店頭販促をデータドリブンに
次に、快適な買い物体験の提供に向け、データドリブンな店舗づくりを実現する店内行動計測ソリューションをご紹介します。
このソリューションは、店舗内や商品棚の前にいる買い物客の行動を可視化するものです。これにより、現状の店舗設計や商品陳列にある問題を見つけ出し、店内でより良いアプローチを図ることができます。
たとえば、ある小売店とメーカーが共同で店舗レイアウト改善を行った例があります。曜日、時間帯、来店客の性別・年代別に該当売り場への流入率を計測し、流入経路や購入率を掛け合わせて分析した結果、棚割や店舗内レイアウトの見直し、商品を手に取らせるための追加施策などに繋がるなどデータドリブンにPDCAを回すことができるようになっています。店舗内での買い物行動の分析は、快適な買い物体験の提供に欠かせないプロセスです。
最後に、今後日本でも展開が拡大していくであろう取り組みとして、無人店舗のプロジェクトもご紹介しましょう。博報堂プロダクツは、顔認証入退室管理、監視カメラ、AI画像解析などのセキュリティソリューションを提供するセキュアと共同で、リテール分野におけるDXの普及や、最新のテクノロジーを活用した実証実験・サービス開発を行う「リテールDXコンソーシアム・ラボ」を2021年4月に発足しました。この第一弾のプロジェクトとして、新宿住友ビルに無人店舗「DIME LOUNGE STORE(ダイムラウンジストア)」をオープンしています。

同店舗は、顔認証での入退店や顔認証決済システムを導入しているほか、手に取った商品と連動するサイネージ表示、サイネージ広告、コミュニケーションAIなど最新のリテールテックを多数搭載しています。未来の買い物体験ができる場として、機会があれば訪れてみてください。
店頭マーケティングのDXでより良い買い物体験を
今回ご紹介したソリューションは、博報堂プロダクツがリテール領域で掲げている「Shopper DX」という構想のもと展開しているものです。

「Shopper DX」では、来店前〜来店時〜来店後と、時間・場所を問わずシームレスに顧客と繋がり、より良い買い物体験を提供することを目指しており、集客・販促に深くコミットする店頭マーケティング型のDXソリューションとして展開しています。
ここまでで紹介してきたソリューションを通して取得する店舗内でのデータに加え、会員データ、ECデータ、博報堂グループが有するデータなどを掛け合わせることで、オフラインとオンラインで分断することなく一人ひとりの顧客を理解し、より有用でパーソナライズ化された情報を提供。スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニなど、来店頻度が高く、非計画な購買が多い店舗においても、集客(来店前)〜購買(店舗内)〜ファン化(来店後)を促します。CDPやMA、BIツールとの連携、アプリとの連動などすでにいろいろな事例が出てきていますが、コロナ禍でリテールテックの活用が一気に進んだこともあり、こうした取り組みは今後ますます活発化していくと考えられます。
リテールテック領域はこれからも進化し続けると思います。博報堂プロダクツは最先端のリテールテックとマーケティングノウハウをかけあわせ、リテール業界のDXに挑んでいきたいと思います。
定期誌『MarkeZine』76号 特集:リテール最新動向
第1回:「顧客体験価値の向上」を共通ゴールにしよう。『小売DX大全』著者からの提言
第2回:鍵は「UXへの落とし込み」リテールビジネスの今後を消費者調査から紐解く
第3回:半歩先の進化が、より良い顧客体験に ユナイテッドアローズのEC・アプリのリニューアルから学ぶべきこと
第4回:「セブン-イレブンアプリ」で高まる店舗体験とその先にあるラストワンマイル構想
第5回:業界キーパーソンに聞くイチオシの買い物体験
第6回:買い物体験を豊かにする、最新リテールテック(本記事)
第7回:リテールテックで店頭体験は進化する──量販店などで導入広がる「リモート接客」の可能性