※本記事は、2022年3月25日刊行の定期誌『MarkeZine』75号に掲載したものです。
成長速度を上げていくためマス投資を決断
(左)株式会社SUPER STUDIO 取締役COO 花岡 宏明(はなおか・ひろあき)氏1987年、大阪府出身。2010年関西大学を卒業後、国内最大手SI企業にて大規模金融基幹システム運用をけん引。2014年にSUPER STUDIOを創業、同社取締役に就任。現在はCOOとして全事業のオペレーションを統括している。
(右)木村 元(きむら・つかさ)氏
神戸大学卒業後、2009年、ユニリーバ・ジャパンへ入社。法人営業を経て、マーケティング部門にてブランドマネージャーを担当。イギリス本社の勤務を経て、日本のカテゴリー責任者として、ブランドマーケティングに従事。現在は、ユニリーバ・グローバル傘下であるラフラ・ジャパンの代表取締役CEO。また複数企業のマーケ支援を経験。
――本記事ではECプラットフォーム「ecforce」を提供しているSUPER STUDIOの花岡さん、同社の初めてのマス広告出稿を支援した木村さんに、その様子をうかがいます。花岡さん、はじめに御社とご自身について、教えてください。
花岡:SUPER STUDIOは2014年に創業し、SaaS事業やD2C事業などを行っている企業です。元々私は、大手システム会社に勤務しシステム開発などをしていましたが、その後独立した後に、共同創業者である林、真野、村上とともに、SUPER STUDIOを創業しました。現在はCOOとして、プロダクトの開発からマーティング、セールスまで事業に関わる領域を統括しています。
ecforceはビジネスのEC化を支援するプラットフォームで、LP作成や受注・顧客データ管理分析など、ECに必要な各種機能をそろえています。元々自分たちでコスメの製造・販売を行っており、その際に独自開発したシステムが製品の原型になっています。
――続いて、2021年6月より開始されたマス広告出稿についてうかがいます。まずは実施の理由から、教えていただけますか?
花岡:一言で言うと、成長速度をさらに上げていくためです。出稿前、ecforceの受注のほとんどは口コミによるもので、大型のマーケティング施策を行ったことはありませんでした。製品が市場にフィットしており、導入社数が自然と増えていたのです。
マーケティングに投資せずに成長を続けてこられたのは製品への支持があってこそですが、別の見方をすると「成長機会があるのにアクセルを踏めていない」とも言える状況でした。ecforceを業界のデファクトスタンダードにしていくために必要なアクションとして、初めての大型資金調達をしたタイミングで出稿を決断しました。
プロジェクトは各部署からトップが集まる大規模なものになりましたが、マス広告の経験者はいなかったため、戦略策定の面では木村さんに、クリエイティブの面ではNEWSの梅田さんに参画いただき、チームを組むことにしました。
――一般的に、初めてのマス広告を検討する際には、投資額の大きさや効果測定の難しさが課題になると言われています。御社でもそのような議論はありましたか。
花岡:はい。マス広告どころか、たとえば記事広告のような施策も「高い」と感じていたのが正直なところです。また、当社はD2C事業も展開していることから、CPAやLTVといった指標を基に判断していく文化が根付いており、経営陣も常に黒字を意識していました。マス広告に投資して、これらの数字が合うということはまずないので、考え方を変える必要がありました。
――これに対し、木村さんはどんなアドバイスをされたのでしょうか?
木村:マス広告を出稿した後、どのような指標を用いてモニタリングするかが非常に重要であること、中長期的にブランドの資産としていく視点が必要であることをお伝えしました。これまで口コミで広がり続けていたことからもわかる通り、ecforceは圧倒的なベネフィットを持っていますし、SaaSは成長率が高い領域ですので、出稿に対して心配な要素はありませんでした。