SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

月平均アプリインストール数が5.5倍!DeNA×UNICORNのApple Search Ads攻略

 「鏡」「方位磁石」というキーワードが潜在ユーザー層を開拓――アプリ事業を数多く営むDeNAのApple Search Ads(ASA)担当者も、この成果には驚いた。アプリ事業にとって、ストア内広告であるASA対策は必要不可欠だ。ユーザーとの接点を広げるため、ASAに関する深い知見があり、自動最適化プラットフォームを持つUNICORNに協力を依頼。その結果、新キーワード550個の発掘、月インストール数5.5倍という高い成果が得られた。この取り組みについて、DeNAのマーケティング統括部マーケティングサービス部デジタルメディアプランニンググループの西山朝子氏、安部公太氏と、UNICORNの漆原渉氏、横山裕治氏に話を聞いた。

専門担当を置くDeNAのデジタルマーケティング戦略

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、DeNAさんが高い成果を生み出したApple Search Ads(ASA)の運用について伺います。まず、DeNAのマーケティングサービス部がどのような業務に携わっているのか教えてください。

西山:私の所属しているマーケティング統括部マーケティングサービス部デジタルメディアプランニンググループは、DeNAが展開する様々な事業のデジタルマーケティングを推進する部門です。デジタル広告以外にも、YouTuberやインフルエンサーを起用したインフルエンサーマーケティングのほか、アプリストアの最適化、アプリ内広告など様々な施策を展開しています。

MZ:一般的には、事業ごとに広告担当者やデジタルマーケティング担当者が存在し、媒体を横断してPDCAを回していくことが多い印象です。DeNAさんはどのような体制で各事業のデジタルマーケティングを担当されているのでしょうか。

西山:そうですね。事業ごとにも担当者をつけ、デジタルマーケティング全体の戦略・施策設計をしています。

 しかしパフォーマンスを上げていくためには、各媒体の特性をしっかり研究しなくてはなりません。メディアにはそれぞれ特性があり、戦略を立てるためにはその特性を理解する必要があります。DeNAでは広告別に担当者を分け、媒体社や代理店などパートナー企業と連携しつつ、各媒体のロジックの研究や新機能の活用などに積極的に取り組み、最先端・かつ最善の配信ができるよう専門性を担保しています。

株式会社ディー・エヌ・エー マーケティング統括部 マーケティングサービス部<br />デジタルメディアプランニンググループ グループリーダー 西山朝子氏
株式会社ディー・エヌ・エー マーケティング統括部 マーケティングサービス部
デジタルメディアプランニンググループ グループリーダー 西山朝子氏

西山:ASAも注力媒体の一つになっており、専任担当をつけています。

 ASAと一口にいっても、アプリの業態によって細かな違いが出てきます。そうした違いを担当者に集約することで、ASAに関する攻略や知見を蓄積しています。

 ASAに注力する理由ですが、アプリを見つけるための手段として多くの人が使っているのがストア検索だからです。実際Appleの公式見解でも「7割の方がストア検索利用してダウンロードしている」と述べているように、アプリを見つけるための手段として多くの人が使っています。ASAは唯一、そういったユーザーにアプローチができるメニューだからです。

 アプリ中心の事業が多いDeNAで、アプリの認知・利用を促進するためにストアの広告を押さえるのは、当然のことと考えています。実際、アプリストア面のユーザーは、能動的にアプリを探しに来ているため、インストール後も継続して利用しやすいという結果も出ています。

配信拡大と運用負荷削減が課題に

MZ:ASA担当の安部さんに伺います。UNICORNさんに協力を仰いだきっかけを教えてください。

安部:ASAの運用について2点ほど課題がありました。

 1つ目は、アプリと相性のいい潜在的興味関心ユーザー層の開拓を目指し、配信キーワードを拡大していくことです。そのためには「潜在層の検索キーワード」に「適切な入札額」で配信を行うことが必要になってきます。

 「潜在層の検索キーワード」を発掘する方法として「検索マッチ」と「キーワード部分一致」という2つがあり、この機能のみだと、インストール数の大部分を占める検索クエリが見えにくくなってしまい、キーワードの発掘と個別の入札調整が難しくなってしまいます。

 そのため「継続利用意向のあるユーザーが、どんなキーワードで検索しインストールするのか」という、心情を加味したキーワードへの「適切な入札」が難しかったのです。

 2つ目は、効率化です。インハウスで運用していると、営業時間外や休日などに運用調整をできないケースも出てきてしまいます。運用を自動化することによって24時間体制で運用コントロールを行えれば、機会損失を防ぎ、かつ余計な支出もおさえてCPIの効率化を図れるのではないかと以前より考えていました。

UNICORNによるASAの自動最適化で課題に対応

MZ:DeNAさんの課題を受けて、UNICORNさんはどのような提案を行ったのでしょうか。

漆原:最初にお話をいただいたのは2020年末でした。DeNA様の課題を伺った時、確かに当社のソリューションとマッチする部分が多いと感じました。

 「検索キーワードのボリュームアップ」とはいえ、人力ではとても難しく、膨大な運用工数がかかります。当社のプラットフォームUNICORNを活用すれば、自動的にブランドキーワード以外の部分も拡大し、ボリュームアップが狙えます。また、運用は自動化でき、工数も大幅に削減可能です。そこで、スムーズに「1回試してみましょう」という形になりました。

UNICORN株式会社<br /> 漆原渉氏:
UNICORN株式会社
Senior Business Development 漆原渉氏

横山:UNICORNでは、マーケティングのご担当者様に対し日々の運用工数を削減することで、考えや感覚などが必要な「人にしかできない業務」に集中できるようにお手伝いをすることをミッションの1つとしています。

 そのため独自の配信ロジックと機械学習の仕組みにより、運用を全自動化しながらパフォーマンスの最適化・最大化を実現できるプラットフォームを提供しています。DeNA様が課題だと感じられている点は、まさに当社が解決したいと取り組んでいる部分であると感じ、当社の仕組みが課題解決に向けて貢献できるのではないかと思いました。

気づきにくい新キーワードを発掘

MZ:今回のASA運用では、特にライブ配信アプリ「Pococha(ポコチャ)」の成果が大きかったとのことですが、具体的にどのような施策を展開したのでしょうか。

安部:生活者がおうちで過ごすことが増え、ライブ配信アプリのニーズが高まる中、まだPococha(ポコチャ)というアプリに気づけていない、将来的にコア層となっていく可能性があるユーザーとの接点を広げたい狙いがありました。そこでASAで配信キーワードを拡大することを主目的にUNICORNを運用することになりました。

 すると「鏡」や「方位磁石」などのキーワードで流入が増えたんです。こんなキーワードは人力でやっていたら中々思いつきません。「方位磁石」は節分の時期に合わせて出稿したのですがCPIもとても良くて、本当に驚きました。

株式会社ディー・エヌ・エー マーケティング統括部 マーケティングサービス部<br />デジタルメディアプランニンググループ 安部公太氏:
株式会社ディー・エヌ・エー マーケティング統括部 マーケティングサービス部
デジタルメディアプランニンググループ 安部公太氏

MZ:なぜそのキーワードと関連性が高いとプラットフォームは判断したのでしょう?

西山:あくまで仮説になりますが、「鏡」に関しては、自分を撮影して配信を行うライブ配信と親和性が高かったのかと思います。人間だと発見が難しいキーワードによって、想定していなかった新しい層にリーチできたのは非常に驚きました。

 おそらく競合もあまり購入していないキーワードだと思うので、単価を抑えつつ、そこで多数のユーザーを獲得できたのは良かったですね。

横山:当社では、検索のトレンドのキーワードや推奨キーワードのデータを独自で収集しています。そこで拾ったキーワードを随時配信し、パフォーマンスの良し悪しによって入札の強弱を調整していくサイクルを常に回しています。実際にパフォーマンスが良いキーワードをその都度買い付けした結果、新しい関連性を発見することにつながったのだと思います。

月のインストール数は平均5.5倍、1年間で550の新キーワードを発掘

MZ:定量的な成果はいかがでしたか。

安部:まず見られたのがインストール数の向上です。初月で約4倍のインストール数を獲得し、月平均にすると約5.5倍となりました。インストール数の拡大に対しCPIは1.5倍程度に抑え、運用することができたので、効率の観点でも満足の行く結果となりました。

 ブランドキーワードのインプレッションシェアも、かつて平均30%程度でしたが、平均80%程度にまで上がりました。キーワードによっては100%というケースもあります。これらをきちんと押さえられていることは、本当に大きな成果です。

 そして非ブランドキーワードでいうと、インストール数では月平均約1.5倍、新しいキーワードも1年間で550ワードを発掘できました。重要なのは、これまでできなかった潜在顧客の開拓が行えたことです。潜在ニーズを持つ顧客に対してアプローチすることができたというのが最も大きな成果と考えております。

MZ:大きな成果ですね。UNICORNさんにお伺いしますが、ここまで成果が出たのはなぜでしょうか。

横山:キーワードを拡大する仕組みがフィットしたところが1つ大きなポイントだと考えています。Pococha(ポコチャ)は幅広いユーザーに利用される可能性があるため、獲得につながる可能性があるキーワードも数多く存在すると思います。その時々のトレンドキーワードからの獲得を含め、継続的に獲得を積み重ねた結果、今回の成果につながったと考えています。

 もう1つ大きなポイントは、適切な目標獲得単価の設定や投下予算の調整について柔軟にご対応いただけたことです。DeNA様から獲得単価の目標を事前に共有いただいており、その単価に沿って運用しつつも、「獲得単価が上がってもいいから獲得を増やしに行くべき」というシーンでは、見合った目標設定や予算投下をいただけたので、こちらも安心して運用することができました。今回の結果については、私たちにとっても非常に喜ばしい成果だと捉えています。

UNICORN株式会社<br /> Senior Business Development 横山裕治氏:
UNICORN株式会社
Senior Business Development 横山裕治氏

ASAに注力し、ASO連携で効果最大化を図る

MZ:今後の展開について、お願いします

西山:今回の成果を受け、特に拡大期にある事業の広告に関しては、ぜひ再度UNICORNさんと一緒にやっていきたいと思いました。またUNICORNさんはASAに関する豊かな知見をお持ちなので、媒体についての研究会や勉強会なども共同開催していきたいですね。

安部:ASA担当として検討している施策が3つあります。

1つ目がSearch Tabの活用です。AppleのATT(App Tracking Transparency)機能により、端末に紐付いたIDFA(Identifier for Advertisers)を使ってのターゲティング配信が難しくなっています。しかしSearch Tabを使えばApple IDをもとにしたプッシュ型広告ができるので、今までのリターゲティングに近い広告配信が行えると考えております。

 2つ目・3つ目が「ASOとASAの連携」と「ASO新機能のフル活用」です。App Storeの「カスタムプロダクトページ」で設定したクリエイティブアセットはASAで活用できます。そのため、流入経路にあったクリエイティブの配信が可能になりTTR(タップ率)やCVRが向上できるのでは、と考えております。また「プロダクトページ最適化」機能によってA/Bテストが実施できます。これにより他の広告も含めて効果改善が見込めます。他にも「App内イベント」を使うことで、検索以外にも、ユーザー様との接点を増やしていきたいと考えています。

 ASA担当というApp Storeに最も近い広告に携わっている者として、ASO領域も絡めた取り組みを行うことで広告全体での最効率化を目指していきたいと考えております。

漆原:私たちの事業は、「広告を通じ、クライアント様のアプリやサービスを伸ばす」ことです。それをふまえてクライアント様に届けられるように土台を作っていくことはもちろんのこと、「本当にクライアント様のサービスの魅力を伝えられる広告なのか」という点とも真摯に向き合って、より改善していきたいと思っています。

横山:安部さんが取り組まれているように、ASA/ASOの両面でApp Store上のマーケティングの効率化・最大化に取り組まれている方も増えてきているかと思います。なので、弊社の仕組みを活用してこの辺りの課題も解決していきたいです。私たちは、Apple Search Ads Partnerに認定いただいています。今後もAppleさんとの連携を強化しながら、引き続きサービスの改善や進化を図っていきたいと思います。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/04/11 10:00 https://markezine.jp/article/detail/38537