三井住友カードが描く「リテールプラットフォーム」の構想
先述のWalgreens社はアプリを、lululemon社は鏡型デバイスという場を提供することで、より多くのファーストパーティデータを獲得していた。しかし自社で新たな場を構築するのは難しいという企業もあるだろう。そこで本講演の後半では、Custellaのような“データを有する企業・サービス”と組むことでどんなことができるか、可能性が示された。
Custellaは現在、小売事業者のファーストパーティデータとCustellaのデータを活用して、新たな集客戦略を練ったり、新たな収益につながるサービスを構築するといった連携を視野に入れている。そのために、購買そのものである決済データ以外に、購買の前、購買の後といった部分での顧客接点を増やし、小売に役立つようなデータ取得に注力している。購買前とは、人流、行動、位置データなどを指す。一方、購買後は口コミ、フォローといった接点だ。ここに小売事業者のファーストパーティデータが加われば、何を買ったかまでが把握できるようになり、顧客理解の解像度が高まる。

たとえば、マクロミル社のネットリサーチシステムと連携し、カード会員の意識データの取得を可能にした。同サービスのファーストユーザーである住友生命とともに、健康志向のユーザーの消費行動の調査を実現。また三井住友カードが利用している店舗端末「stera(ステラ)」には、unerryのビーコンアプリを導入した。
さらに、リテールメディアにつながるユーザー接点として自社アプリ「ココイコ!」を展開。このように、様々な面で小売業者と連携する可能性を探っている。
「将来的にはプラットフォーム化していく構想を持っています。加盟店様、小売事業者様はお持ちのチャネルと接続することによって、お客様とのコミュニケーションをより活発にできるようになります」(細谷氏)
奥谷氏も、このスキームが持つ可能性に言及。「たとえば自社クレジットカードを発行しているがデータを活用しきれていない、リテールメディアのビジネスができていないといった企業は、良い影響を得られるのではないでしょうか。小売事業者が自らの接点を利用してもいいですし、『ココイコ!』を通じてコミュニケーションすることもできます」と述べ、講演を締めくくった。