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ポストCookie時代の本格到来を乗り越える

企業は「Cookieレス」をどのようにとらえれば良いか──NTTドコモ・花王・RENOSYの対応は?

 「ポストCookie時代」と言われてきましたが、Cookieレスや個人情報保護の流れが、本格化してきました。こうした中、いまだ企業の中でも、その対策やマーケティング手法に迷う企業が多くいます。本取材では、各社の個人情報保護とCookieレス対策の認識・状況について、同取り組みを積極的に進める企業3社に伺いました。

代替手段の検討・見える化が急務(NTTドコモ)

──昨今のCookieレス・個人情報保護の流れをどのように見ていらっしゃいますか。

 ポストCookieについては、代替手段を検討することが重要だと考えています。これからはCookieに頼りすぎず、ファーストパーティデータの活用がますます重要になるでしょう。

 NTTドコモでは、ポストCookie・個人情報保護の流れに先立ち、自社データの所有と活用に力を入れています。約1億会員のdアカウントIDデータに紐づく多種多様なデータを保有しています。たとえば、dカードやd払いなどの利用情報、位置情報、個人属性など、活用できるデータは多岐にわたります。

 サードパーティCookie廃止の影響は、広告の計測やターゲティングに現れていますが、当社ではファーストパーティデータを使った広告のターゲティングも進めており、代替手段の検討をしています。

 個人情報保護については、まずお客様の情報を安心して提供してもらえるよう「見える化」が重要です。また、個人情報を保護しながらデータを活用し、お客様の体験を向上させることが企業としての責任だと思っています。

──注目しているサービスやソリューションはありますか。

 注目しているサービスは、当社の「dポイントマーケット」です。本サービスは、経由するだけでネットショッピングでもdポイントがプラスで貯まるサービスです。dポイントマーケットは購買データが連携されるため、今後さらにお客様のデータを活用した体験向上につなげていく予定です。

パーソナルデータ憲章を制定し、社内全体の基本方針・評価制度を整備

──ポストCookie・個人情報保護の対策の対策として貴社が取り組んでいることを教えてください。

 当社では、個人情報保護のために多くの対策を講じています。具体的には「NTTドコモ パーソナルデータ憲章(パーソナルデータ憲章)」を制定し、プライバシーへの配慮をしながらデータの有効活用を進めるための基本方針を整備しました。またプライバシー影響評価(PIA)制度を導入し、データを活用した施策を実施する前にプライバシーへの影響を評価する場が設けられています。

 このパーソナルデータ憲章に反しないか、お客様や社会から受容いただけるかを評価し、総合評価のほかに懸念点や想定される対処策を検討しています。加えて、社内に「プライバシー影響評価会議」を設置し、サービスや施策がプライバシーに与える影響を評価しています。

 さらに、お客様自身で同意事項を確認・変更できる「パーソナルデータダッシュボード」しています。お客様は自身で同意内容を一覧で確認・変更することが容易にできます。これらの取り組みにより、ドコモはお客様のプライバシーを保護し、安心してサービスを利用できる環境を提供しています。

 ポストCookieへの対策としては、自社で保有するデータを利活用するためのデータ環境の構築も進めています。以前はデータ抽出にビジネス部門からデータ部門への依頼に2週間ほどかかっていましたが、現在は、簡易分析ツールの導入によりマーケターが自分でデータ抽出、可視化、分析、アクション検討ができるようになりました。

データ×ユーザー理解の両軸で、新たな価値提供を

──今後、取り組みたいことはありますか。

 データとユーザー理解の両軸でサービス改善や新たな価値提供を進めていきたいです。

 たとえば、データで仮説を立て、N1を調査し顧客理解、インサイト発掘を行い、そこで作ったコンセプトや新しい価値についてデータをもとに需要調査するなど、データとユーザー理解のハイブリッド活用をマーケター自身が行うことが増えています。しかし、その頻度や全社への展開度合いにはまだ伸びしろがあると思っています。

 ユーザー理解のスキルは体系化が難しく、個人の経験とスキルに左右されがちです。ただ、ユーザーインタビューの際のインサイト発掘のコツを言語化し、共通の認識として持つことで質の向上を図ることができると考えています。

 NTTドコモのパーソナルデータ憲章には「データから新しい価値を生み出し、お客様や社会に還元することを目指しています」という表現があります。まさにそれを実現するために、その価値を作っていくのが私たちマーケターの仕事だと思います。個人情報保護を大事にしながらも、適切な攻めと守りを意識しで関連部署と協力しながらデータを活用したよりよい社会を実現していきたいです。

株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー カンパニーコーポレート部 兼 マーケティング戦略部 下地 圭子氏

株式会社NTTドコモ コンシューマサービスカンパニー
カンパニーコーポレート部 兼 マーケティング戦略部 下地 圭子氏

 約10年間、ドコモのマーケティング業務に従事。ドコモサービス全体のマーケティングやdマーケットポータルサイトの改革などを手掛け、戦略策定、広告のインハウス化、SNS改善、CRM、開発など幅広い経験を積む。

 2024年10月8日に開始した「dポイントマーケット」では、リリースに向けた戦略立案、ユーザー調査、インサイト発掘、ユーザー体験設計などを担当し、現在はBtoC向けマーケティング全般を担う。

 社外でも、デジタルマーケティングのスペシャリストとしてマーケティング支援を行っている。

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急激な技術革新に、制度が追いかけてきた(花王)

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この記事の著者

齋藤 ゆう(編集部)(サイトウ ユウ)

大学卒業後、広告代理店に入社しマーケターに。その後、事業会社に転職。金融・美容分野のマーケティング・企画・運営・セールスに携わる。2020年、翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/26 08:30 https://markezine.jp/article/detail/39079

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