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NewsPicksが抱えていた「解約率」問題を解決 CSO杉野氏が取り組んだ2つのこと

解約数を減らすために実施した2つのこと

──解約率を下げるために、具体的にどのようなことに取り組まれたのでしょうか?

杉野:大きく2つあります。1つは、「長期利用ユーザーをしっかりと優遇すること」です。具体的には、当時臨時メニューとしてのみ存在した「年割プラン」を2019年3月からデフォルトのメニューとして展開しました。年割プランは、月額プランの2割引でサービスをご利用いただけるというもので、ユーザーにとっては長く使えばお得になりますし、当社としては年間でご利用いただく方が増えることになります。

 有料会員の分析を行ったところ、半年間継続利用してくださったユーザーの解約率は低いことがわかっていました。つまり、ある一定期間利用いただけるとサービスの価値をきちんと理解していただけるということです。ですが、その期間になる前に解約してしまうケースが多かったので、長期利用するメリットを追加したのです。

 その結果、現在では年割プランをご利用いただく方が、月額プランと同等程度に伸びてきており、解約率の低下とLTVの伸長につながっています。

 どんなプロダクト・サービスでもそうですが、長期利用してもらうことで価値を感じていただけることがわかっているのであれば、長期利用したくなる環境を用意することが大事です。反対に長期利用ユーザーの解約が続くようであれば、それはプロダクト・サービスを改善すべきという判断ができます。

──なるほど。デフォルトで料金を下げるのは、企業として覚悟がいる判断にも思えますが、LTVを伸ばす観点で必要な選択だったのですね。では、2つめは?

杉野:2つめは、「動画コンテンツの拡充」です。有料会員の分析をしてもうひとつわかったこととして、動画コンテンツをきっかけに有料会員に転換したユーザーの解約率が、記事をきっかけに有料会員に転換したユーザーの解約率よりも非常に高いという点がありました。というのも、当時は動画コンテンツを始めたばかりで週2本程度しかアップできていなかったので、動画コンテンツを目的に有料会員になっていただいたユーザーの期待に応えられていなかったのです。ただし動画コンテンツ経由で有料会員になる方は増えていたので、動画コンテンツは確実に力を入れていくべき分野と判断し、早急に数の拡充を図りました。

 その結果、現在では動画コンテンツ経由の解約率は、記事経由の解約率と同等程度、むしろ動画のほうが良いのではないかというほど、劇的に改善しました。また動画コンテンツをきっかけに有料会員になる方の割合も、記事に近づく形でどんどん増えてきており、今では大事な事業の柱となっています。

「期待LTV」の算出で将来を見越した投資判断が可能に

──年割プランの開始と動画の拡充、大きく2つの取り組みによって、解約率の改善を図っていったのですね。成果はどうだったのでしょうか?

杉野:具体的な数字はお伝えできないのですが、解約率は3年間で劇的に改善しました。決算発表資料を見ていただけるとわかるのですが、実は2019年第1四半期に一度、有料会員数の伸びがほぼ止まってしまった時期がありました。新規有料会員の獲得数は伸びていたものの、解約率が高かったため、結果的に全体の有料会員数が伸び悩んでいたのです。ですが、年割プランの開始と動画の拡充に取り組んだ結果、解約率が大きく減少し、有料会員数は再び成長し始めました。

NewsPicks会員数の変化(クリックすると拡大します)

 またこれら2つの取り組みとは別に、昨年からは「期待LTV」の算出プロジェクトも進行していました。

──期待LTVとはどのようなものでしょうか?

杉野:LTVは解約日から逆算するなど様々なモデルがあるのですが、基本的には「過去のデータ」を用いて算出するものです。そのため、今から入っていただくユーザーがどのくらいのLTVを期待できるのかはわからず、投資判断がすごく難しいのです。そこで、GrowthCampの山代さんと樫田さん(※GrowthCamp創業者の山代真啓氏、樫田光氏)に協力を仰ぎ、新規ユーザーのLTVを推計で算出する「期待LTV」というモデルを作りました。これにより、より正しいLTVが算出できるようになり、それを基に経営・投資判断を踏むことができるようになりました。

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マスプロモーションとエントリーポイントへの投資を強化

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この記事の著者

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

MarkeZine副編集長。1993年生まれ、島根県出身。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/03/25 06:30 https://markezine.jp/article/detail/38577

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