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NewsPicksが抱えていた「解約率」問題を解決 CSO杉野氏が取り組んだ2つのこと

 メディアの有料会員ビジネスの成功例として語られることが多いNewsPicks。最新の経済情報やビジネス動向を「プロピッカー」と呼ばれる専門家たちのコメントとあわせてキャッチアップできる点に加え、NewsPicks編集部が作るオリジナル記事や動画への人気も高まり、右肩上がりで有料会員数を伸ばし続けている。しかし、実は3年ほど前、有料会員数の伸びがほぼ止まってしまった時期があったという。背景にあったのは「解約率」の高さだった。そしてこの課題を解決したのが、2019年1月より同社にCSO(最高戦略責任者)としてジョインした杉野幹人氏だ。杉野氏に、3年間の取り組みと戦略判断を行う際に大切にしている考え方について尋ねた。

※本記事は、2022年3月25日刊行の定期誌『MarkeZine』75号に掲載したものです。

記者採用の面接がきっかけでNewsPicksのCSOに

──杉野さんは2019年1月より、NewsPicksのCSOを務められています。それ以前はNTTドコモでエンジニアや新規事業開発に携わったのち、A.T.カーニーで13年間経営コンサルティングに従事されていたとのことですが、このタイミングでNewsPicksに入られた理由はなんだったのでしょうか?

杉野:根幹にあるのは「知識・教育」への関心です。私はNTTドコモ時代にMBAを取得したり、A.T.カーニー時代に早稲田大学大学院商学研究科で博士号を取得したりと、元々知識への関心が強いのですが、学びを深めていくなかで、「知識をより多くの人に届けたい」と思うようになり、2012年からは東京農工大学の特任教授もしています。

 ただ、講義を通して教えられるのは半年間でせいぜい150名程度。言い方は正しくないと思いますが、知識を多くの人に届けるという点では「効率が良くないな」と感じていました。そんなとき、拙著である『超・箇条書き──「10倍速く、魅力的に」伝える技術』(ダイヤモンド社)が重版で4万刷を達成して。知識を多くの人に届けることができる「メディアの力」を感じたのです。

 そこで教育に加えてメディアでも知識を届けていこうと考え、目をつけたのがNewsPicksでした。NewsPicksは難しい知識をわかりやすく伝えようとする届け手と、知識を貪欲に吸収しようとする受け手、その両方が集まっている貴重なメディアであると思っていました。そこでNewsPicksで記者になろうと思い、採用面接を受けたのです。

株式会社ニューズピックス 執行役員CSO 杉野幹人(すぎの・みきと)氏
東京工業大学工学部卒業、INSEADMBA修了、早稲田大学大学院商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。NTTドコモ、A.T.カーニーを経てNewsPicksに参画。東京農工大学工学部特任教授、A.T.カーニーのCMTアドバイザーも兼業。文部科学省のリカレント教育の事業運営委員も務める。著書に「超・箇条書き」(ダイヤモンド社)、「使える経営学」(東洋経済新報社)等。

──えっ、では最初は記者として入社を考えられていたのですか?

杉野:実はそうなんです(笑)。未経験でしたし、新人記者の給料で構わないから入社させてくれと言ったら、面接の場で驚かれましたね(笑)。

 ただ、採用の過程で実際に記事を書いてみたり、これまでの経験を話したりしていくうちに、経営陣から「コンテンツと経営、両方に理解のある人物を探していた。経営陣として入社してもらえないか?」と声をかけていただいて。当時CEOだった梅田(※ユーザベース共同創業者梅田優祐氏)と話していくうちにそのビジョンに共感し、経営陣としての入社を決意しました。自分で言うのもなんですが、本当に不思議なご縁だと思います。

──当時、NewsPicksの経営陣は杉野さんに何を求められていたのでしょうか?

杉野:経営陣の要求はバラバラだったのですが(笑)、梅田が気にしていたのは「解約率(チャーンレート)」でした。「解約率の高さが気になるから、現状分析からお願いしたい。分析したうえで経営上の課題がそこでないとわかったら、別のことをしてくれて良いから」と。

 そこで入社してからはまず解約状況の分析と、解約率を下げていくための施策に注力したわけですが、結果的に「解約率を下げること」は戦略上最も重要であることがわかりました。梅田の仮説は正しかったわけです。

解約率が高ければ「会員獲得のための投資」はできない

──詳しく教えていただけますか。

杉野:私が入社した2019年当時、NewsPicksはとにかく新しいコンテンツをたくさん出して、どれがマーケットに刺さるのかを試している時期でした。かつ既存のユーザー数もそんなに多くはなかったので、新しいコンテンツや取り組みによって、どれだけ有料会員数を増やしていけるかというのをみんなが意識していた時代です。結果的に、有料会員数は右肩上がりで増えていたのですが、有料会員になっていただいた方の解約率を見てみると、確かに非常に高いと言える数字でした。

 有料会員になっていただいてもすぐに解約されてしまうわけですから、その状況で「有料会員を増やすための施策」に投資することは、経営判断上できませんよね。そこでLTV、つまり一人の人にどれだけ長くサービスを使ってもらえるかという考えを取り入れることにしました。LTVを高めるために最も重要なのが「有料会員の解約率低下」だったので、私はまずそこに注力していくことにしたのです。

 当時はまだ社内でも「新規有料会員の増加」に重きを置いている人が多かったので、中長期的に「解約率」が大事と話しても、なかなか理解を得ることはできませんでしたね。ただそんな中でもエンジニアの一人が強く共感してくれて、最初は実質2人でプロジェクトを開始しました。

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解約数を減らすために実施した2つのこと

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この記事の著者

福島 芽生(編集部)(フクシマ メイ)

1993年生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、書籍編集を経て翔泳社・MarkeZine編集部へ。Web記事に加え、定期購読誌『MarkeZine』の企画・制作、イベント『MarkeZine Day』の企画も担当。最近はSDGsに関する取り組みに注目しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/03/25 06:30 https://markezine.jp/article/detail/38577

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