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ノバセル田部正樹の事業を成長させる“商売視点でのマーケティング”とは

自社ビジネスのドライバーは何か?を見極めよう。足立氏×田部氏が議論した事業成長のためのマーケティング

「競合」をどう捉えるか。足立さんの見解は?

田部:まず、足立さんは「競合」についてはどうお考えですか。競合を見るな、と言われたり、逆に競合を見ようと言われたり、いろいろな議論がありますよね。

足立:私は昔から、継続的な戦略は3C フレームで考えています。お客様が喜んでくれること(Consumer)、競合が追随しにくいこと(Competitor)、我々の強みや特徴 (Company)の3つが揃うと、ビジネスはとても強くなります。この中で、競合はお客様の視点で想像します。ですからたとえば「お腹がすいた」ときの競合は同業のコンビニだけでなく、スーパー、ドラッグストア、外食や自炊も含まれます。

 同じように、たとえば動画配信サービスの競合は、類似サービスやテレビ、マンガはもちろん、スマホも含め「お客様がエンタメ的なものに使う時間の全部」です。競合の範囲を非常に広く捉えることが、お客様視点による競合の考え方ですね。

田部:なるほど。少なくないマーケターが「競合とは、目の前の”今まさに戦っているコンペの相手”だ」と思ってしまっているかもしれません。また、ベンチャー企業の中には「私たちはポジショニングが独特でオリジナリティがあるので、競合はいません」と言う人もいますが、競合はお客様視点で考えるといくらでもいるはずですよね。

足立:はい、お客様の立場で考えればすぐにわかります。ベンチャーの新しいサービスも、今までそのサービスがなくてもソリューションが得られる「何か」で代替できているケースがほとんどなので、それが”競合”と言えますよね。

既存顧客を裏切らない内容で、新規顧客に訴えていく

田部:次におうかがいしたいのが、ブランドの一貫性についてです。いわゆるWHO/WHATは1つに決めてブランドに一貫性を持たせるべきという考えと、WHO/WHATは細分化するとたくさんあり、それらを組み合わせてやっていったほうがよいという考え、両方を聞くことがあります。一貫性にこだわりすぎるとお客様のニーズを満たせなくなることがあり、かといってあまりにばらばらなことをすると、ブランドとして成立しなくなる。この問題について、足立さんはどうお考えですか。

足立:両方正しいですよね。ブランドは「人」のようなものなので、毎回人格が変わったらお客様は戸惑いますし、特徴やイメージを認識できなくなってしまいます。ですからまずは一貫性が必要です。

 しかし、現在のユーザーの満足ポイントが未来のユーザーには響かない可能性も高いわけです。その場合は、今のお客様に伝えていることと矛盾せず、しかも新しいお客様に響くことを新たに考えて発信する必要があります

 私が過去に関わっていたゲーム「ポケモンGO」を例に考えてみましょう。新しいサービスや機能をどんどん追加していくと、コアユーザーの方々にはとても満足していただけます。しかし、それをやるとどんどん複雑になり、新規ユーザーにとっては入りにくくなる。ですから、コアユーザー向けのメッセージとは別に、「そもそも何がおもしろいのか」を伝えていかないといけません。これを踏まえて、ポケモンGOの新規ユーザーへのメッセージとしては、「こんな機能が追加されました」ということではなく、「歩くと楽しく、健康にいいですよ」と訴えました。

 ここで注意したいのは、既存ユーザーの方々を裏切るようなことがあってはいけないということです。“響かない”のは構わないですが、矛盾してはいけないのです。再びポケモンGOを例に出すと、「歩くと楽しいですよ」「ダイエットになりますよ」という訴求はロイヤルカスタマーにとっては既知なので全く響きませんが、裏切る内容にはなっていません。

田部:ロイヤルカスタマーがその製品やサービスを好きな理由と新規顧客が選ぶ理由は違うことがある、というのはおもしろいですよね。CM制作の現場でも、新規向けのメッセージを出そうとするとき「既存顧客やファンが見たらどう思うか」といった議論をすることがあります。企業の内部にいる人が客観視するのは簡単ではありませんが、矛盾しない・裏切らないメッセージかどうかを考えてみるとよさそうです。

足立:新規のお客様へのコミュニケーションは本当に重要です。なぜなら、既存のお客様は必ず何%かずつ減っていくからです。新規のお客様がいなければブランドは縮小していってしまいますので、継続的に獲得することは非常に重要です。

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CMOではないマーケターが、経営者思考を獲得するには?

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/05/18 08:00 https://markezine.jp/article/detail/38768

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