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第112号(2025年4月号)
特集『いま選ばれる「ブランド」の作り方』

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[前編]強い差異化ポイントを見つけるには ブランディングデザインの独自メソッドを西澤明洋さんが解説

ポイントは「上位階層に差異化ポイントを見つけること」

――ブランディングデザインの概要について、詳しく教えてください。

そもそもブランドの語源は、自分の牛がほかの牛と混ざってしまったときに区別するための目印として、焼きごてで牛に焼印を押すことが由来という説がありますが、昔はそれでブランディングデザインがほぼ終わっていました。というのも、経済が右肩上がりのとき、つまり経営環境として追い風が吹いているときのブランディングは、区別しにくいところにロゴやアイデンティティをつくる、コンセプトを立てるなど、VIやCIの領域の仕事だけでも十分効果があったんですよね。

しかし今は状況が一転して複雑化しており、経済環境もあまり良くない。そんな中では、ロゴマークだけを変えてコミュニケーションが良くなるという考えは改めなければなりません。特にコミュニケーション面は複合戦になっており、広告を出せば一気に認知が広まり売上も上がる、という単純な流れではなくなっています。経営戦略から含めて全体戦をしっかりと再設計しコミュニケーションを強化することで、差異化を図ること。これが「ブランディング」だと考えています。

上の図は、エイトブランディングデザインで開発した、「ブランディングデザインの3階層(R)」という思考フレームです。Mがマネジメント、Cがコンテンツ、いちばん下のCがコミュニケーションを指しています。まるっとデザインをするためにまず「きちんと状況を捉える」ことが不可欠ですが、クライアントの経営条件やブランディングの諸条件を整理していく際にMCCを用います。

次に行うのは、差異化ポイントのデザインです。ここでのコツは、MCCに分けたとき、なるべく上位の階層に差異化要因を作ること。たとえば商品開発を行う際にクライアントから「売れるようなパッケージデザインにしてほしい」と依頼されたとすると、これはMCCの最下層「コミュニケーション」でなんとかしてほしいということになります。ですがそれだとほとんど差異化にはなりません。商品そのものが強い差異化を生むことができるのか(C:コンテンツ)。売りかたや販路、戦略に差異化要因があるのか(M:マネジメント)。そういったことを考えながら、上位階層から差異化要因を探し、コミュニケーションのデザインを設計していくのです。

こうお伝えすると当たり前かと思われるかもしれませんが、“上位階層”からしっかり考えることを怠っているケースも少なくありません。いちばんいけないのは、業界通例のようないつもの流れに従うこと。これでは、差異化とは逆の同質化が起こってしまいます。

そういった意味で僕らはお客さまの業界では素人なので、比較的ピュアな目線で関わることができる。「上位階層にこんなアイディアを盛り込んだほうが差異化できると思うのですがいかがですか?」など、アイディア出しを企画や戦略レベルで行っていくと、喜んでもらえることも多いですね。事業の根っこからしっかりと交通整理していくために、MCCに分け、なるべく上位階層に差異化要因をつくる。これが非常に大切です。

ではMCCで分析する際のポイントはなにか。それは、いちばん根っこから状況をとらえることです。商品の売上を伸ばしたいという要望があったときに考えるべきは、その商品のことだけではありません。どのような経緯で会社が生まれたのか、スタッフはどんな思いで働いているのか、どのような設備があるのか、ほかの商品はどんなラインナップなのか――。商品を生み出しているのは会社でありそこで働く人なので、そういった部分を丹念に紐解いていくことが、真の課題や強みを見つけるためには欠かすことができません。

――ブランディングデザインを始める前に、どのような意識づけが必要ですか?

プロジェクトをキックオフするときに、社長以下、営業部長や製造部長、開発部長などさまざまな部門のトップの方を巻き込んで、一緒に経営の戦略を考えるところから入っていきます。大体6~8人くらいになるケースが多いでしょうか。

先方が、今回は社長と経営企画室だけでやりたいとおっしゃるケースもありますし、人数が少ないほど意思決定が早くなるメリットもあります。ただなにか決めたあとに、社内にも協力体制を作り、決定事項を部門ごとに落としこんでいくことを考えると、最初からみんなで取り組むことが、もっとも齟齬を減らせると思います。たとえばデザイン部門であれば、すべて決定したあとにあとからコミュニケーションのデザインだけを切り取って依頼されてもうまく機能しないですよね。ですがこれはデザインだけではなく、人事でも経営企画室でも営業でも同じ。各部門に持ち帰る前にいかに戦略全体の理解を得ておくかが、大切なんです。

僕のような外部の人間が、会社のトップと相談して、ブランディングしようと大号令をかけても、現場がしらけてしまい、やらされ仕事になってしまうことが多い。そうならないためにも、基本的にはみんなで一緒にブランディングの戦略を考え、それを各部門に持って帰ってもらう。そして「すごくおもしろい企画ができたから、うちの部門も一丸となって実現させていこう!」というモチベーションで取り組んでもらったほうが当然良い結果も出るはずです。

このやりかたは、一見面倒かもしれません。ですが僕らのような専門家が入るような社運をかけたプロジェクトでその工程を省くと、ブランディングプロジェクトがいつの間にかいつもの販促レベルの取り組みになってしまいます。会社をまるっと変えてデザインしていくためには、みんなでやるしかないんです。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/07/28 08:00 https://markezine.jp/article/detail/39565

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