CMOではないマーケターが、経営者思考を獲得するには?
田部:先ほど「マーケティングの最終的な役割は事業成長に貢献することだ」とお話しいただきました。そうすると、マーケターは経営者の目線を持ち、経営者に近い考え方ができるようになる必要があると思います。CMOなど経営層ではないマーケターがそれを獲得していこうとしたとき、どんなやり方が有効だとお考えですか?
足立:ポイントは2つですね。全体を見る経験が非常に大事なので、1つは小さくてもいいから、PLを全部持つことです。会社内の事業担当になるもよし、自分でベンチャー企業を起こしても構いません。PL全体を見ると、売上や認知だけではなく、利益を見るようになります。また、何が売上に効くか、何が効かないのかという全体像を見るようになります。もしくは自分でビジネスをしてみることです。すると、儲けることがいかに大変かがわかりますし、売上・利益に効いている要素や有効なコミュニケーションについてもわかってくるようになります。
もう1つは、4Pの中で自分が理解している部分をどんどん増やしていくことです。たとえばデジタルしかやったことがないなら、マスをやってみるというのも第一歩です。その中でPLまで見られたら完璧です。それができたタイミングで、営業や経営の仕組み、または商品開発までいけると広がります。本当に経営者になろうと思ったら、営業経験は必須ですね。
田部:ありがとうございます。ちなみにキャリアの作り方としてはもう一つ、足立さんが日頃おっしゃっているように、自分が得意な領域を誰にも負けないレベルまで突き詰めて、汎用性のあるスキルにしていく方法があります。狭い領域でも、突き抜けた成果を出す人は高く評価されます。他は全然できなくても、SNSを任せたら抜群である、といったことです。

他者や他業界からもっと学ぼう
田部:最後の質問です。ここまで何度か出てきた「お客様視点に立って考える」ということについて、重要性はわかっているけれど、なかなかうまくできないという人もいます。足立さんがお客様の視点に立ち、次々と魅力的な企画を生み出していかれる秘訣をおうかがいできますか。
足立:一言でいうと好奇心ですね。冒頭に定義した通り、マーケティングは人の心を動かす仕事です。ですから人が心を動かされているもの、流行っているものなどに興味を持ち、「なぜこれが流行っているのだろう?」と、その仕組みを考察して理解していくのはとても大事なことだと思います。
若い方にアドバイスするなら、「できるだけ業界や世代が違う人々に出会うこと」ですね。違う業界には、全然違った仕組み・やり方があります。もしかしたら、その仕組みのうちのいくつかを自分のビジネスに転用できるかもしれません。
田部:他業界から学んで自分のビジネスに活かすというのは、とても大切なことですね。足立さんご自身も、そのようにした例も多いのでしょうか?
足立:多いですよ。いろいろな業界でお客様に響いていることを自社向きにアレンジしています。「マクドナルド総選挙」はAKB48から発想を得ましたし、ファミリーマートの「お値段そのまま40%増量作戦」は、化粧品業界が年末に出す増量パックから着想しました。
新しいことを学ぶ、多様な人に出会う、流行を理解して自分も経験するというのは、私の中では全部つながっています。会社と家の往復だけではなく、地元のボランティアでもポケモンGOのトレーナーでもいいので、自分が所属する「輪」をたくさん持ち、行動量を増やすことが大事です。
田部:根本となる考え方から実践的なアドバイスまで、幅広くお話しをいただきました。足立さん、本日はありがとうございました。
