「LUX」ブランドビジョンリニューアル施策で重視したもの
MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは皆様の担当業務をお教えください。
林:ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティングの林と申します。現在、ユニリーバでLUXのブランドマネージャーを務めております。2014年にユニリーバに入社し、LUXの前はリプトン、Dove(ダヴ)などのブランドを担当しておりました。
石黒:ADKマーケティング・ソリューションズ(以下、ADK MS)の石黒と申します。広告代理店での営業を経て2020年11月にADK MSに入社し、ユニリーバ様のLUXチームを支援させていただいております。メディアプランナーとして、LUXブランドのオンライン・オフライン両方におけるマーケティング施策のプランニングからエグゼキューションまでをお手伝いしております。
大西:LINEの大西と申します。2019年に入社し、販促領域の企画職を経て、現在はパートナー営業本部のパートナー営業第1チームにてADK様を担当させていただいております。
MZ:今回、ユニリーバ様は「LUX」のブランドビジョンリニューアルで大規模なデジタル広告施策とブランドリフト調査を行ったとのことですが、どのような狙いがあったのでしょうか?
林:LUXは1985年に日本で初めて女性のためのヘアケアブランドとして誕生しました。ちょうど男女雇用機会均等法が制定された年で、これまで女性が社会で輝くことをテーマに、男女平等が進んでいるイメージが強い海外の女優などを起用してきました。ただ時代は変わっており、ブランドが目指すべき姿もまた変わっています。そこで、今の時代にあったブランドアンバサダーや、どのようなユーザーコミュニケーションが適切なのかを改めて考え、2021年9月にブランドビジョンを大幅にリニューアルいたしました。
女性が輝く社会を作る、これはLUXが発売以後掲げている姿勢であり、現在も変わりはございません。しかしながら、時代が移り変わるとともに、人々の“美しさ”の捉え方も変わり、現代においては容姿だけにとらわれない “生き方”そのものを反映するものとしても考えられつつあります。世の中は一つの固定化された理想像だけでなく、内面の美しさも含め、年齢や肩書き、性別に捉われない一人ひとりの美しさに目を向けはじめています。
そんなかつてないほどダイバースな時代、自分らしい美しさを楽しみ、それが自信となることで、勇気を持って一歩踏みだしてほしいとLUXは考え、「BRAVE VISION 2030」を掲げました。ブランドアンバサダーには、“BRAVE”(=勇敢な)な女性の象徴としてモデルや女優でも活躍する水原希子さんを起用しています。
林:今回はブランドビジョンのリニューアルということもあり、新しいメッセージが多くの方に届くことを大前提として、施策を考えました。その上で、新たに掲げたブランドのパーパスとビジョンに対して、どのぐらい共感や好意を感じていただけるのかについても指標にしたいと考えました。
このように、認知だけでなく、リーチと接点の質の部分も重要視してプロモーションを企画・立案しました。
MZ:そうした成果を求めるにあたって、広告媒体の選定ではどのような条件を意識していたのでしょうか?
林:認知に適した媒体、認知と好意度に適した媒体など様々です。我々がターゲットとする消費者がどういう生活行動で、どういったところにタッチポイントがあり、どういう広告だと刺さりやすいのかといったところは、ADK MS様と協業しながらプランを策定していきました。
トークリスト面に出稿できる運用型広告「Talk Head View Custom」
MZ:今回の広告施策ではLINEの「Talk Head View Custom」に出稿されたとうかがいました。施策の目的を踏まえて、活用に至った背景や経緯をお聞かせください。
石黒:今回、LUXのリブランディングを実施するにあたって、短期間でブランドのパーパスとビジョンの認知を最大化させることが重要だと考え、それに適した媒体を検討しました。
LINEの「Talk Head View Custom」に出稿した理由として、まず他のSNSと比較した際、利用率の高さに注目しました。特に、カバーが難しいとされる40代以上のユーザー層も、LINEでカバーできているという点は魅力的でした。
一方で、ユーザーがLINEの中で最も使うのが「トークルームでのメッセージのやりとり」であるという仮説を立てたとき、従来の運用型広告である「LINE広告」ではトークリスト面(トークリストの最上部にある広告配信面)を指定した配信はできませんでした。また、トークリスト面へ確実に広告出稿できる「Talk Head View」は予約型広告で、ユニリーバ様のメディアプランニングでは柔軟性が高い運用型が使われていたという経緯もあり、出稿を躊躇していました。そんなとき、運用型広告の「Talk Head View Custom」が新たに登場することを知り、LUX BRAVE VISION 2030のリブランディングについて伝える手段として最適だと判断しました。
LINE上の“一等地”×運用型広告の柔軟性
MZ:LINEの大西様にお聞きします。「Talk Head View Custom」の特徴や、このプロダクトをADK MS様に情報提供した狙いについて教えてください。
大西:「Talk Head View Custom」は、9,200万人(2022年3月末時点)の月間アクティブユーザーを持つLINEの中でも、より多くのユーザーの目に触れる”一等地”とも言えるトークリストの最上部に広告を配信できる運用型広告です。
従来の「Talk Head View」は価格帯がグロス価格1,000万円から実施可能ですが、「Talk Head View Custom」ではネット価格50万円からと比較的トライしていただきやすい価格帯になっております。また、「Talk Head View」は配信設定期間が1日の予約型広告ですが、「Talk Head View Custom」は運用型広告ですので代理店様が配信期間、ターゲティング、フリークエンシー上限の回数などを指定して運用いただけます。
大西:私は、ADK MS様と共にLINEの広告サービスを利用推進することをメインミッションにしており、現在、最も力を入れているサービスの1つが「Talk Head View Custom」です。
配信したのは30秒の動画、限られた面でいかに伝えるか
MZ:今回配信した広告の具体的な内容を教えてください。また、「Talk Head View Custom」で広告を配信するにあたって、どのような準備を行ったのかについても教えてください。
林:クリエイティブは、新たなブランドビジョンを紹介する30秒の動画素材です。
林:「Talk Head View Custom」に出稿するにあたり、いかに我々が伝えたいメッセージを、アテンションを引きながら伝えるかを重視しながらクリエイティブを作成しました。新しいブランドアンバサダー、LUXのブランドビジョン認知を向上させるためのクリエイティブを考え、他の媒体に出稿しているものと遜色のないクオリティになるように意識しました。
さらに前段階の準備という点でいえば、他媒体と合わせてどういうメディアプランがあり、どういうプロモーションを仕掛けるかをゼロから考えました。その部分ではADK MS様と連携を密にしながら、適切な施策について日々話し合って最終的に策定しました。
MZ:ADK MSの石黒様にうかがいます。今回の広告施策ではどのようなKPIを設定したのでしょうか?
石黒:短期間でブランドのパーパスとビジョンを幅広い人に伝えるという目的から、全体のリーチ数を指標にしました。またターゲットに絞ったリーチ数でも目標値を定めました。
広告の配信効果を高めるために、ターゲティングは20代以上の女性と幅広く設定しました。入札は、2021年夏時点では「Talk Head View Custom」がまだプレオープンのメニューであったため、予約型広告の「Talk Head View」の実績値を参考にしました。実際の運用においては、リーチを広げるという目標がありつつ、入札の上限額についてはなるべく抑えた価格に設定しました。
クリエイティブは、30秒の動画の中でブランドアンバサダーがブランドメッセージを語るのですが、LINEの仕様では動画再生時に音声オフで再生されることになっているため、配信する際は動画内に字幕をつけるよう提案いたしました。
リーチ数は想定の1.6倍、好意度と購入意向がリフトアップ
MZ:実際に得られた効果はいかがでしたか?
石黒:データの調査分析で連携したニールセン社によると、少ないインプレッションで多くのリーチを獲得できたことがわかりました。さらに、非常に短期間でリーチを獲得できました。全体のリーチ数とターゲットに絞ったリーチ数の両方で見ても、獲得数におけるリーチカーブは良い結果であったと考えています。実際に、リーチ率は想定の約1.6倍を達成できました。
石黒:ブランドリフトについては、広告に接触した人と接触していない人とで比較したところ、ブランドの好意度と購入意向の両方について、広告に接触した人に大きなリフトアップ効果が見られました。これは我々にとっても重要な発見でした。
石黒:他のソーシャルメディアの場合、若年層におけるリフトアップは必ずしも毎度の施策で得られるわけではなく、工夫が必要なところなのですが、今回の施策では、30~40代の女性に加えて若年層でもリフトアップが見られたのは大きな成果だと考えています。
これらのことをまとめると、「Talk Head View Custom」は他の広告媒体に比べて、(1)少ないフリークエンシー回数かつ短期間で大規模リーチが可能、(2)ブランド好意度と購入意向において、相対的に高いリフトアップが得られる、この2点で優れていると感じました。
改善点としては、短期間でのリーチのスピードが高い一方で、他の媒体と比較するとリーチ単価が少し高かったので、今後改善を図りたいと考えております。
林:今回の目的は、認知を高め、ブランドパーパスの新しいメッセージを伝えることでした。そこでいかに共感を生み出すことができるのかという点で、ミドルファネルまで影響を及ぼすことができたことを喜んでいます。
プロモーションにあたって、消費者の行動や反応をしっかり考えながら、どの媒体でどの層に訴求するのかを緻密に計画しています。今回の施策では認知、さらには好意度と購入意向でも良い結果が出たことから、社内でも成功事例として認知されています。
MZ:LINE大西様は今回の施策を振り返って、どのような感想をお持ちですか?
大西:「Talk Head View Custom」の強みはトークリスト面に広告を配信でき、柔軟性のある配信設計ができること、お試しいただきやすい価格帯などが挙げられますが、今回はこれらの特長が活かされた良い事例になったと考えております。
今後は配信データの活用もブランディング施策の肝になってくると考えており、「Talk Head View Custom」で多くのユーザーからの関心を集め、それをLINE公式アカウントやLINE広告など弊社の他のプロダクトの配信にもご活用していただければと思います。LINEの法人向けサービスを横断的にご利用いただき、様々なお取り組みをしていただけますと幸いです。
ユニリーバ様には「Talk Head View Custom」をプレリリース段階で利用いただきましたが、本サービスは2022年5月に正式リリースとなりました。今後もより多くの企業様、代理店様のビジネス成長に貢献できればと考えております。
LINEを活用した「日常の中にある広告」へ
MZ:ユニリーバ様として、今後LINEの広告サービスを活用して取り組みたいことがあれば教えていただけますか?
林:媒体により特性は異なりますが、多くのユーザーとオンラインで接点を持つことができること、さらに日常生活において家族や友人とメッセージをやりとりする中で、ごく自然にメッセージを届けられるという点がLINEという媒体の特徴だと思います。
消費者の日常の中で接点を持ち、そこでパーパスやブランドのメッセージを伝えていける点にLINEの価値を感じています。今後もブランドのメッセージを効果的に伝えたい場面で出稿を検討していきたいと考えています。
石黒:今回の施策を経て、「Talk Head View Custom」だけではなくLINE広告も併用すると、どのような配信効果が見られるのか試してみたいと思いました。また、ユニリーバ様はLINE公式アカウントをお持ちなので、LINE公式アカウントの活用データと連携を図った上でLINE広告を配信するといった施策も考えられます。
ユーザー1人ひとりの興味関心に合わせたキーワードターゲティング広告も実施していけるとより良いと感じ、媒体としてのLINEに様々な可能性を感じています。
弊社はLINE活用に特化した横断型プロジェクトチームを設けており、LINEを活用したO2Oの取り組みなども展開しています。「LINEで応募」「LINE NFT」など、店舗送客や売り場導線を活かした施策などでもユニリーバ様をサポートしていければと思っています。
「Talk Head View Custom」については下記より詳細がご覧いただけます。