ライブコマースの「3P」
MarkeZine編集部(以下、MZ):初めにお二方の自己紹介をお願いします。
武者:アイレップでライブコマース・エヴァンジェリストを務めています。ライブコマースを再現性のある形で科学し、実践可能な形に体系化していくことが私のミッションです。業務内容としては、ライブコマースを実行されたいクライアント様の制作から分析まで、統合的にサポートしています。
小林:インタラクティブ動画技術「Tig(ティグ)」を開発・提供するパロニムにおいて、CEOを務めています。Tigでは映像内の対象物をタップすると、詳細ページへとシームレスに遷移させることが可能です。
MZ:「ライブコマースを始めたいが、何からどう着手すれば良いかわからない」と感じる担当者は少なくありません。実践にあたり、押さえておくべきポイントはありますか。
武者:ライブコマースにおいては「場」「人」「コンテンツ」の3つが鍵となります。これらの要素は「プラットフォーム」「プレーヤー」「プログラム」という3つのPで整理するとわかりやすいかもしれません。
3つのPは三位一体。最新のプラットフォームを活用しても、出演するプレーヤーと打ち出すプログラムがともなわないライブコマースはつまらないため、セットで考える必要があります。
小林:最も重要なのは「顧客と長期的にどのような関係を育んでいきたいのか」を考えること。「自分たちのブランドが持つ世界観や商品の魅力をどう伝えたいのか」「顧客との関係をどう築いていきたいのか」をまずは明確にし、その上でマッチするプラットフォームを選べば良いのです。
自社の世界観が伝わっていない状態で、いきなりタレントやインフルエンサーを起用して大量のビューを集めようとすると失敗しやすいため、最初はブランドや商品に詳しい自社のスタッフをプレーヤーとし、インハウスで始めるのがポイントです。
「I wanna pay you」を醸成するためには
小林:ライブコマースのコンテンツを作るにあたり、テレビ番組からは学ぶところがあると考えています。出演者や構成など、番組のベースとなるフォーマットを設定しておくと、ユーザーは既視感や安心感を覚えますよね。人は知らない相手や場所から物は買わないので、既視感や安心感が購買につながるのです。
武者:ブランドとの関係性が構築されていて、世界観に共感している人が商品を買っているだけであり、ライブコマースという手段が物を買わせているわけではないのです。テレビの帯番組のように、決まったフォーマットの中で「第1週はこのコーナー」「第2週はこのコーナー」という構成にすると、視聴者に安心感を与えつつ飽きさせないライブコマースが実現できるのではないでしょうか。
小林:ECとの大きな違いは「ここまでしてくれた相手から商品を買いたい」という気持ちが醸成される点にあると思っています。当社では「I wanna pay you文化」と名付けているのですが、この文化を実現するためには視聴者ドリブンになることが重要です。
武者:配信者が、視聴者からのコメントを拾いつつプログラムを盛り上げる“DJスキル”を持っているかどうかもポイントですよね。デジタルネイティブの配信者はそうした振る舞いが自然にできる一方、企業が主体になるとライブ感は損なわれがちです。プログラムの盛り上げ方をフレームワーク化し、ライブコマースの効果的な活用方法を伝えていくことが我々エージェンシーの使命だと感じています。