もはやフィットネスクラブではない?
倉岡:話を伺っていると、NASさんはフィットネスクラブじゃないですよね。目指しているところはどこなのでしょう?
伊野:大前提として、弊社にとってフィットネス市場の拡大は重要テーマです。しかし、フィットネスの拡大だけに固執するのも危ういと考えています。
倉岡:では、フィットネス業界以外に参考にされている業界などはありますか?
伊野:個人的には有名なテーマパークを参考にすることがありますね。キャラクターが好きで行く人、乗り物を楽しみたい人、あの空間が好きな人……お客様によって楽しみ方が違います。ある意味でフィットネスも同じかかな、と。
ビジネス的な観点で言えば、高い入場料を払ってでもリピートしたいと思ってもらうにはどうするかとか、入場にコストを払った上でお土産の購入やサービス利用といった購買行動をとっている点も勉強させてもらっていますね。
NAS LIVEも脱フィットネスまでは考えていませんが、フィットネスを軸にしながら異なる楽しみ方も存在するエンターテインメントのプラットフォームになれればと考えています。
また、私たちは大和ハウスグループの一員です。グループ内での役割という視点では、大和ハウスグループのお客様や従業員と家族の皆さんの健康を担っています。それを考えた上で、何をしていくかが重要です。グループに限らずですが、これまで近くにNASの店舗がなかったお客様へも新たなサービスを提供できたことに意味があると思います。
専用コンテンツの制作、ライブコマース…展開方法は様々
MZ:最後に今後のお取り組み予定を伺えますか?
伊野:最近、NAS LIVEについて企業様からのご相談が増えています。例えばリモートワークをしている社員の健康のためにNAS LIVEで何かできないか、というお声ですね。単純にNAS LIVEが見られるだけではなく、その企業の従業員様向けにコンテンツを制作することも珍しくありません。
また、メーカーさんから商品紹介の依頼も少しずつ増えてきています。さらに、キャンプの始め方をテーマにアウトドアメーカーさんの店舗でライブ配信をした際に、「その部分をもうちょっとアップにしてもらえますか」とか、「これはいくらですか?」とかチャットを通じて盛り上がっていました。後日本当に店舗でお買い上げになったNAS LIVEユーザーの方もいらっしゃいます。NAS LIVEは様々な展開ができるのではないかと考えています。
倉岡:フィットネスからメディアやライブコマースの話につながるとは思いませんでした。
伊野:ただ、利用者数の観点ではまだまだ拡大していく必要がありますので、様々な取り組みを通して広げていきたいですね。
倉岡:コロナ禍をきっかけにターゲットや事業を変える企業は多いですが、NASさんのお話は可能性を感じますね。伺いながら私もインスピレーションを頂きました。
元々我々は予約システムやネットショップ、POSレジなど、チャネルに特化した業務システムを提供しています。ある意味ではドライなビジネスで、いわゆるツール屋ですよね。一方でオーナーさんには御社でいう「NASっ子」のような、様々なストーリーがあると思います。我々がそのストーリーをくみ取りながら、オーナーさんがやりたいことを実現できるようになっていくことが重要だと感じています。現段階では対応の糸口として、オンラインとオフラインが融合していくよねという考えで留まっているのですが、その先のヒントを頂いた気がします。
また、実店舗がオンラインサービスを提供する際に我々のサービスを使っていただくケースでも、コロナが落ち着いたから辞めますという話は珍しくありません。私も、そういうものかなと思っていたのですが、先を見据えて活用できるのだと感じました。その啓蒙をしていくことも、我々としては重要だと感じました。
本日はありがとうございました。