昨年にかけ、大規模バーチャルイベントが増加
昨年は、総じて企業における動画活用が高度化した年でした。中でも、東京五輪や大型音楽イベントなどをはじめ、10~30万人が同時接続できるような大規模イベントの動画配信やバーチャルイベントの開催が格段に増えました。
膨大な準備期間と当日の運営、プロマネやエージェンシー、当日の運営スタッフや警備員などの人件費コストがかかるリアルイベントに比べると、バーチャルイベントはコスト負担が少なく済みます。また、会場のキャパシティに左右されることなく多くの集客が実現するというメリットもあり、「リアルで開催できない」という理由ではなく、リスク回避やそのほかのメリットを踏まえて、バーチャルでのイベント開催の実施に踏み切る企業が増えました。
これに伴い、必然的ではありますが、配信技術というテクノロジーの進化も見られました。特に、イベントプラットフォームから取得した参加登録情報と連携し、適切なアクセスセキュリティを設定したり、動画ファイルの不正コピーや漏洩を抑止する再生方式、フォレンジック機能との連携が注目を集めています。また、イベント集客の都合上、夜間や週末勤務など時間外でのライブ実施も想定しなければならず、担当者の勤務負荷が上がる傾向にありましたが、編成型のライブや疑似ライブを実現する新製品、サービスの展開も増加しました。
テクノロジーの話になると、どうしても海外のほうが進んでいると思われがちですが、バーチャルイベント開催のノウハウは日本も引けを取ることのない進歩を見せています。
SNSにおける動画活用は、成果が見えづらい?
そのような中、デジタルマーケティングにおける動画活用も少しずつより良い方向に向かってきていると感じます。
多くの企業で動画活用に対する期待が高まっていますが、動画は制作ノウハウ、管理方法、配信技術において、これまでのウェブメディアの延長線上で実施できるものではありません。そのため、なかなか成果に繋がらない状況が続いてしまいます。
最も特徴的な例として、SNSにおける動画活用が挙げられます。SNSでは手軽に動画をアップロードし、ユーザーに届けることができますが、そもそも“拡散”を目的とするプラットフォームでの動画展開は、マーケティングや営業プロセスごとに達成すべき多様な目的に適応することができません。また、動画や広告の視聴完了後に表示されるコンテンツが、企業のブランドやマーケティングに良い影響を与えない場合もあります。このように企業側でコントロールしきれない部分もあることから、動画戦略においては自社で完全に管理できるオウンドメディアの活用も重要です。