ポストCookie対応は「ターゲティング」と「計測」
――最初に、ポストCookieに向けた対応にはどのようなものがあるのでしょうか。
簗島:ポストCookie対応はターゲティングと計測、この2つの目的に分けることができます。
岩本:ポストCookieは、サードパーティCookieの制限・廃止により個人のデータプライバシーを保護する動きが発端で生まれたワードです。Cookie規制が進み、「デジタル広告の効果計測が正しくできない」「自動最適化の効率が悪くなる」「ターゲティングできるリストが減っていく」という3つの課題が生まれています。
そして、この3つの課題のうち広告主の皆様が対応できるのが計測とターゲティングであり、それに関するソリューションが各社から登場しているのが現状です。
――ちなみに広告主の計測とターゲティングに関する対応は進んでいるのでしょうか。
岩本:ポストCookieに向けた対応が重要であることは、かなり前から言われていました。具体的な対応も不明瞭で複雑だったため、各社はクリエイティブや運用の改善で何とか効果を保ってきたのだと考えています。
しかし、ChromeのサードパーティCookie規制も延期にはなりましたが最後の砦であるChromeも規制されることになり、いよいよ本格的な対応をしなければいけないフェーズに来ています。
ターゲティング改善の4つの術
――では、まずターゲティングに関する対応方法を整理して紹介いただけますでしょうか。
簗島:ターゲティングに関する対応は以下の4つに分けることができます。ここからは、岩本さんと手分けして4つの対応についてご紹介します。
1.ファーストパーティデータ活用
2.共通ID
3.コンテキストターゲティング
4.広告以外での対応
1.ファーストパーティデータ活用
岩本:ファーストパーティデータ活用は、ターゲティングにおける最初のポストCookie対応として採用されることが多いです。メールアドレスや電話番号などのファーストパーティデータを活用する方法です。
ファーストパーティデータの活用としては大きく2つの手法があります。1つは、媒体にターゲティングリストを共有することで、主にリターゲティングリストの補完をする方法です。もう1つは、媒体の配信結果に対して良し悪しを伝え、媒体が持つAI用いた自動配信の最適化を促す方法です。
簗島:後者は、コンバージョンAPIやイベントAPI、拡張コンバージョンなどと呼ばれるAPIが有名です。ここ数年導入推進が進んでいた、CDPを通じて広告経由で来訪したユーザーの良し悪しを正しく計測し、媒体にこれらの情報をAPI経由でフィードバックします。これにより、昨今進化するAIを用いた自動配信をフル活用することができます。
2.共通ID
簗島:2つ目の共通IDは、ユーザーのデバイスやブラウザに対しIDを割り当てることで、個人のプライバシーを尊重しつつ、サードパーティCookieの代わりに広告配信で活用することができます。
インティメート・マージャーでも、IM-UIDという共通IDソリューションを提供しています。ただ、この共通IDは広告主が対応するというよりは、DSPやSSPを提供するアドテクベンダーやメディアなどが対応していくことが多く、広告主の皆様は各社のDSPなどを活用すると、共通IDを活用した配信が行えるようになります。
そのため、共通IDを活用した配信ができるサービスなのかどうか、また広告代理店様に運用をお願いしている場合は、共通IDを活用した配信が進んでいるのか確認すると良いでしょう。
3.コンテキストターゲティング
岩本:コンテキストターゲティングはその名の通り、コンテキスト(文脈)に合った配信面に広告を出していくものです。人に対するターゲティングが難しい時代だからこそ、配信面に合った広告を掲載しようという流れです。
今までは記事の特徴に合わせて、最適な広告を選ぶことが多かったのですが、最近では、ユーザーが見ている動画に合わせるなど各広告枠に来ている方のペルソナを特定して、その嗜好性をもとに配信を最適化するといった進化を見せています。
4.広告以外の対応
岩本:4つ目に関しては、ターゲティングできなくなる。特にリターゲティングできなくなるからこそ、ユーザーとの関係は一期一会になりやすいので、良い体験をユーザーに提供しようという取り組みです。
LPO(ランディングページ最適化)やEFO(入力フォーム最適化)などが挙げられ、ユーザーにスムーズな案内をすることがより重要です。さらに、リターゲティングできないからこそ、EメールやLINEなどで今後もコミュニケーションできるように早期でつながることはとても大事なアプローチになっていきます。