ロック画面のパーソナライズ化からみるUXデザインのヒント
ロック画面をカスタマイズできるようになったことで、自分好みの壁紙が選択できたり、フォントやカラー、ウィジェットにより簡易的な情報のチェックが可能になりました。これが何をもたらしたか――。それは、シンプルな「便利さ」と「個性の発揮」ではないでしょうか。
- 情報を見るためにFace IDやパスコードを入れてロック画面を解除する必要がなくなった
- タップやスワイプする回数が減る
- 視認性の向上
- 必要な情報のみ一目で確認できる
- ロック画面にオリジナリティが出て愛着が湧く
基本的には「便利な機能=快適」につながりますし、こういった利便性の高まりがユーザー体験の向上につながるのは理解に難くないことだと思います。ここにUXデザインを考える上でのヒントが隠されているので、それを深掘りしていきましょう。
1.画面にある情報は適正で正しくレイアウトされているか
新しいロック画面にウィジェットなどの情報を載せることで、情報へのアクセスが容易になり時間短縮(Face IDなどで解除する必要がない)につながりました。これらはiPhoneのロック画面以外の、Andoridやそのほかのアプリ、ウェブサイトなどでも同じことが言えると思います。
ボタンやテキストの配置やカラー、各コンテンツのレイアウトや数量、間隔など、マージンを含む全体の構成まで考えたうえで設計する必要があります。
2.目的の情報を得るまでの導線やタップ数などは適切か
情報をどこに配置するのかはもちろん、その情報への道筋は近道なのか、はたまた遠回りさせるのか、または自動的に見せてしまうのかなど、どのような形がユーザーのストーリーにとって適切であるかを判断しなければなりません。タップ数が多ければ煩わしく感じることもあるでしょう。1回のタップで遷移することで、エラーを促してしまうケースもあるかもしれません。
たとえばウェブサイトのUIにおいて、今や当たり前となっているハンバーガーメニューがありますが、メニューが閉じられていることでクリックやタップは1回分増えることになります。

はたしてこれは本当に適切なのでしょうか。押せば開くと大半の人が理解していることだから良しとするのか。ハンバーガーメニューにすることで画面の収まりが良く、PCとスマホでデザインを統一できるなど裏付けがあるのかどうか――。UIUXデザインは常に、ユーザーの課題とゴールに向き合う必要があるのです。
3.情報を配置したことでデメリットが発生していないか
情報を載せることで便利になる一方、美しいレイアウトが崩れたり、ウェアラブルやスマホなど限られたスペースで載せる情報がユーザーのストーリーに適した形で整理して表示できているかなど、情報が増えたことによる弊害が起きていないでしょうか。(ウェアラブルのUIUXデザインについてはこちらの記事をご参照ください)
AppleとGoogleのUIデザインのガイドラインが必ずしも「正」とならないことも
Appleの開発者向け公式リファレンスである「HIG(ヒューマンインターフェースガイドライン)」やGoogleの「マテリアルデザイン」などには、UIデザインの原則や基本的概念などが記載されています。
これらのガイドラインに沿って設計していくことで、効率よく統一されたアプリやサービスをつくることができます。しかしユースケースによっては必ずしもそれが「正」とならない場合もあるでしょう。
弊社でいうと、工場や農場の作業者が使用するアプリでボタンやテキスト、マージンを極端に大きくとったアプリを制作しました。これは作業者が手袋を付けたまま使用することを想定しており、ながら作業となる現場で誤って別のボタンをタップすることを防ぐ目的があるためです。ユーザーの使用するストーリーに寄り添った適正なUIを設計することが快適なUXにつながっていきます。