状態のCPCまで持っていくという調整は1日中何回も実施していますし、ROAS保証からダイナミックCPCに切り替えても、達成できる状況に着地できるキャンペーンはとても多いです。